表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

選挙ポスター

作者: みくた

 深夜に近い時間帯。郊外の駅に降り立った私は、自宅に向けて民家と畑の混在する地域の県道沿いを一人歩いていた。

 この時間帯ともなると、通る車もまばらで歩行者もほとんど居ない。

「ん?」

 畑の中に建つ数軒の民家を通り過ぎたあたりで、ふと背後に気配を感じ振り返る。

 しかしそこには誰もおらず、民家の塀に貼られた選挙ポスターが爽やかに微笑んでいるだけであった。

「ああ、これか。」

 どうにも夜は神経が過敏になる。

 特に私は気にすることもなく、踵を返すと再び歩き出した。

「・・・。」

 しばらく歩き自宅まであと半分かという地点で、また背後が気になり出し振り返る。

 すると今度は立て看板にあの笑顔が貼り付けられていた。

「・・・っ。」

 私は気味の悪さを感じ、思わず足早にその場を立ち去った。

 そして、無意識に早足で帰路を急いでいると、自宅近くの信号に捕まってしまう。

 立ち止まった私は焦る気持ちを抑え、大きく息を吐くと徐々に落ち着きを取り戻した。

「・・・ただのポスターに何ビビってんだか。」

 私はそう自分に言い聞かせる。もうすぐ信号も青になりそうだ。

 私は顔を上げ、なんのけなしに横を見る。

「・・・っ!」

 血の気が引いた。

 道路を挟んだ向こう側に建つアパートの手すり全てにあのポスターが貼られていた。

 信号が変わった瞬間、私は全力で駆け出した。

 そして、そのまま自宅に駆け込み鍵を掛けると、玄関にへたり込む。

「・・・マジでなんだあれ!?新手の選挙活動!?ぜってーあの候補者には入れねぇぞ。」

 冷静さを取り戻すため、私はその場で心の内を吐き出した。


 後日、選挙当日。

「おい、あいついねぇんだけど・・・」

 会場の候補者一覧にその候補者の名前が見当たらない。


 あの夜、私が見たポスターは何だったのだろうか・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 選挙ポスターの写真は目力が強いので、街中などで不意に目線が合うとドキッとさせられますね。 ましてや本作の視点人物は夜中に選挙ポスターの写真と目線が合ってしまったのですから、一層にドキッとさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