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三国

 「今私たちがいるのがヴィリジアニ大陸なんだけど、この世界で一番緑に覆われている大陸で、さっきも言ったけど一番人が住みやすいとされている大陸ね。逆に言うと、ここ以外の大陸に人が済むことはほぼ不可能と言っていいわ」

 メクリカは地図に描かれた比較的緑に覆われた逆三角形の大陸に指を差しながら話を続ける。

 ストラはそれを自分の世界と比較し、似ているところからどのような場所なのかを推測しながら聞いていた。

 「ヴィリジアニ大陸には三つの国があって、それぞれの地を治めているんだけど……」

 「領地を奪い合う戦争をしている、でしょ?」

 「そう。なんでわかったの?」

 「似たようなことを私の世界でもしていたから……」

 以前ストラの世界ではエンデの脅威から逃れられるとして湖周辺の地域を戦争で奪い合い、多くの者が命を落とした。

 その土地を自分も半ば強引に奪い取り、ミルクヴァットの町を作り出した記憶がある。


 人が生きていくためにはある程度の土地が必要になる。

 そしてその土地が広大であればあるほど、自分たちの暮らしがよいものへと変わっていくのだ。

 であるから、人は欲をかき、他人の地であろうが奪ってでも自分たちの良い暮らしを追い求めてしまう。

 支配者とはその過程で得られるものばかりに目を向け、失うものには目もくれない。

 例え自国の民が戦争で失われようが、他国の民の生活を踏みにじろうが、自分たちさえよければそれでよいのだ。


 ストラも例に漏れずその内の一人となっていた過去がある。

 生きていくためには仕方ないという盾を振りかざして、他人の幸せや生活を踏みにじり、自分たちの幸福な生活の足がかりとした。


 それがこの世界でも起きているのは想像がついた。

 置かれている状況が当時のゴスミアと酷似しているためである。

 人という生き物はかくも愚かなものであるとストラは強く思った。


 「まあ今は比較的落ち着いている方かな。酷い時はここにもその戦火が飛んできたこともあったし……」

 「メクリカはどこの国にも所属してないの?」

 「今は、ね。以前は北方を治めるセプタントリオっていう国にいたんだけど……。嫌になって飛び出してきたの」

 「嫌って……戦争がってこと?」

 「それもだけど……まあそれは追々話すよ」

 国を抜けた理由に関してはお茶を濁したメクリカは、ヴィリジアニを治める三つの国について語りだす。

 その表情はどこか浮かないもので、どの国にもあまり良い思い出は無いように伺えた。

 「次にその国のことについて、なんだけど……。まずさっき話したセプタントリオはヴィリジアニの北側の大部分を占めてるの。ヴィリジアニだと一番国力が高いと言っても過言じゃなくて、中に住む人はそれはとても良い暮らしをしているわ」


 そこでストラは思ったことを突っ込む。

 「全員が全員、じゃないでしょ?」

 「鋭いね。そのとおりよ」

 光があれば必ず影ができるように、裕福な暮らしを送る者がいれば貧しい暮らしを強制される者もいるというのは、もはや宿命と言ってもよいだろう。

 戦争による犠牲があまり重視されないのは、こういった貧しい暮らしを送る(死んでも気にならない)者たちがその大半であるからであり、存在が重用される者たちは戦場の後方にいる、もしくは戦場に出ないといった者たちが多い。

 「セプタントリオの王城とその城下町に住んでいる人や他の大きな町に住んでいる人たちは、とても良い暮らしをしているね。それ以外のボロボロの街、いわゆるスラム街だったり、村や集落に住んでいる人たちは他の二国のそれまでとはいかずとも、貧しい暮らしをしているところが多いかな」

 それからメクリカはセプタントリオの特色や風土、文化などを細かく説明していったが、その大部分は自分の世界にあったセレネのような上流階級の人々の暮らしと似通っていた。

 そのため細かな説明を受けなくても大まかな暮らしやその街に住む人の性格をなんとなく想像することができた。


 「なるほどね。その国の大体の形は掴めたわ。他の二国についても教えて」

 「そうだね……。次はセプタントリオの南西を治めるメリディウムについてだね。北の大部分を治めるセプタントリオと違ってここは土地がそこまで豊かではないの。というのも南側の天候はよく荒れるみたいでまず作物が育ちにくいの。そのせいもあってただでさえ少ない領地の内、自由に使える分っていうのかな……それがセプタントリオの半分以下なんだ」

