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合流

 「大いなる闇よ(オムニア)全てを壊せ(ペルデレ)

 魔力を強烈な勢いで吸われる中、彼女は静かにそう唱えた瞬間――彼女の後ろの空が割れるように砕け散り、そこから巨大な闇の大穴(ブラックホール)が出現した。

 「ハハハハハ! さぁ! スベテをコワシ、アノカタノもとへ!」

 そしてそれが現れた瞬間、リアニとミシェルの共同魔法の魔法陣、そしてカリスが必死に食い止めていたメフィスの隕石の魔法の魔法陣がまるでガラスが割れるような音と共に崩れ去った。

 「な……なにあれ……」

 ミシェルは目の前に突然現れた巨大な闇の塊を見て呆気にとられる。

 対照的に、リアニはそれを見るなり急いでメフィスの元から全力で逃げるように距離をとる。

 「ごめんエルちゃん! 飛ばすよ!」

 振り落とされそうになるミシェルを魔力で支えたまま、リアニはカリスの元へ向かい彼女と合流する。

 「お姉ちゃん……どうしよう……」

 「あれを使われた以上、三人だけで対処するのは難しい。……ここは一旦下の彼らと合流して対策を練るしかない」

 「で、でもあのまま放置するのは……」

 目の前の見たこともない強大な力に絶望の色を浮かべたミシェルは、震えた声をカリスに投げかける。

 「今はまだ大丈夫。あの魔法は”大いなる闇よ(オムニア)全てを壊せ(ペルデレ)”という禁術の中の禁術とも呼べる魔法で、あれの起動には時間がかかる。つまり、まだ取り返しのつかないとこまで行ってないの」

 カリスはそう話して焦るミシェルを落ち着かせ、二人を連れて下のオアリアの地で戦っていた勇士たちの元へ向かう――。


   *


 五人の勇士たちは空にできた巨大な大穴をただ見上げることしかできなかった。

 「あれは……なんなんだ……」

 イーバンダの呟きに答える者はいない。

 彼らは黙って闇を見上げていると、空で戦っていた魔女たちがこちらに向かってきているのが見えた。

 その三人は焦土と化した地にふわりと降り立つと五人へ向かって挨拶を始める。

 「初めまして。私はカリス、そしてこの子たちはリアニとミシェル。あなたたちと同じように”始まりの魔女メフィス”を打ち倒さんとするものです」

 三人が順に頭を下げていくと、それに続いてイーバンダも五人の紹介を始める。

 「初めまして。私はイーバンダ。ミアルバーチェの兵たちを纏める総指揮官をしている者だ。そしてこちらの四人はカルマ、フェロズ、ハイロン、シリカだ。四人とも素晴らしい技術を持つ者たちで、私は彼らにそれぞれの部隊の隊長を任せている」

 イーバンダは四人に順に指を差しながら簡単に紹介を済ませると、すぐに本題に入る。

 「早速ですがカリスさん。あの空に浮かぶ巨大な闇の大穴は一体……?」

 「あれはメフィスが使う禁術が生み出したブラックホールです。あれが起動してしまえばこの世界は確実に滅ぶことになるでしょう」

 そのカリスの発言にシリカを除いた四人は騒然とする。

 しかしカルマはカリスの発言に違和感を感じて問いかける。

 「起動してしまえば……? つまりあれはまだその効果を発揮し始めていないのですか?」

 カルマの問いにカリスは頷くと、その禁術の詳細について話し始める。

 「カルマさんのおっしゃる通り、あの術はまだその効果を発揮するには至っていません。今はその準備段階だと思っていただければ大丈夫です。そして術者は術の起動まであの場を離れることができません」

