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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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てがみ

 手紙が来る。

 毎朝ポストに入っている。

 ただ、手紙の内容は意味不明なものだ。

 ただただ訳の分からない単語の羅列されたもので、赤いペンで書かれている。

 赤いペンと言われると血で書かれているようなものを想像してしまうかもしれないが、そんなことはなくただの赤い蛍光ペンだ。

 書かれている字はあまり綺麗ではない。

 また子供の書くような字でもない。

 

 けれど、手紙が届けられる家の家主の男は、子供の悪戯だと思っていた。


 その手紙は毎日届けられる。

 もう数カ月の間、意味の変わらない手紙を受け取っている。


 男はその手紙を持って警察に相談しに行ったが、あまり相手にはされなかった。

 まあ、子供の悪戯と一目で思われてしまうからだ。

 だが、それはそれで問題がある。

 この手紙は新聞の下にあるので、新聞配達よりも早い時間に届けられている。

 この地域の新聞配達は真夜中の三時過ぎには配られている。

 と言うことは、この手紙がポストに入れられているのは、それ以前の時間帯と言うことだ。


 そんな時間に子供が悪戯で手紙を出すために外出しているとなると、逆に心配になる。


 男はふと思い立ち金曜日の夜に、窓からこっそりと家の前のポストを観察することにした。

 スマホも容易していつでも動画を撮れる様に準備しておく。


 男はこれが動画を撮る初めての機会だっただったので、年甲斐もなくワクワクしていた。

 流石に動画という証拠があれば、警察も動かざる得ないだろうと。

 その犯人が子供であれば猶更だ。


 男はテレビを見ながら暇を潰し、二階の窓から自宅のポストを見張る。


 深夜二時を過ぎたころだろうか、家の前に人影が現れる。

 それは人の形をしてはいたが、とても奇妙だった。


 男はスマホで録画をしつつ、それを窓から様子を見る。


 それは全裸だった。

 全裸に大きな黒い鞄だけを肩から下げていた。

 男か女か、それも判断がつかないほど痩せこけていた。

 顔など髑髏が、頭蓋骨がそのまま乗っているかのような風貌だ。


 それが鞄から何かを取り出して、確かにポストに入れた。


 男は息をひそめてその様子を動画に撮る。

 ただ男には今、手紙を配達している存在がまっとうな人間には思えなかった。

 いや、生きている人間ではないと思えていた。


 その痩せこけた存在はよろよろとふらつきながら、去っていった。


 男は一息ついて、動画を見返す。

 ちゃんと亡者のようなその姿が映っている。


 だが、その録画を見て男は気づく。

 手紙をポストに入れ終えた後、その亡者のような存在は、こちらを、二階の窓の方を、その眼玉もない黒い眼光で見ていたことに。


 男がそれに気づき、冷や汗を流していると、こんな時間なのに、ピンポーンとチャイムが鳴る。

 恐る恐る男が窓から確認すると、ポストのある門の前には誰もいない。

 だが、ピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴り続ける。


 男は恐怖はあったが怖いもの見たさで、門のインターフォンにでる。

 そうすると、機械の音声のような抑揚のない声で、郵便です、郵便です、郵便です、と繰り返す声が聞こえて来た。


 男はインターフォンをすぐに切り、警察に電話する。


 男はすぐに来た警察に動画を見せ、体験したことを話すが、警察は困った顔をすることしかできなかった。

 また翌日にはスマホがなぜか起動しなくなり、せっかく撮った動画もなくなってしまった。


 ただそれ以降、手紙が届くことはなくなった。




てがみ【完】

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