 「あぁ……じゃあ国力はセプタントリオの半分以下と考えるべきかしら?」

 「う~ん……この国は兵器の製造が発達しているから、一概にそうとは言い切れないかも。人手に限った話ならセプタントリオとは比べ物にならないほど少ないね」

 「へいき……?」

 ストラは”兵器”という言葉には聞きなじみがなかった。

 元の世界はそこまで文明が発達しているところはなく、ミアルバーチェが辛うじて新しいエネルギーの開発を行っていた程度で、戦争に用いる武器や防具なんかは剣や槍、槌に鎧、そして魔法などが主流だった。

 それをメクリカに説明し、なんとかストラが分かる言葉で兵器について言語化してもらう。

 「そっか。兵器はそっちの世界にはなかったんだね。兵器っていうのは……う~ん……例えば魔法が使えない人がいたとして、その人に兵器を使わせると魔法みたいな威力の攻撃ができるようになるみたいな道具の事、っていえばわかるかな?」

 「あぁ……。魔法具みたいなものかな? なんとなく想像できたかも」

 「そう。魔法具を攻撃に特化させたものを兵器って呼んでるの。中には自動で走る鎧をまとった馬車にその兵器がくっついてるみたいなものもあるよ」

 「な……!? すごいね……」

 「それには魔法が効きづらかったりして厄介なことこの上なかったんだ」

 メクリカはその当時の戦争の情景を思い出しながら、兵器の脅威について存分に語って聞かせた。

 おかげでストラに、兵器というものはとても強力で厄介な物であるという知識が身についた。


 「最後にメリディウムの東にあるオリエンタレムだね。ストラにとってはここが一番なじみ深いかもしれない。ここが一番発展しているのは魔法なんだ」

 「それは……確かに一番馴染む国かもしれない……」

 三国間はそれぞれ巨大な山脈と河川によって分断されており、セプタントリオと二国間は山脈が、メリディウムとオリエンタレム間は巨大な河川によって仕切られており、この二国間にはいくつかの巨大な橋が架けられている。

 オリエンタレムの地はメリディウムの地と違い温暖な気候であり、セプタントリオほどではないにせよ、十分に豊かな土地が広がっている。

 またオリエンタレム東部には巨大な森林が広がっており、その影響か国中に豊富な魔法力が充満している。

 「それでこの国が様々な魔法の研究を行っているの。その過程で突然変異細胞体(ミュータント)なんて化け物が生み出されちゃったんだけどね……」

 「なるほどね。召喚魔法もこの国が……?」

 「その通り。もし帰ることを諦めていないのなら、一度この国に行ってみるべきだと思うよ。あっ、ちゃんと体を治したら、ね!」

 「……ありがとう。わかっているわ」


 そうしてストラは次に行くべき国をオリエンタレムに定め、メクリカの下で十分に体を休めることに注力した。

 幸いにも体の症状はだんだんと軽くなっていき、一か月もしたらすっかり良くなっていた。

 「ありがとう、メクリカ。あなたの努力あってのおかげよ。本当にお世話になったわね」

 「うん、しっかり良くなってくれてよかったよ。こっちも一か月本当に楽しかった」

 「大したお礼ができなくて申し訳ないけれど、この借りはいつか必ず返すわ」

 「うん。期待してるね。じゃあ……そろそろだね……。道はちゃんとわかってるね?」

 「ええ。あなたが描いてくれた地図もある。それに私は魔女よ。飛んでいけばきっと辿り着けるわ」

 そうして二人は互いの体をぎゅっと抱きしめる。

 瞬間心の奥からグッとくるものがあったが、互いに涙は決して見せなかった。


 「じゃあ、また会いましょう! メクリカ!」

 「ええ! またね、ストラ! 元気でね!」


 二人は大きく手を振りながら互いに別れを告げる。

 ただ二人には大きな予感があった。

 ”いつかまた絶対に巡り合える”と。


 ストラは法器()に跨って飛んでいき、メクリカの住処をあとにした――。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


メクリカさんとの絡みは一旦ここで終了となります。

二人はきっとまた会えることを願ってそれぞれの道を歩んでいきます。

次回はオリエンタレムからになりますのでお楽しみに!


ブックマークのご登録、ご感想等いただけるとモチベーションにつながり、創作活動はかどりますので、ぜひぜひお願いいたします!!

また誤字や脱字等ございましたご報告のほどお願いいたします。


拙い物書きですがこれからもよろしくお願いいたします。

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