”ルーメンの戦い”
「喰らえ! 闇槍よ突き破れ!」
リアニは全開の魔力を闇槍に込め、巨大な槍をシェムヴィアルへ向けて投げつける。
豪速で近づくそれをひらりと舞うように躱すと、シェムヴィアルはお返しと言わんばかりに魔力弾をリアニへ向けてばらまく。
「アツくなっちゃって……かわいいね」
煽りの一言も怒髪衝天に陥っているリアニにはかなり効果があり、彼女の感情をさらに乱す。
しかしシェムヴィアルと戦っているのは一人ではない。
そんな彼女の裏からラヴィエルが攻撃を仕掛ける。
「空間よねじ曲がれ、さらに拡散しろ」
ラヴィエルは空間をぐるりと捻じ曲げ、外れたリアニの槍を再びシェムヴィアルへ向けて飛ぶように仕向けると、その槍を拡散させ、数千の槍に変えて浴びせる。
間髪入れずカリスとミシェルも攻撃を仕掛け鍛錬の成果を見せる。
「氷嵐の豪旋!」
「祝福の響き!」
カリスが起こした氷塊をも発生させるほどの猛吹雪をミシェルがさらに魔法で威力を上げる。
二人が織りなす魔法はまるでひとつにまとまった歌のように流れるように奏でられる。
息ぴったりな魔法に囚われたシェムヴィアルはさらに気持ちを高揚させる。
「いいね、いいね! 戦ってるって感じ!」
彼女の手や足には氷塊と闇槍で痣や傷ができていたが、数秒も立たずにその跡はまっさらに消えていく。
巻き起こった吹雪はシェムヴィアルがサッと手を振り払うと途端に消えてしまい、その場に魔法として消費されなかった空間魔法力が、大量に霧散する。
それを好機と見たリアニはその魔法力を集め始める。
強大な魔法力や魔力を使った魔法は、消費した力の量に応じてその威力は比例的に増加していく。
その分集中しなければ上手く魔法が発動しなかったり、最悪自爆してしまったりとリスクも跳ね上がるが、以前グラニは彼女の許容量の何十倍もの力をコントロールして見事にその力を示して見せた。
今回は自分がそれをする番だと意気込んだリアニは全意識を周囲の魔法力に集中させていく。
しかし、それを易々と許してくれる相手ではなく、格好の的となったリアニへ向けてシェムヴィアルは魔法を放ち、その集中を途切れさせようとする。
「獄炎矢よ穿ち抜け」
至極色の巨大な矢が小さな少女へ向けて放たれ、空間ごと燃やし尽くしながらその矢は空を翔る。
しかし少女に近づく矢の前には一柱の天使が立ちはだかり、その天使も魔法を放ってその矢の相殺を試みる。
「閃光盾よ拒み防げ」
突如として現れた光のカーテンはその矢の勢いを段々と押し殺していくも、その矢から燃え上がる炎の勢いは留まらず、巨大な漆黒の爆発を引き起こした。
周囲に真っ黒な煙が上がり、物の焼け焦げる臭いが充満する中、カリスとミシェルは悪魔が油断したその一瞬の隙を捉えようとする。
「閃光に貫かれよ!!」
「氷剣よ引き裂け!!」
放たれた光線と氷剣は黒煙を貫き、悪魔の身を真っ二つに切り裂いた。
その身から血飛沫が噴き出すも、すぐにその勢いは収まっていき三秒経った後には傷跡すら体には残っていなかった。
「クッソ! やっぱり回復が早い!」
「カリスさん! ここは魔法を浴びせ続けて、回復を上回る傷を与え続けましょう!」
「その案採用! 行くよミシェ――」
意気込む二人の体が横一直線に引き裂かれ、腹部からとめどなく血が溢れ出す。
目の前の悪魔もただやられ続けてくれるわけではなかったのだ。
煙が晴れた後にリアニとラヴィエルが目にしたのは、悪魔の反撃をもろに喰らった二人が力なく落下していく様だった。
二人の間に一瞬動揺が走るものの、リアニは悪魔の真横を突っ切って全力で二人の体を救い上げる。
その速さはラヴィエルがオブスカーラで見せた速さにも匹敵するほどのものだった。
ラヴィエルはその間、シェムヴィアルがリアニの邪魔をしないように絶えず魔法を放ち続けて注意を引き続ける。
なんとか相手側の戦力を削ろうとシェムヴィアルも躍起になってリアニの邪魔をしようとするも、熾天使が繰り出す魔法を防ぐのに手いっぱいで、妨害にまで意識を割くことができなかった。