 「それなら今がメフィスを叩くチャンスなんじゃないか?」

 フェロズはカリスにそう問いかけ空中にいるメフィスを指さす。

 しかしカリスは首を横に振る。

 「この術の厄介なところの一つ目が、術が完全に起動するまで術者は()()()()()()()()()()()()()()、というところです」

 「なにそれ……ズルくない……?」

 ハイロンが眉間にしわを寄せてそう呟く。

 カルマは彼女のその呟きを受けて「ズルい上に効果は絶大。だからこそ禁術と呼ばれているのでしょう……」と悟ったように話す。

 そうして彼らの話を聞いていたミシェルがおもむろに口を開く。

 「カリスさん。あの術はあとどれくらいで起動するの?」

 そう、今はそれこそ一番重要な話題であるだろう。

 問題はあとどれだけの時間が残っていて、その間にどのような対策を用意するか。

 カリスたちはこの対策に協力してもらうために、地上で戦う勇士たちの元へと来たのである。

 「……私たちに残された時間はあと二日。二日の間にあれに対抗する策を用意できなければ、その時は世界もろとも永遠の眠りにつくことになる……」

 「たったの二日……!?」

 カリスとリアニを除いたこの場の全ての者が衝撃で顔をこわばらせる。

 「二日……ですか。ただカリスさん。あなたには何かこの状況を打破できる策があるのでしょう……?」

 カルマにそう問いかけられたカリスは大きく頷く。

 「ただこの人数では人手が全く足りません……」

 「わかった。ならば一度ミアルバーチェの町まで戻ろう。カルマの話じゃそろそろ迎えが来るはずだからな――」


 イーバンダがそう言ったタイミングで、焦土となったオアリアの町に三つの馬車が到着する。

 そして最前の馬車の馬の手綱を握っていたストールが慌てた様子で八人の元へ走ってくる。

 「え、援軍を……連れてきた……ぞ……?」

 馬車の中からミアルバーチェの守りをしていた兵たちが次々と出て来るが、固まって話をしている部隊長たちの姿を見て混乱が広がった。

 「あぁ……みんなわざわざすまない。メフィスの野郎との戦いは一段落ついたってところだが……帰ったらみんなに話したいことがある」

 イーバンダは混乱する兵たちをなだめると、各々もう一度馬車に乗り込むように指示を出す。

 それに合わせて八人も馬車に乗り込んでいく。

 そんな中、一つの馬車から高身長のドラゴニスの女性がイーバンダの元へ歩み寄ってくる。

 「その話したいことって、あの闇の塊の件……だよね?」

 「グラニ……お前まで来てたのか……。あぁそうだ。詳しくは向こうについてから話す」

 「そう……。それであの可愛らしいお嬢さんたちは?」

 グラニは一番後ろの馬車にハイロンとシリカの二人と共に乗り込んだ、三人の女の子を横目にイーバンダに彼女たちのことを聞く。

 「カリス、リアニ、ミシェルという名の魔女だ。あのメフィスと互角以上にわたり合っていた。ただ者じゃないぞ。……安易に手を出したりすると痛い目を見るかもしれんぞ」

 「そう……」

 グラニはうっとりとした表情でその話を聞いていた。

 そうして彼女はその馬車に乗り込むと、三人の対面に座るハイロンとシリカの隣に座って長い足を組むと、三人をじっと見つめる。

 その視線に耐えられず、ぎこちなく感じていたリアニがグラニへ話しかける。

 「えっと……お姉さん。そんなに見られると……緊張しちゃいます……」

 「ウフフ……ごめんね。あんまりにも可愛いものだからついね。自己紹介がまだだったね。私はグラニ。一応”最後のドラゴニス”……って言われてるわ」

 彼女は胸に手を当てて自己紹介を済ませると、それに続いてリアニ、カリス、ミシェルも各々自己紹介を始める。

 「わ、私はリアニです。えと……まだまだ未熟な魔法使い、です」

 「あんたが未熟ならこの世界に熟練の魔法使いなんて呼べる人はいなくなってしまうでしょうね。私はカリス。リアニと同じ魔法使いで、彼女の姉よ」

 そう聞いた瞬間、眠るように話を聞いていたシリカの眉がピクリと動く。

 しかしそれに気づくものは誰もいなかった。

 「私はミシェルといいます。リアニちゃんとはお友達で、二人に魔法を教えてもらってる見習いです」

 そう言って三人は順に頭を下げて挨拶を済ます。

 「三人の強さはイーバンダから少し聞いてるわ。何でもあの化け物魔女と渡り合ったとか……とっても強いのね……特にリアニちゃん。あなたからはカルマ以上の魔力を感じるわ……。また今度、ゆっくり()()()しましょ?」

 「あぅ……えと……はい……わかりました……」

 グラニのそのニコニコした含みのある笑みにリアニは逆らうことができなかった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。




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よろしくお願いいたしやす。

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