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死闘

 「そんなっ! 万物の終焉(オムニアエバニッシュ)が効いてない…………!」

 「フフッ、実に素晴らしい魔法だったよ。自らの力で禁術を生み出すとは、恐れ入ったよ。しかし僕と僕が守る物には”絶対に”効かない」

 メフィスを消し去ることに失敗した――。

 それはこの世界の終わりを意味する。

 そしてその終わりが始まったかのように、絶望に満ちた悲鳴や断末魔が各地で響き始める。

 「メフィス、君が織りなすこの芸術的な魔法はいつ見ても美しいね……」

 「エヘヘ……ウレシイヨ、アスモ……」

 そうして抱き合う二人は息を合わせてさらなる禁術を唱える――。

 「「終わりの使徒よ(ファージ)私たちに従え(ミア)」」

 カリスはその術を唱えられた瞬間、ミシェルとリアニ、グラニを魔力の腕で抱えて空へ飛び上がった。

 突如その四人がいた地面の下から、異様に発達した大顎を持つアリジゴクのようなエンデが飛び出してきた。

 その鎌のような大顎は約五メートルほどの大きさがあり、飛び上がった四人のすぐ足元にまで届いていた。

 一息つく間もなく次なるエンデと落雷、隕石が四人に襲い掛かる。

 「クッソ! これじゃあいつらを攻撃できない……! 三人は何か方法を考えて! 私はあなたたちを全力で守るから!」

 度重なるエンデの攻撃をカリスは四人を抱えたまま避けたり、魔力壁で捌いたりして何とかその攻撃をしのいでいた。

 「何か手はないの……? このままじゃカリスもろとも私たち全滅よ……!」

 「……リアニちゃん、あとどのくらい?」

 「ッ! 何か手があるの!?」

 ミシェルはグラニの方を見てうんと頷く。

 そしてその視線はリアニへと向けられると、リアニはグラニとカリスへこう告げる。

 「グラニさん、お姉ちゃんに加勢して私たちを守ってください! お姉ちゃん。あと二分だけ持ちこたえて!」

 グラニとカリスはその詳細も聞かずに「「分かった!」」と揃って大きな声で返事をし、二人で協力してその猛攻をしのぎ続ける。


 「まだあの闇は爆発してない……。二人を倒すことはできなくても、世界の終わりだけは阻止できる……!」

 リアニとミシェルは二人両手の平をぎゅっと握り合うと、メフィスが動き始めた時に一緒に解き放たれた空間魔法力やメフィスからあふれ出た魔力を、二人の間に吸い込むようにして集めていく。


 その二人の動きに気づいていながらも、アスモは余裕の表情をしてその様子を眺めていた。

 「あの二人、何か企んでいるね。ただ僕の”拒絶”の力の前にはすべてが無力。安心してくれメフィス、誰にも君を傷つけさせやしないから……」

 「フフフ……アリガトウ。アイシテイルワ……アスモ。ずっとイッショニいてホシイ……」

 「あぁ。もちろんさ。この世界を二人だけの永遠の楽園に作り変えるんだ。そこではずっと一緒にいられるよ」

 終わりを迎え始める世界の中、二人は抱き合い口づけを交わす。

 赤黒い雷と空から落下する隕石はメフィスの感情に呼応するように、その威力と勢いをさらに強め、地上の全てを破壊していった――。


   *


 四人が奮戦する中、地上は混乱を極めていた。

 執拗なエンデに襲われながらもなんとか拘束魔法を起動させ、メフィスと魔法はその後三人の魔法によって消滅するはずだった――。

 しかし万物の終焉(オムニアエバニッシュ)が放たれてもなお、世界を覆う闇は微塵も晴れない。

 それどころか周囲にメフィストもう一人、謎の男の声の魔法の詠唱が響き渡った後、想像を絶するほど数の様々なエンデ達が、各部隊に襲い掛かって来た。

 巡回遊撃隊も含めた全ての隊が甚大な被害を受け、作戦の続行は困難となっていた。

 襲い掛かる数多のエンデは防衛部隊の抵抗をその質と量で粉砕すると、彼らが命に代えても守れと命じられていた杭を破壊し、その場にいる魔法起動部隊や防衛部隊を見境なく襲い始める。