「お姉ちゃん! エルちゃん! すぐに治すからね!」
リアニは二人を魔力で空中に浮かせて抉られた傷口が自分の視界に入るように支えてやると、不意に頭に浮かんできた魔法を詠唱する。
「慈愛の白光!」
なぜこの魔法が頭に浮かんできたかは分からなかったが、リアニにはこの魔法で二人を完璧に癒すことができるという謎の自信があった。
その自信の通り、二人の傷口は完璧に治るとすぐに意識を取り戻し、驚いた二人は引き裂かれた服の下を触って傷口を確かめる。
纏っている衣類は引き裂かれ、鮮血も滴り落ちるほど付着しているが、その鮮血を吹き出した傷口はどこにもなかった。
二人はゴクリと唾を飲み込み、改めて目の前の少女の力の格の違いというものをその身で思い知った。
「ありがとうリアニ。さすがは私の自慢の妹よ!」
「すごいよリアニちゃん! ありがとう!」
「二人ともちゃんと治ってよかった……。ここから反撃していこう!」
カリスとミシェルは気丈に振る舞うも、その力の異質さにどこか恐怖すら感じていた。
しかし当のリアニはその力を何とも思っていなさそうに行使しているため、その感情を表に出すわけにはいかなかった。
リアニがこのタイミングで考えていたことは、この与えられた力をいかに引き出して戦いに貢献するかということ。
故にその力の強大さについてはあまり深く考えていなかったのである。
そして彼女の力はさらなる開花を見せ、ラヴィエルを除いたすべての者を圧倒するのだった。
「月夜の葬送曲」
*
一方スワヴォータの民たちは、彼らが”ヌシ”と呼んでいたエンデとそれが引き連れてきた群れの殲滅に当たっていた。
彼らの古より受け継がれし魔法はエンデの体を一瞬で塵に変え、その数をどんどん減らしていった。
しかし”ヌシ”の体だけは特別で、彼らの魔法を浴びせてもビクともしない強靭な体を持っていた。
自分たちの魔法が通用しないと分かると、すぐさま魔法を攻撃から拘束へと切り替え、できるだけ少人数で”ヌシ”の動きを封じ、邪魔なエンデの群れの殲滅に多くの者が当たれるようにしていた。
霊魂を用いたその拘束魔法は、対メフィスの戦いでカリスが用いた呪具のそれとはまるで違い、拘束力が桁違いだった。
見てくれこそ大した差はなかったが、その威力までを完璧に再現することは困難だったのだ。
そうしてスワヴォータの民たちは、数人規模で自分たちの何倍も力のあるエンデを抑え込むことができていたのだが、突如として”ヌシ”が大きな咆哮を上げると、その魔法の威力が段々と弱まっていき、ついには自由を許してしまう。
エンデの殲滅を終えていない中暴れ回る”ヌシ”に何人かの者たちは大怪我を負うも、”ヌシ”はその命までを奪うことはできなかった。
これは熾天使ラヴィエルの熾天使の暁光の効果によるもので、その効果は魔法の対象に熾天使の特別な魔力を貸し与えるのと、その者を鼓舞するほかにもう一つ、最硬度の魔力壁を常に纏わせるというものだった。
それによって守られた者たちは順に手当てを受けると、再度エンデの殲滅と”ヌシ”の拘束に当たる。
じりじりとスワヴォータの民たちが押していき、ついにはエンデの群れの殲滅を成し遂げた。
ここから彼らの復讐劇が幕を開ける――。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
これでもかというほど新しい魔法を詰め込んで、自分好みのお話に仕上げられたなぁと思います。
ついでに漢字に全く別の読み方を当てるの好きすぎん? と若干自分で引いてしまった部分もあったり……。
ただ全く別の意味合いというわけではないので、ご興味があれば調べてみてください。
(ちょっと読み方を変えたりしている物もあるので、全部が全部正しく出てくるわけではないと思います)
ブックマークのご登録、ご感想等いただけるとモチベーションにつながり、創作活動はかどりますので、ぜひぜひお願いいたします!!
また誤字や脱字等ございましたご報告のほどお願いいたします。
拙い物書きですがこれからもよろしくお願いいたします。




