【8話】氷◾️錬金術師
鷹様を追いかけて行くと中庭に出た
周囲は日が落ちた夕方の赤に染まっていた
【鷹】
「・・・もう、こんな時間か」
不愉快そうに鷹様が小さく呟いた
・・・今日の会議はだいぶかかってしまったから仕方ないかも
「元気~?」
突然、昼間声をかけた紫色の髪の女の人が軽い感じで話しかけてきた
・・・なんて馴れ馴れしい
【氷歌】
「・・・ちょっと」
さすがに鷹様に失礼だと思い横目で睨んでやった
【鷹】
「ミーナじゃん!久しぶりだな~?」
が、鷹様は同じように軽い調子で返事をした
【氷歌】
「・・・お知り合いなのですか?」
少し焦りを感じつつ鷹様に尋ねた
【鷹】
「うちの専属錬金術師だよ、そんな事も知らないのか?」
呆れたように返された
【氷歌】
「・・・すみません・・・勉強不足でした」
そんな鷹様に申し訳なさを感じ視線を下げ謝った
・・・正直、人が多すぎて全員なんて覚えられない
・・・でも、それは言い訳だ
・・・もっと頑張らないと
【ミーナ】
「まぁまぁ~!トーナメント終わったばっかりで勤務は今日からなんでしょ?仕方ないって」
苦笑いで私をフォローしてくれたようだ
【鷹】
「そう言えばさ~俺、欲しい物ができたんだよ」
女の人の言葉を無視するように言葉を向けた
【鷹】
「こいつが来てる上着が欲しいんだよねー、作ってくれる?」
そう言って私を指差した
【ミーナ】
「・・・上着って・・・技能者の上着の事!?」
その言葉に驚いたような引いたような声を上げた
【ミーナ】
「無理無理!技能者の上着にどれだけの性能が入ってると思ってるの!?」
【鷹】
「だから欲しいんじゃん、錬金術師なんだから作れるだろ?」
慌てたように返した女の人を少し笑いながら返している
【ミーナ】
「そんな簡単にはっ」
【鷹】
「不可能を可能にするのがお前ら錬金術師だろ?頼んだからな~」
そう言って鷹様は街の方へと歩き始めた
【ミーナ】
「・・・ほんと無茶な事ばっかり言うんだから」
そんな鷹様を見送りながらため息をついている
・・・私もすぐに鷹様の後を追おうと思ったが
【氷歌】
「・・・先ほどは無礼な態度をしてしまいすみませんでした」
先にこの人に謝っておくことにした
【ミーナ】
「やだやだ!頭下げないでよ~!私はかなり優秀だけど~ただのルルーカトップの錬金術師なんだから~!」
突然の私の行動に慌てたように声を上げた
・・・が、何故か全然遠慮しているようには感じない言葉だ
【ミーナ】
「立場的には鷹くん直属の部下である貴女の方が上よ、だから私に敬語なんて使わなくていいし
ミーナって呼び捨ててくれて構わないわ」
そう言ってにこっと笑った
・・・まぁ確かに
・・・この人の言葉通り立場は私の方が上かも知れない
【ミーナ】
「その代わり私も氷歌って呼ばせてね~」
【氷歌】
「・・・珍しいわね・・・貴女みたいな人」
気さくな笑顔を向けてくれるミーナに思わず声に出していた
【ミーナ】
「・・・んー、結構疲れちゃってる感じ?」
そんな私に少し笑いながら返して来たが
【氷歌】
「・・・・・・・」
言葉を返す事は出来なかった
【ミーナ】
「まぁ、無理も無いね~鷹くんに使えるなら上層の人達と顔会わせる事も多いだろうしね」
・・・秘書の女程度の人間ならまだ良い
・・・でも、それ以上の立場の人間には言い返す事も出来ない程に立場が違う人たちばかり
・・・正直、気が休まることがない
【ミーナ】
「相談くらいならなのれるから~分からない事とか困った事があったらいつでも来てよ!」
そう言って名刺のような物を渡してきた
【氷歌】
「・・・ありがとう」
それを素直に受け取った
ここに来て日の浅い私には普通に話せる人なんていないから
・・・本当に助かるかも
【ミーナ】
「じゃあ~私はそろそろ帰るけど、良かったら遊びにくる?」
【氷歌】
「・・・せっかくだけど、私は鷹様のところに行かないと、また今度寄らせてもらうわ」
笑顔の誘いに笑顔で返した
【ミーナ】
「そっか、じゃあまたね~!」
そう言ってミーナは街の方へと歩いて行った
【氷歌】
「・・・・・・・・」
・・・本当に珍しい人だ
・・・鷹様と親しくするだけはあるわね
ミーナを見送りながら私も鷹様の後を追いかけた