 全六か所すべての地点の杭が破壊されたとの報告を受けたイーバンダは、一人でも多く生かすために撤退の赤い魔煙灯を空に打ち上げる。


 イーバンダはあちこち駆けまわり、一体でも多くのエンデを引きつけて殲滅していった。

 しかし化け物を相手に無傷でとはいかず、新調した鎧はボロボロに砕け散り、体のあちこちには大きな傷ができていた。

 そして彼の左側の視界はこの戦いによって永遠に闇に閉ざされることとなった。

 「イーバンダ!」

 「カルマ、それにお前たちか、生きてるようで何よりだ」

 彼の元にカルマ、フェロズ、ハイロン、シリカ、の四人が集まった。

 カルマは落雷と隕石を防ぐため、五人を覆うように魔力壁を展開する。

 皆無傷とはいかず、それぞれどこかしらに大きな傷を負っていた。

 「イーバンダ、あなた目を……」

 「よせ。俺はこのままでも戦える。魔力は少しでも残せ」

 そう言ってハイロンの治療を拒んだイーバンダは、五人の元に迫りくるエンデ達に目を向けていた。

 フェリステアでも観測されていた巨大な人型のエンデに、はさみと尻尾のとげが刃物のように鋭くなったサソリ型のエンデ、以前カリスがその禁術を使用したときに出たドラゴン型のエンデなどが、四方八方から迫ってきていた。


 フェロズがイーバンダの横にすっと立ち、彼に問いかける。

 「よう、われらが指揮官様。勝算のほどは?」

 「なんだその変なしゃべり方は……。まあ……ほぼない。が、やるしかねぇんだよ。あいつらが四人の元へ行かねぇように時間を稼がねぇと……きっとあの四人ならこの状況を全部ひっくり返してくれる。そんな気がするんだ」

 「へぇ~……んじゃ俺も、あんたの予感に賭けてみるとするかね」

 そう言ってフェロズは武器を構える。

 彼が身にまとう白金の鎧はあちこちが砕け、身体の傷から流れ出た血が一部を赤く染めていた。


 もう一人、全身を隠すように布を身にまとった狙撃手がその横に立つ。

 「私もその予感に賭けるわ。あの子たちなら……きっと大丈夫」

 シリカはいつものボウガンではなく、対エンデ用に開発された剛弓を構える。

 彼女の身にまとった布はあちこちが破け、中の白い肌が露出し、そこから鮮やかな血が滴り布を赤黒い染みを作り出していた。


 「私、賭け事は苦手だけど……なんとなくこの賭けは成功する気がするよ」

 ハイロンは彼らの後ろに立ち、彼らが負った傷を少しでも塞いでいく。

 しかし彼女自身も、隕石や落雷に巻き込まれ、その体は万全とはとても言えないものだった。

 鮮やかな緑の長髪はどこか乱れ気味で、白い服は焦げたような跡がいくつもある。

 また左の太ももには隕石の破片が突き刺さっており、そこからは絶えず鮮血が流れ出る。

 しかし彼女は治療を自分に施すことなく、目の前に立つ勇士たちに癒しの力を使う。


 銀髪の男はふらつく彼女を支えるようにして立つ。

 「ははは……こうなったら全力で世界の終わりに抗ってやりますか」

 カルマはハイロンを支えながら、前に立つ三人の武器へ魔力を付与していく。

 彼が魔力を使う度、彼の体は悲鳴を上げる。

 折れたあばら骨は動くたびに激痛を走らせ、切り裂かれた右腕からは赤黒い血がだらだらと流れる。

 率いた兵をかばって受けた頭部の傷は彼のきれいな銀髪の一部を赤いアクセントをつける。


 「よっし! お前ら! 俺たちの力を、あの化け物どもに知らしめてやろうぜ!!」

 「「「おう!!!」」」


 そうして彼らは荒れ狂う落雷と隕石が降り注ぐ中、異形の化け物と命を懸けて死闘を繰り広げ始めた――。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


いつか各キャラの出自や裏話なんか詳細にまとめようかなぁと思います。

需要あるかはわかりませんが、楽しみにしていただけると嬉しい限りです。



ブックマーク登録、ご感想等いただけるとモチベーションにつながり、創作活動はかどります。


よろしくお願いいたしやす。

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