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理由

遅れてしまい申し訳ありませんでした。

どう話を進めようか考えてたら時間があっという間に過ぎてしまってて驚きました。


それでは彼女たちのお話の続きをお楽しみください。

 「第二世界……?」

 シエルが語った終わりの使徒(エンデ・アポストロ)の正体――それは第二世界(異世界)からの侵略者とのことだった。

 話が飛躍しすぎて訳が分からなくなったリアニとミシェルは理解することを諦め、二人でしりとりをして遊び始めてしまった。

 その他の者たちは真剣な面持ちで言えるの話に耳を傾ける。

 「女神ハイリヒ様はこうおっしゃいました。”この世界の他にも数多の世界が存在しており、世界の扉を開くことができるのならば世界間を自由に行き来することも可能である。”私たちにもいささか信じ難い話ですが、女神ハイリヒ様は天界を、そしてこの世界を見守る者。この世界のことを誰よりも深く理解なさっているお方なのです」

 その方が言うからには事実なのだろうとシエルはそう話すと、一同は再びざわつき始める。


 ここで一つの疑問がシリカの中に浮かび上がる。

 「なるほど……。失礼かもしれませんが……ではなぜ世界を見守るハイリヒ様は人界が異世界の侵略を受けていたにもかかわらず、その手を差し伸べてくれなかったのでしょうか? 三界のバランスを大きく崩す原因となった終わりの使徒(エンデ・アポストロ)を今まで放置していたのはなぜなのでしょうか?」

 シリカのその言葉にはどこか怒りのこもった棘があった。

 それはひそかに心の隅で皆が思っていたことだった。

 シエルが奴らを一瞬で消し去るところを彼らは目の前で目撃している。

 その力を最初から振るってくれていたら、この世界はこんなにも荒れ果てることも、多くの人々が死んでしまうこともなかったのではないだろうか?

 大切な仲間も、愛する家族も、安らかに眠れる毎日も、全てやつらが奪ってった。

 結果として、冥界の悪魔が侵略する隙を生み出してしまったのだ。

 シリカはよっぽどの理由を述べられたところで、この事態を許す気にはなれなかった。


 シエルはしばらく沈黙した後におもむろに口を開く――。

 「――まずは亡くなった方たちに哀悼の意を表します。そして今まで私たちが人界に蔓延る終わりの使徒(エンデ・アポストロ)を放置していた理由をお話いたします」

 シエルは机に魔力でとても大きな鏡のようなものを投影させる。

 「これは……?」

 「こちらは先ほど申し上げました、私が実際に見た世界の扉の外形を魔力で投影したものになります。実際の物はこれよりもはるかに大きく、エンデ数十体程度でしたら一気に通り抜けることが可能なほどでした」

 それは普通の鏡のように見れるのだが、その中心はまるで深淵を覗き込んでいるような暗さの渦があり、その先は全く見通すことができなかった。

 この渦の向こうからあの化け物たちが出て来るところは、想像するだけでも末恐ろしかった。

 「これが……世界の扉……」

 カリスはその扉をまじまじと見つめる。

 それはどこか既視感のある物だったのだが、どこで見たかまでは思い出すことができなかった。

 必死に思い出そうとしているとカルマが不意に口を開く。

 「シエル様。これをどこでご覧になったのですか?」

 「この世界の扉は天界、人界のあらゆる場所に隠すようにして開かれていました。確認はしていませんが、おそらく冥界にも開かれていることでしょう。人界で見た場所の例を挙げるなら……カルミアレの城跡の奥地にこの扉が開かれ、そこからエンデ達が湧き出て……いや向こうの世界からやってきていました」

 その発言でカリスはその既視感の正体に気づく。


 彼女はメフィスがオブスカーラの大国、カルミアレへ向かったという手紙を発見し、急いでその地へ向かった際、すでに国は滅んで焼け野原となっており、そこには数多のエンデが地上を徘徊していた。

 その際にむき出しになった城の地下にこの扉の一端が見えていたのである。

 「あぁ……思い出したわ。確かにカルミアレでこんなものを見たことがある」

 「私たちはこの扉を閉じるためこの約十年間奮戦してきました。まずこの扉を一つ閉じるにあたって私たち天使のおよそ半数の者、そして何十か月という時間をかける必要がありました。何人かの天使たちは人々を守りながら行うべきではないかと、異を唱えた者もおりました。しかし元を先に断つことが人界を救う最短の手である。それが女神ハイリヒ様の命でした。私たち天使にとって、女神ハイリヒ様の命は絶対。その命に従った結果、私たちは人界にのさばるエンデを放置することとなったのです」

