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【64話】氷◾️私らしい私




◾️◾️氷歌視点◾️◾️

挿絵(By みてみん)



勢いよくドアを開け、ダイニングに入ると


「どうした?」


少し驚いたようにゼル様が声をあげた


【氷歌】

「っ鷹様はいらっしゃいませんか!?」


そんなゼル様に言葉を返しながら周囲を見渡した

でも、鷹様の姿は無い


【ゼル】

「・・・もう、出かけたよ?」


そんな私に少し戸惑いながら答えてくださった


【氷歌】

「っどちらに!?」


そんなゼル様に詰め寄るように声をあげた


【ゼル】

「・・・仕事だよ・・・聞いてなかった?この前の追加任務の」


【氷歌】

「っ!?あれって今日だったんですか!?」


予想外のゼル様の言葉に慌てて聞き返した


【ゼル】

「・・・そうだよ、でも、氷歌は今回休んで良いよ・・・問題が起きちゃったからね」


・・・なら、鷹様はお一人で行かれてしまったのだろうか?

・・・どうしよう


【ゼル】

「・・・今回の事・・・簡単に許せる事じゃないとは思うが・・・本当に悪かったね」


悩んでいるとゼル様が言葉をかけて来た


【ゼル】

「・・・鷹の上に立つ人間として鷹にはそれなりのバツを与えるつもりだ」


落ち着いた声で威厳を感じる言葉を告げた


【氷歌】

「っ違うんです!鷹様は悪くないんです!」


そんなゼル様に慌てて声をあげた


【氷歌】

「・・・悪いのは・・・鷹様を信じようとしなかった私です・・・鷹様は嘘なんて言ってなかったのに」


・・・鷹様を疑っていたから

・・・私は鷹様の言葉を証明する為の証拠を求めた


・・・逆を言えば


・・・証拠がなければ、いくら鷹様が真実を語ったとしても

・・・それを認めないと言う事


・・・信じるって言ったくせに

・・・最低だ


【ゼル】

「・・・良かった」


そんな私にゼル様が小さくつぶやいた


【ゼル】

「・・・氷歌まで鷹を信じてくれなかったらどうしようかと心配してたんだ」


そう言ってニコっと笑った

・・・と、言うことは


【氷歌】

「っ・・・ゼル様も鷹様の言葉を信じていらっしゃるんですか?」


少し驚きながらお尋ねした


【ゼル】

「ん?当たり前だよ」


当然と言わんばかり答えられた


・・・なら、ゼル様はヴィザールの住人である

・・・あの男の事もご存知なのだろうか?


