【46話】青◾️心が壊れた奇怪文
◾️◾️鷹視点◾️◾️
【ゼル】
「・・・・・・・・」
俺の報告を受け、オヤジは深刻そうな表情を見せた
【鷹】
「・・・俺は絶対おりる気ないから」
オヤジが言葉を告げる前に自分の意思を告げた
【ゼル】
「・・・・・・今の状況でその事を進めると言う事は・・・ヴィザールの基盤づくりの手助けをすると感じる者も出てくるだろう」
・・・ヴィザールと連立を組むと決めた国を綺麗にする
・・・必要の無くなった掃除をヴィザールの為にするようなもの
【ゼル】
「・・・その上、軍力を使い、資金も使うとなると示しが付かない・・・このまま進めても、指揮が下がり、通常ならありえないような惨事になる事も予想される」
・・・不満を持つ奴らが無意識に作り出す隙
・・・その小さな隙で、命を落とす事が起こるかも知れない
【ゼル】
「・・・お前が絶対にやり遂げたいと言う気持ちと同じ様に・・・俺はこの国の人達を無闇な危険に晒したくないんだよ」
【鷹】
「・・・分かってるよ・・・だから、俺が先手に立つ」
真剣に言葉を向けて来るオヤジに視線を返す様に答えた
【ゼル】
「・・・場に危険が無いと判断できるまで軍は突入させない・・・本当にお前一人でできると思うか?」
そんな俺に静かに訪ねてきた
【鷹】
「・・・できるよ・・・俺を誰だと思ってるの?」
笑いながらハッキリと言葉を返した
【ゼル】
「・・・・・・頼もしいね・・・助かるよ」
そう言って真剣な表情を崩し、いつもの笑顔になった
【鷹】
「ん~?オヤジも降りたくない感じなの?」
そんなオヤジの様子に少し首をかしげて尋ねた
【ゼル】
「・・・ん~、俺はヴィザールに譲りたくないって理由じゃないけどね・・・ヴィザールに引き継ぐとなってもお前達が手に入れてくれた情報は渡せないから」
・・・それは密告者から手に入れた情報の事を指しているのだろう
・・・ルルーカ内でも漏らせないのに、ヴィザールに渡すわけにはいかないか
・・・手引きとか、変な疑いを持たれても困るし
・・・今後にも繋る大事な情報源だしね
【ゼル】
「・・・内容の一部を写したものだ」
そう言って俺に一枚の紙を差し出した
【鷹】
「っ・・・・・・・・」
その奇怪な文面に思わず息を飲み思考が停止した
赤黒く汚れた紙には白や黄色、緑など様々な色で文字が書いてある
・・・書いてあるのに、その意味は理解できる言葉ではない
大きさ、形がぐちゃぐちゃな文字は
たスケを・・カミヲ・・・泣きワ叫ぶ・・
引ギちギる・・・カワイ想・・・
辛うじて読めるのはその程度の単語
後は言葉になっているのかなっていないのかすら分からない、漢字やひらがなが書いてある
・・・気味の悪い配色に
・・・意味の分らない文章
・・・それなのに不気味な印象だけは確実に脳裏に残る
【ゼル】
「・・・これを見ると・・・密告者に良心が無いとも言い切れない」
黙り込んだ俺に静かに言葉を告げた
【ゼル】
「・・・情報とは別に、こんな文がまるで日記の様に数十行に渡って残されていた・・・いくら考えても意味のある文だとは思えない」
そう言って、不気味な紙をしまう様にたたんだ
【ゼル】
「・・・これに意味があるとすれば・・・メッセージだろうな・・・この情報を俺たちに渡した人間の・・・心のね」
・・・心のメッセージ
・・・文面を考えると、正常な状態で無いのは分かる
・・・文を文として伝える気は無い
・・・だとすれば、伝えたいメッセージは
【ゼル】
「・・・抜け出すことのできない泥濘の中で・・・それでも浮き上がる良心が、その者の心を壊しているのかも知れないな」
・・・悪の道にいるのなら、心も全て悪に捧げ無くてはならない
・・・もしも、微かな良心を残せば
・・・逆にその良心が自分自身を罪の念で押しつぶし
・・・戻れない道の恐怖が狂気へと変わる
【ゼル】
「・・・この世に無くても良い世界を・・・お前が終わらせてやれ」
そう言って、願う様に静かに目を閉じた
【鷹】
「・・・わかった」
そんなオヤジに軽く頭を下げ、部屋を出た
【鷹】
「・・・・・・・・・・」
ただ、静かな廊下を歩く
【鷹】
「・・・・・・・・っ」
まぶたを閉じるとさっきの奇怪文が浮かび
・・・鳥肌がたち息苦しくなるほどの動悸が聞こえた
【鷹】
「・・・・・・・・っ」
・・・人知れず
・・・誰からも弔うこともされず
・・・今、この瞬間も抗う事のできない力にその身を切り裂かれ
・・・命を無くす人々がいるのだろう
【鷹】
「・・・・・・・・・っ」
・・・それは
・・・いったい、どんな光景なのだろう?
