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再訪

 霊魂魔法で拘束を続ける中、それ以外の者たちは波状攻撃を仕掛ける。

 しかし、彼らの魔法をもってしても動きを止めることはできるが、傷をつけるには至らない。

 どうしようかと考えているところに、空中で戦うリアニの魔法の流れ弾がたまたま”ヌシ”に当たった。

 巨大な煙を上げながら悲鳴を上げる”ヌシ”の体には初めて大きな傷がついていたのだ。

 「あの魔法ならこの化け物を倒せる!」と誰もが確信したその時だった――。


 「マイ・ハニー! そろそろ終わらせようか!」

 ”ヌシ”がいきなり闇の煙に巻かれ出しその姿を変える。

 中から現れたのは一人の悪魔だった。

 しかしただの悪魔ではなく背中に六枚の翼を持ち、整った顔立ちのすこしたるんだ目を赤く輝かせる。

 すると彼を拘束していた魔法の魔法陣が一瞬にして砕かれ、彼は自由の身になる。

 「なっ! クッソ! ディアゴール……やっぱりそうだったのか! 二人目の”大罪”はヤバい……!」

 ラヴィエルはその正体を知るや否や、焦りの表情を浮かべる。

 リアニが「月夜の葬送曲(ルナ・レクイエム)」を使用しシェムヴィアルを真横に真っ二つにしたにもかかわらず、彼女はのうのうと回復し、不敵な笑みを浮かべていた。

 二人は合流しようと互いに近づこうとしたため、シェムヴィアルはラヴィエルたち四人が、ディアゴールはスワヴォータの民全員が拘束魔法を放ち、その合流を何とか阻止しようと試みる。