 そう語るシエルの顔はどこか後悔しているようだった。

 その顔をみたシリカは「そう……」とだけ言って、これ以上彼女を責め立てる気にはなれなかった。


   *


 重苦しい雰囲気を何とか変えようと、イーバンダが口を開く。

 「この話題はここまでにいたしましょう。それでシエル様、我々が次に行うべきことをお教え願えませんでしょうか? 如何にして悪魔の侵攻を防げばよいのでしょう?」

 シエルは咳ばらいを挟んでから、顔を上げて話し始める。

 「そうでしたね。人界の皆様にはこれから私たち天界の者たちによる戦いの訓練をこなしてもらいます。私たち天界の者たちだけでは、あの悪魔の軍勢を退けることはできません。故に、人界の皆さまも悪魔に対抗し得るだけの力を身に着けてもらいます」

 そう言うとシエルは手を二回叩いて「入りなさい」という。

 すると扉がすぅっと開き、一人の男がお辞儀をしながら入ってくる。

 純白の鎧を身にまとった金髪のその男は扉を閉めると背中から二枚の翼を生やす。

 「紹介します。この者は皆様の強化訓練の総指揮を担当する大天使ヴァミエルです」

 その男は胸に手を当て再度頭を下げる。

 「ご紹介にあずかりました、皆様の訓練の指揮を担当いたしますヴァミエルと申します。誠心誠意この皆様のお力となれるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いします」

 そう言ってにっこりとほほ笑む彼の声を聴いて、カリスはハッとする。

 「あ、あなた! 組織の!」

 「その通りです、カリスさん。あなたに協力を依頼していた”組織”。あれはわたくしたち天界の者たちだったのです。今までのご協力感謝申し上げます。そしてあなたに辛いお仕事を任せてしまい申し訳ありませんでした」

 今まで彼女にメフィスの情報を提供し、彼女が接触した人を殺させていたのは、彼ら天界の者たちだった。

 彼らは天界から人界の様子を逐次確認し、そこで確認できた情報をカリスに無線の端末機を通して伝えていたのである。


 その様子を横目にシエルは話を進める。

 「さて、それでは明日より彼の指揮に基づいた訓練を行っていただきます。皆様の世界を守り切れるよう尽力してまいりましょう」

 とんとん拍子で進む話に若干乗り遅れながらも一同は頷いて、それを伝えるべく各々部屋から退室していく。

 そんな中、リアニ、カリス、ミシェル、グラニの四人はシエルに呼び止められ、部屋に残ることとなった。

 「さて、あなたたち四人には私たちと別のことを手伝っていただきたいのです」

 「別の事……?」

 シエルは頷くと、天界の様子を魔力で映し出す。

 そこには負傷した数多の天使たちが映っていた。

 その光景は悲惨なものであり、四人は息をのんでその様子を見ることとなった。

 「世界の扉を閉じる際に私たち天使も無傷とはいかず、大勢の死傷者を出すこととなりました。今治癒の魔法を使える者たちが急いでその手当てを行っていますが、全く間に合っていない状況です。――しかし世界の扉を閉じてもなお、この世界に残ったエンデは未だ数多くいます。そこで、あなたたち四人の力を見込んで、私たちと共にエンデの殲滅をお願いしたいのです」

 四人は顔を見合わせる。

 その顔は不安や恐れと言った感情が入り混じっていた。

 「た、確かに私とリアニ、ミシェルは万物の終焉(オムニアエバニッシュ)で奴らを消し去ることはかのですが……それでも時間がかかるので効率的とは思えません」

 「それに彼女たち三人ならまだしも、私までもが加わる理由は何でしょうか?」

 カリスとグラニはそれぞれ疑問を呈する。

 シエルはその疑問は最もであるといった風に頷くと、それに答えていく。

 「そうですね。まずカリスさん、ミシェルさんのお二人には天界へ赴き、彼らの傷を治療する手伝いを行っていただきたいのです。その上で、彼らから天界の魔法を伝授し、習得していただきたい。そしてグラニさん、リアニの二人には私と共に人界へ赴いている天界の軍と合流し、エンデ殲滅の手伝いを行っていただきたい」

 カリスはどこか納得しきっていないながらも頷く。

 しかしグラニの疑問は全く解決していなかった。

 「……? 私にエンデを消滅させる力など……」

 「ありますよ。あなた方ドラコニスには私たち天界の天使や、冥界の悪魔を超える力を有しています。あなたはまだそれを使いこなせていないだけ。この戦いの中でそれを使いこなせるようになれば、悪魔たちとの戦いでより優位に立てることになるでしょう」

 シエルはグラニの言葉を半ば遮るようにそう答える。

 グラニはそう言われ、自分の手をじっと見つめて黙り込んでしまった――。

ここまでお読みいただきありがとうございました。




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よろしくお願いいたしやす。

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