【鷹】
「・・・・・・・・・っ」
・・・ある日突然
・・・つまらないと嘆く日常を壊されるのはどんな気分なのだろうか?
・・・つまらないと嘆いた日常を求めるのはどんな気分なのだろうか?
・・・洗浄された真水のような世界から異臭を放つ汚染水のような世界に押し込められるのはどんな気分なのだろうか?
・・・今、その人はどんな状態でいるのだろう?
【鷹】
「・・・・・・・・っクソ」
目眩を感じる視界は目を開けてるのに黒く歪んでいる見えた
・・・もしかして
・・・俺はビビってんのか?
【鷹】
「・・・・・・・・っ」
・・・いや
・・・そんなはずない
・・・俺は
・・・アイツとは違う
【鷹】
「・・・・・・・・っ」
・・・でも
・・・アイツには
・・・俺は
・・・もう、必要ない
・・・なら
・・・なんの為に俺は
「・・・たかさま?」
【鷹】
「っ・・・・・・・」
聴き馴染みのある女の声に視界が戻った
「・・・大丈夫ですか?」
視線を向ける事のない俺に心配そうな声色で訪ねて来る
【鷹】
「・・・・・・なんで?」
いつもかぶっているフードを更に深くかぶった
「・・・呼吸が・・・乱れていらっしゃる様に感じましたので」
俺の問いに言いにくそうに返してきた
【鷹】
「・・・・・・なんか用?」
目を向ける事なく、廊下を歩き始めた
「・・・あの・・・えっと」
そんな俺の後を慌てた様に付いて来て
「・・・任務はどのようになったのでしょうか?」
言葉を選ぶように訪ねてきた
【鷹】
「・・・なにも変わらない・・・調査は続行だ」
「・・・良かった」
俺の言葉に安心したように呟く声が聞こえた
【鷹】
「・・・なにが良かったんだ?」
少し意外な言葉に軽く視線を向けて尋ねた
「・・・中止になったらどうしようかと思っていたので・・・ゼル様のお許しが出て安心しました」
そう言ってニコッと笑った
【鷹】
「・・・・・・付いて来るの?」
「当然です!私は鷹様の技能者になる人間ですから!」
俺の問いにハッキリと答えてきた
【鷹】
「・・・戦闘は2人でやらなきゃいけなくなるけど・・・いいの?」
「全然問題ありません!むしろ、不満を持って付いてくるような人間は必要ありません!」
自信を押し出すように答え
「2人で完璧に終わらせてやりましょう!」
自らにも言い聞かせるように強く宣言した
【鷹】
「・・・・・・・・」
そんな言葉に少し戸惑ったが
【鷹】
「・・・そうだね・・・完璧に終わらせてやろう」
自然と笑顔の言葉が出て
【氷歌】
「はい!」
そんな俺に氷歌は本当に嬉しそうに笑顔を返してくれた