訪ねてみようかと思ったが


【ゼル】

「だって、鷹は俺の息子だからね、そんな弱い人間じゃないよ」


私の予想とは違った考えて信じていらっしゃるようだ


・・・余計な事を尋ねなくて良かった

・・・もし、対立しているヴィザールの住人が絡んでいると知れば

・・・ゼル様でも怒ってしまうかも知れない


【ゼル】

「周囲からどれだけ批判されても、自分の好きな事を好きだと言える、本当にあの子は強い子だよね、息子だけど尊敬するよ」


そう言うゼル様は本当に嬉しそうだった

・・・でも、その言葉に少し疑問を感じた


【氷歌】

「・・・では・・・何故、周囲は鷹様を否定されているのですか?」


・・・この家で一番の権力を持ち

・・・皆から慕われているのはゼル様


【氷歌】

「・・・ゼル様が鷹様の言葉を正しいと告げれば・・・皆、その言葉を信じ、鷹様が避難される事も無いのではないでしょうか?」


・・・心から鷹様の言葉を信じる事はないかも知れない

・・・でも、少なくとも今の状況よりは良くなるはずだと思った


【ゼル】

「・・・それだと意味がないから・・・かな?」


私の言葉に少し困ったように返された


【ゼル】

「俺が言葉を告げるのは簡単だけど、それだと、皆は鷹の言葉では無く、俺の言葉を信じる事になるだろ?・・・そんな事になったら鷹から怒られちゃうからね」


・・・ゼル様の言葉だから信じる

・・・そうなれば、鷹様の存在はゼル様の影に隠れる事になるのかもしれない

・・・それを鷹様自身も望まれていないと言う事か


【ゼル】

「・・・それにね・・・鷹を避難する声も間違っているとは思わないんだよ」


そう言葉を発したゼル様の声から優しさが消え


【氷歌】

「・・・・・・・・・」


緊張感の様な感覚が私を包んだ


【ゼル】

「・・・誰かの上に立つと言うことは・・・誰かよりも有意義な立場にいるという事だ・・・そんな人間が自欲の為だけに生きるなんて許されないんだよ」


静かに言葉を発するゼル様からはじわじわと這い回る様な威圧感を感じた


【ゼル】

「・・・誰かよりも裕福な暮らしをし恵まれる環境にいるのではあれば・・・自分の環境を支えてくれる人々に貢献すべき・・・ましてや、好き勝手に生き、自由を求めようなんて考えは愚の骨頂

・・・そんな高位な人間に付いて行きたいなどと言う者はいないだろう・・・いや、そんな人間は高位に立つべきじゃない」


【氷歌】

「・・・・・・・・」


・・・この言葉は

・・・鷹様を否定されている、と言う事なのだろうか?


【ゼル】

「でも、どんな立場の人間でも同じ人間には変わりないからね・・・恋心と言うのは自身でも操作出来なくなるのが人間なんだよ」


そう言ってニコッと笑った


・・・その瞬間、私を包んでいた緊張感が一気に消え去った気がした


【ゼル】

「どうしても譲れない想いがあるのなら、自分に与えられた課題をしっかりこなし、自分を支える人間に損失を負わせないよう勤めればいい、人に頼らず自分の力でね」


・・・だから、ゼル様は鷹様を擁護される事は無い、という事か

・・・自分の願いは自分で掴めと


【氷歌】

「・・・ですが、周囲の鷹様に対する言動は余りにも」


・・・今となれば、鷹様が怒りが理解できる

・・・自分の想いを人に侮辱され、避難され、笑われるのは

・・・誰だって嫌なもの

・・・自分もそうあった事を本当に恥ずかしく思う


【ゼル】

「・・・なら、止めてしまえばいいんだよ」


私の言葉にゼル様ははっきりと答えた


【ゼル】

「・・・人に避難され、侮辱されるのが嫌なら全て止めてしまえば良い・・・そうすれば、傷つく事も悩む事もない」


そう言ってゆっくりと目を閉じた


【ゼル】

「・・・ただ、人には必ず最期の時が来る・・・その時、諦めた事を心から悔やんでも・・・批判した人間は誰もその事を覚えてはないだろう・・・己の人生など他の者から見れば一縷の価値もないのだからな」


・・・批判を受けた人間は生涯のようにその事を覚えているが

・・・批判をした人間は批判をした事すら覚えてはいない

・・・あくび程度価値でしかないのかもしれない


【ゼル】

「・・・鷹の人を想う気持ちも間違ってはいないが・・・同時に現実を見ろと言う周囲の意見も間違ってない・・・この家の為にと助言してくれる周囲を避難してまで俺は鷹の肩を持つ気はないよ」


・・・ハッキリと言葉を告げるゼル様は一見とても冷たく突き放す言葉に感じる

・・・でも、一組織の部下であると同時に息子である鷹様の肩を持つとなれば

・・・それを良く思わない人々は多いだろう


・・・そして、そこからまた新しい批判が生まれるのかも知れない

・・・だからこそ、鷹様はゼル様に救いを求める事をされないし

・・・ゼル様自身もそれをされないのだろう


【ゼル】

「・・・本来なら俺は鷹が周囲から批判を受けてる話に関して意見を言う事もしないんだよ・・・だから、他の人に今話した事は言わないでね」


少し苦笑いでお願いされた


【氷歌】

「・・・ならば、何故私に話して下さったんですか?」


そんなゼル様の言葉に少し戸惑いながらお尋ねした


・・・簡単に考えれば鷹様の評価をあげる為とも思えるが

・・・ゼル様は鷹様の肩を持つ事はないと断言されているし

・・・周囲の意見も正しいと言われている


【ゼル】

「・・・前にも伝えたと思うけど・・・君は軍人でも使用人でもない・・・技能者と言う特別な存在だからだよ」


・・・そう言えば、そんな風に言って頂いた覚えもある

・・・でも

・・・どういう意味なのだろう?


