歓迎
本編進めるか、人界人物録書くかで迷ってたら三週間も経過してて腰を抜かしました。
そうして熾天使シエルの話は一晩にして町全体に広がり、翌日から早速訓練が始まった。
大天使ヴァミエルが中心となり、さらに天界からやってきた数十人の天使たちの教えの下、人々は戦いの基礎、武器の使い方、魔法の使い方などを、座学や実践を通してそれぞれ全員が一から学ぶこととなった。
天使たちの教えは適格かつその者に合わせた教えで、確実に人々の戦闘力を上げていった。
そんな中、リアニとグラニはシエルと共に、人界へ降り立った天界の軍の下へ向かい、カリスとミシェルは、天界からシエルが呼び出した大天使フュエルと共に、天界へと向かった。
初めはカリスとミシェルが「リアニと離れたくない!」などとごねて、リアニ本人を困らせるなんてことがあったが、「これじゃどっちがお姉ちゃんか分からないね……」などとため息をつきながら、何とか二人を説得し、それぞれ言われた通りに行動してもらうこととなった。
*
シエルに連れられて二人が訪れたのは、オブスカーラ大陸の中央部。
かつてドラコニスの里があったとされる場所。
今はその地に多くの天使たちが建てた簡易的なテントが整然と並んでいて、かつての里の姿は見る影もなくなっていた。
グラニはその光景に胸の奥がちくりと痛み、顔をしかめる。
三人が降り立つと、二人の男性の天使が彼女たちの下へと駆けてきて膝をつく。
「シエル様、お帰りなさいませ。すでに第一陣が誘導を始めております。続く第二、第三陣の用意もすでに完了しております」
シエルはその報告を聞きながら辺りを見回す。
「報告ご苦労。……フィグミエルとミミエルは?」
そうシエルが問いかけると、もう一人の天使がその問いに答える。
「フィグミエル様は一度天界へお戻りになり、再度こちらに向かうとのことです。回線までには必ず間に合わせるとおっしゃってましたので、支障はないかと。そしてミミエル様はこの跡地に何か眠っていないかと一人で辺りの探索をしていらっしゃいます。シエル様が戻り次第、声をかけてほしいとのことでしたので……」
「――相変わらず自分勝手な方たちね……。まあいいわ。ならミミエルをすぐに呼び戻して、三陣にはこの子たちも加えるから、今いる者たちを全員集めさせて」
シエルはテキパキと指示を出すと、二人は「ハッ!」と一礼してすぐに行動へ移す。
リアニとグラニは彼らの行動の速さに驚き感心しながら眺めていた。
シエルの指示が下されてからわずか一分ほどで、彼女たちの目の前には控えていた天使たちが綺麗に並び立っていた。
すこし遅れてシエルのように大きな翼を六つ背中に生やした天使がそこへやってくる。
シエルのような純白のドレスではなく、様々な金の装飾が施された黒いドレスに、角のような装飾が施されたベールを纏っており、ベールの奥に見える小さな顔は、どこか幼さを感じさせるような可愛さがある。
身長はリアニとそれほど大差ないようで、目の前を堂々と歩く彼女と少し目があった。
赤く鋭い眼差しにリアニは少し恐怖を覚えてしまい、そっとグラニの袖をつかむ。
リアニを怖がらせてしまったことに気づいた彼女は、「あっ……」と小さく声を漏らしてそそくさと歩きシエルの横に並び立つ。
「すまない。少し遅れたようだ」
「別に気にしなくていいわ。参加すらしていないやつもいるし……」
そう言って全員が揃ったことを確認すると、シエルは一歩前に出て携えていた剣をその身の前にガンと突き立てて口を開く。
「まずは急な呼び立てにも関わらず、迅速に集まってくれたことに感謝する。今回の使徒殲滅作戦から彼女たち二人にも参加してもらうため、その紹介と作戦の概要の再確認のために集まってもらった。紹介しよう。まずこちらの子がアスピエルの加護を授かって生まれた子、リアニ。そして隣の彼女はこの地に残った最後のドラコニスであるグラニだ。二人には本作戦の要となる第三陣に加わってもらい、使徒の殲滅に当たってもらう。ではそれぞれ簡単に自己紹介を行ってもらおう。――まずはリアニから」
いきなり大勢の見ず知らずの天使たちの前で自己紹介をしろと言われて、戸惑ったリアニは恐る恐る一歩前に踏み出し、少し震える声を何とか張り上げる。
