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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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てさぐり

 女は真夜中に目を覚ます。

 尿意を感じて目を覚ます。


 少し悩んだ末に、女は体をベッドから起こして、目を開ける。

 真っ暗だ。


 普段なら多少は明かりがあり見えているはずなのだが、その時は本当に真っ暗だった。

 電化製品の電源のランプ、雨戸などの隙間から入るわずかながらの月明り、それすらないように感じる。


 本当に真っ暗で何も見えない。

 女は壁に手をやり手探りで壁沿いに部屋を歩いていく。


 女の記憶ではこの辺りに電気のスイッチがあるはず、その場所を壁に手を這わせて探す。

 なかなか電気のスイッチを発見できない。


 スイッチを探す範囲を広めようとしたとき、手に何かが触れる。


 それは冷たかった。氷のような冷たさだった。

 それはじめじめと湿っている。

 それは女の指が触れると少しだけ避けるように動いた。


 寝ぼけていた女の頭が一気に覚醒する。


 今手でふれたものはなに? と自問自答するが答えが出ない。


 あのように冷たくじめじめしたような物の感触を女は知らない。

 それがなんであったか、まるで見当がつかない。


 女が固まっていると、不意に顔に息がかかる。

 湿った、冷たい、そして生臭い息だ。


 それは息をひそめるように、緩やかな息遣いで、女をまるで間近で監視するような場所に存在している。

 そうでなければ、こんな緩やかな息がかかるわけがない。

 だが、暗闇のせいか何も見えない。


 女は震えだした。

 逃げ出したかったが足がすくんで動くことができない。

 女は何とか手を動かしスイッチを探るが、それを探り出すことはできない。

 

 その間にも、女の顔には生臭く湿った冷たい息が吐きかけられる。


 なにかがそばにいる。

 自分の顔のすぐ近くにいる。

 それはわかるのだが、本当に真っ暗闇でなにも見えない。

 女は焦りながらも、なんとか手探りでやっと電気のスイッチを見つけることが出来た。

 そして、スイッチを入れる。


 部屋に電気がつく。


 恐る恐る部屋の中を女が見渡すが、部屋の中には女しかいない。

 女は家の電気をなるべくつけながら、トレイへ行く。


 その日は、そのまま電気をつけたまま寝ることにした。




 

てさぐり【完】

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