【ゼル】

「・・・氷歌はどうしたい?」


少し悩んでいると、突然尋ねられた


【ゼル】

「・・・辞退したいのなら、それを咎める事も止める事もしないよ」


そう言ってニコッと笑った


【氷歌】

「・・・少しだけゼル様にお尋ねしてもよろしいでしょうか?」


そんなゼル様から視線をそらし、言葉を返した


【ゼル】

「・・・いいよ」


私の言葉に少し微笑みながら返して下さった


・・・本当なら人に聞くような事ではないのかも知れない

・・・でも自分では答えが出せそうに無かった


【氷歌】

「・・・どうして鷹様は・・・私を選んで下さったのでしょうか?」


・・・主に忠義を誓うのが技能者のあるべき形

・・・でも、私は未熟すぎる


【氷歌】

「・・・私は鷹様の技能者としてふさわしくないのではないでしょうか?」


・・・私には未だに答えが分からなかった

・・・この場所で自分がどうあるべきなのかが


【ゼル】

「・・・ふさわしいかどうかは俺にも分からないな・・・それは君たち2人の問題だからね」


そんな私の言葉に静かに返された


【ゼル】

「・・・でも、なんで君を選んだのかは鷹に尋ねた事があるよ」


それがどんな言葉なのかを考えたら、少しだけ不安な気持ちになった


【氷歌】

「・・・なんとおっしゃられていましたか?」


でも、聞かずにはいられなかった


【ゼル】

「・・・呆れるくらいの自信を感じたって言ってたよ」


その言葉はなんの重みも感じない言葉


【ゼル】

「・・・身長は一番小さいのに、一番大きく見えたって笑ってた」


でも、その言葉は


【氷歌】

「・・・・・・・・・っ」


今の私が無くしたモノを評価しているのだと感じた


【ゼル】

「・・・実はね・・・ミーナを選んだのも鷹なんだよ」


【氷歌】

「・・・え?」


流れるように話を進めたゼル様の言葉に少し戸惑った


【氷歌】

「・・・でも、鷹様からはゼル様がお選びになったと伺いましたが?」


確かそんな話をした覚えがある


【ゼル】

「推薦したのは俺だけどね、一番最初にミーナに目をつけたのは鷹なんだよ・・・天才じゃないけど面白い奴がいるってらそれで初めて俺はミーナの存在に気づいたんだ」


【氷歌】

「・・・・・・・・」


【ゼル】

「ミーナを選んだ事にも初めは批判があったんだよ・・・ちょっと無茶な事もするからね・・・ミーナは」


思い出すように少し苦笑いを浮かべている

・・・でも、その苦笑いの理由は簡単に予想できた


【ゼル】

「でも、ミーナは自分の立つべき場所を自分で作ったら他の者が与えた場所では無く、自分が目指した自分だけの場所をね、だからこそ、今ではミーナの代わりは誰にもできないと言えるよ」


・・・代わりは誰にもできない

・・・一見、無茶苦茶で馬鹿みたいな事だけど

・・・逆を言えば、それはその人にしかできない事なのかも知れない


・・・自分が目指した

・・・自分だけの場所


【氷歌】

「・・・・・・・・」


・・・私が目指した場所は

・・・性別に囚われず、私自身を評価してくれる場所


・・・そして、私は鷹様と言う目指した場所を見つけた


・・・鷹様が私を選んで下さったから私はここに立っていられる


・・・女を求めず、男も求めず、力を

・・・私自身を評価してくれる場所


・・・周囲に批判されても鷹様はそれをはっきりと否定して下さった


・・・私の価値を守ろうとしてくれた


【氷歌】

「・・・・・ゼル様」


・・・そんな鷹様が私になにを求めているのか


【氷歌】

「・・・・・鷹様が向かった場所を教えて下さい」


・・・今ならはっきりと分かる

いや、鷹様はゼル様と同じように初めからそれを私に告げていた

でも、私はそれに気づく事が出来なかった


【ゼル】

「・・・大丈夫?・・・ちょっと危ないかも知れないよ?」


【氷歌】

「・・・平気です・・・私、そんなに弱くないですから」


・・・私だけの場所で

・・・私しか立てない場所で

・・・私らしい私で居れば良いんだ


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