「は、はじめまして! リアニと言います。……え~と、そのアスピエル様……から与えられた加護の力は、まだまだ発揮しきることができませんが、皆さんの力となれるように、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします!」
リアニはそう言って深々と頭を下げる。
すると天使たちからは大きな歓声と拍手が巻き起こり、緊張するリアニを温かく迎え入れた。
ホッと胸をなでおろしながら、一歩下がり、その次にグラニが一歩前に出て口を開く。
「初めまして。シエル様のご紹介に与りました、グラニと申します。この地に残った最後のドラコニスとして、皆さんと一緒にこの世界を守れるように尽力いたしますので、何卒よろしくお願い致します」
グラニは胸に手を当てて深く頭を下げる。
このような場には慣れているようで、その仕草には迷いが一切感じられなかった。
リアニはその仕草や声、表情に目を惹かれる。
(あぁ……やっぱりこの人はかっこいいなぁ……)
天使たちは先ほどのリアニのように大きな歓声と拍手で、グラニも温かく迎え入れた。
彼女たちの紹介が済んだところで、再びシエルが口を開く。
「さて、この後の予定を確認する。現在、すでに作戦の実行に移っている第一陣がこの大陸に残った使徒を、大陸南にあるカルミ平地へと誘導している。これから第二陣はミミエルの指揮の下、カルミ平地を取り囲むように陣形を構築。そして第一陣の作戦終了の合図とともに対終わりの使徒用結界を展開せよ。その結界の発動を確認し次第、第三陣は私と……ここにはいないがフィグミエルの指揮の下、第一陣の撤退を支援しつつ使徒へ攻撃を仕掛ける」
そう言い終えるとシエルはミミエルの方をちらっと見て、彼女と顔を合わせて頷く。
そうしてミミエルもまた一歩前に踏み出すと、その見た目からは想像もつかないような覇気を纏わせ、声を上げる。
「我々に失敗は許されない。女神ハイリヒ様の命を全力で遂行するのだ!」
喝を入れられた天使たちは綺麗に足を揃え、胸に手を当て、誰一人として寸分の狂いもなく声を上げる。
「「全ては女神ハイリヒ様の御心のままに!」」
そうして彼らは作戦の準備へと取り掛かっていく。
彼らのその気迫に圧倒されて動けないでいたリアニとグラニへ、シエルが声をかける。
「何の説明もなくて申し訳ないです。二人とも急な振りにもよく対応してくれてありがとうございました」
彼女はそう言って軽く頭を下げる。
その彼女を横から肘で軽く小突きながらミミエルがシエルの横に立つ。
「道中に説明ぐらいしてやりなよ。リアニちゃんなんかまだ十一歳の子供なんだから、ああいうのには心の準備ってものがいるんだよ。ね?」
そう言いながらミミエルはリアニへウィンクしながら話を振る。
「え、えと……まあ……そうですね?」
「何故に疑問形……? まぁいいや。さっきは怖がらせちゃったみたいでごめんね」
手をすりすり合わせながらミミエルは申し訳なさそうに眉をひそめて謝る。
「え? あぁ、いや、大丈夫です。こちらこそ申し訳ありませんでした」
「謝らないでいいよぉ。悪いのはこっちなんだし。それじゃ私はそろそろ行かなきゃいけないから。二人とも、これからよろしく。仲良くしようね!」
「はい! こちらこそよろしくお願いします」
ミミエルは二人に可愛らしい笑顔を向けた後、天使たちの影に消えてしまった。
そうして三人のみとなったところでシエルが口を開こうとした瞬間、空から悲鳴を上げながら何かが落ちてきた。
地面を抉る衝撃と共に巻き起こった砂ぼこりの中で「いてて……」と腰をさすりながら何者かが立ち上がる。
「ごほっ……。全く、フィグミエル。もう少し熾天使に見合った行動をしてくれ……」
やがて晴れゆく砂ぼこりの中から現れたその影は、ゆっくりと三人の下へとやってくる。
「えへへ……ごめんねぇ。急いで降りなきゃと思ってたら、逆に止まれなくなっちゃってぇ……」
「はぁ……二人とも紹介するわ。このポンコツな天使が熾天使フィグミエルです」
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