 しかしそんな妨害を振り切って”大罪の悪魔”達は合流してしまう。

 「楽しかったかい? シェムヴィアル(マイ・ハニー)?」

 「思ったよりは楽しめたわ。さあ終わらせましょう?」

 途端に激しく光る魔力を放出しながら二人はその術の名を唱える。


 「「双魔の晴れ舞台(セレノム・スカイェナ)」」


 二人を中心とした魔力は全方位に発せられる熱線となり、周囲一帯を焼き尽くさんとする。

 雪は解け干上がり、埋もれた地面が顔を出す。

 村の木造の建物は自然に発火し始め、熱線を浴びた者たちの皮膚が焼けあがる。

 それは耐えがたい苦痛となって声を上げることすらできないほどの痛みを与える。

 透明な魔力壁ではその影響を防ぐことはできず、リアニたちも焼けただれていく皮膚の痛みに必死に耐えることしかできなかった。

 しかしその光は弱まるところを知らず、さらにその光と熱を強めていく。


 悪化の一途をたどる状況を覆すためラヴィエルとリアニは息を合わせて突撃を仕掛ける。

 近づけば近づくほど火力の上がる熱線に焼かれる体を気にも留めず、絶対に魔法を当てられるという距離まで近づく。

 シェムヴィアル達もその接近に対応するため、さらに魔法の出力を上げる。

 そこでリアニは禁術を唱える。


 「時の歯車よ静止せよ(ノリテフルクサス)!」


 彼女がその魔法を唱えると、世界はその動きをゆっくりと止めていく。

 ものすごい勢いで削られる魔力を気合で持ちこたえさせながら、声を振り絞る。

 「今です……! ラヴィエル様……!」

 「柳緑の棘の聖槍(スピナ・ヴィリダスタ)!!」

 ラヴィエルは三叉の刺々しい緑の槍を二人を刺し貫くように思いっきり投げる。

 シェムヴィアルの背に当たる瞬間、リアニの禁術が解け、槍は二人の体を中央に溜まった魔力ごと刺し貫いた。


 ――しかし悪魔たちはそれを待っていたと言わんばかりに口角を吊り上げた。


 槍が悪魔たちと魔力を貫いた瞬間、魔力がさらなる光を放ち、次の瞬間大陸そのものを消し飛ばす闇の柱へと変わり、その場にいたすべての者たちを飲み込んだ。

 この柱は中にいる者の体全体に痛みを与えるために細胞一つ一つにダメージを与えていく。

 リアニたちとスワヴォータの民たちは、全員逃げ出すことすらできず、この柱の中で苦痛に苛まれるのみであった。


 しばらくして柱がゆっくりと消えていくと、そこには”大罪の悪魔”の二柱の姿しかなく、他の者たちは大陸があったはずの場所にできた大穴のそこへと沈んでいた。

 一気に大量の海水が流れ込み、ルーメンの大陸だった場所は巨大な渦潮があるのみとなってしまった。

 「大成功だね! さすがあたし達! これでシュモツ様にも褒めてもらえるかな?」

 「ああ。きっと褒めてもらえるさ。さて、もう用は済んだし、行こうか、マイ・ハニー?」

 「うん! 楽しみだなぁ……」

 二人は仲睦まじげに腕を組み、そのままどこかへと飛び去ってしまった。


 この戦いは明確に勝敗が分かれたものとなり、天界、人界側はすぐに対応を迫られた。

 ”大罪の悪魔”の勝利は瞬く間に悪魔たちの間に広がり、彼らの士気を底上げするきっかけとなった。

 勢いづいた悪魔たちが次に目を付けたのは、人が一番生き残っているゴスミア。

 彼らは徹底的に戦力を削いだ後にゆっくりと人界を侵略する画策だったのだ。

 ルーメンが消えたこの戦いは”ルーメンの戦い”と記録に残され、後世に悪魔たちの恐ろしさを伝える記録として伝えられることとなった。


   *


 リアニは夢を見ていた。

 目の前に広がるのは一面が緑に覆われた爽やかな草原。

 彼女がこの地を訪れるのは二度目であった。

 そんな彼女の隣にはカリスがリアニの肩に寄りかかって眠りについていた。

 何度も見てきた姉の寝顔は、初めて会ったあの時に見せた不気味さも恐怖もない。

 そこにあるのは自分に少し似た顔が可愛らしい寝息を立てている姿だった。

 リアニは彼女のふわふわとした頬をつい突いて遊んでしまう。

 すると彼女はゆっくりと目を覚ました。

 「うぅ~ん……」

 「あ、起こしちゃった。おはよう、お姉ちゃん」

 「おはよ……。ここは……?」

 「ここは天国だよ。私たち、死んじゃったんだと思う」

 カリスは寝ぼけた顔が一気に驚きの顔へと変わり、彼女に残っていた穏やかな眠気が消し飛んだ。


 以前リアニが語って聞かせてくれた、彼女が初めて父親と会った場所。

 そしてリアニがカリスという魔女との関係の真実を知った場所でもある。

 「ここが……天国……。はっ! ならここにお父さんも!」

 リアニとカリスは一通り周りを見回してみる。

 しかしそれらしい姿はどこにもなかった。

 彼はリアニと別れた際にお迎えが来ていたのだ……。


 残念そうにうな垂れて座り込む姉の頭をそっと撫でてやる。

 「あぁ……。やっぱリアニに撫でられるのが一番気持ちいいわ……」

 「そう? 誰がやっても同じじゃないの?」

 「全然違うわ。私とメフィス――いえ、ストラに撫でられるのは同じ感じがした?」

 「いや……言われてみれば確かに」

 リアニはよく頭を撫でられていたが、カリスの方がより温かみを感じるものであったことを思い出した。


 「そういえば、エルちゃんとラヴィエル様がいないね……」

 「……そうね。ここにいないってことは、死んではいないってことでしょ? いいことじゃない。私たちは……これからここで消えるのを待つだけになっちゃったけど……」

 カリスにそう言われた瞬間、リアニの心の中には悲しみが一気に広がり、涙が顔から滴り落ち始めた。

 「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」

 「よしよし。お姉ちゃんはここにいるよ。大丈夫。リアニは一人じゃない」

 穏やかな風がそよぐ草原の中、少女の悲しみの声が響き渡った――。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


天国再びということで。これから一体どうなってしまうんでしょうか。

彼女たちの行く末は次回をお楽しみくださいませ。


ブックマークのご登録、ご感想等いただけるとモチベーションにつながり、創作活動はかどりますので、ぜひぜひお願いいたします!!

また誤字や脱字等ございましたご報告のほどお願いいたします。


拙い物書きですがこれからもよろしくお願いいたします。

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