【44話】氷◾️哀れみにしか感じない言葉
◾️◾️氷歌視点◾️◾️
足早に進む鷹様の背を追いかける様に山中をしばらく進むと
昨日、訪れた街が木々の隙間から見えた
・・・が、昨日とは街の雰囲気が違った
【鷹】
「・・・・・・・・・・・」
その光景に鷹様は複雑な表情で目を閉じた
【氷歌】
「・・・なんで」
私は・・・その状況が把握出来なかった
・・・昨日と同じような街並みなのに
・・・昨日とは比べられないほどに街は活気づき
・・・まるでお祭りの様に賑わっていた
【氷歌】
「っ・・・・・・・・・」
・・・その中心に見慣れた顔の人物を見つけた
「ちゃんと並んで下さいね~!!」
・・・振りまくような満面の笑顔で声をあげる男
「はい!どうぞ~!!」
・・・私たちがやろうとしていた事をしている男
「ありがとうございます」
・・・手渡した食事の代わりに心のこもったお礼を受け取る男は
【火の技能者】
「どういたしまして~!!」
・・・真っ赤な髪をした火族
・・・そして、竜輝と言う名の男の姿もあった
【氷歌】
「・・・どうして・・・あいつらがここに?」
・・・その状況がうまく飲み込めなかった
・・・火族が中心となって同軍であろう大勢の軍人と共に
・・・その街の住人に炊き出しのような事を行っている
【鷹】
「・・・支援だろ」
怒りも焦りもなにも感じない声で返して来られた
・・・状況を見れば、それしか考えられない
【氷歌】
「・・・でも、それはっ」
・・・それは
・・・私たちがしようとして事だ
【鷹】
「・・・・・・お菓子、買わなくて良かったな」
静かにつぶやいた鷹様は小さく笑っていた
・・・でも
【鷹】
「・・・これじゃ・・・俺たちの支援は必要なさそうだしね」
・・・その言葉に言葉を返せなかった
・・・そんな鷹様は少し寂しそうにも見えたから
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
・・・街を包み込むような美味しそうな香りに目を向けると
・・・街の住人たちの感謝と笑顔の中心に立つ火族と
・・・ただ、黙々と作業をこなしている男
・・・慌ただしく動き、忙しく作業をこなしている二人の姿に
【氷歌】
「っ・・・・・・・・」
・・・言いようのない悔しさがこみ上げて来た
・・・初めて鷹様と意見を出し合い、それに向かって準備をしていたのに
・・・そんな私たちの行動は全て無駄になり、無意味なものになり
【鷹】
「・・・これじゃ、また、文句言われちゃいそうだね~・・・だっせーな、俺たち・・・馬鹿みたいだ」
・・・失敗だと批判を受けるのだろうか?
・・・私たちだって同じことをしようとしていたのに?
【ミーナ】
「・・・うわ~・・・これは、まずいわよ~」
遅れて来たミーナが気まずそうにつぶやいた
【ミーナ】
「・・・よりにもよって、あのヴィザールに先越されちゃうなんて・・・この膨大な支援を見ると、還元を大方予想してるって感じだし」
【鷹】
「・・・・・・・・」
そんなミーナの言葉に
鷹様がゆっくりとヴィザール軍に向かって歩き始めた
【ミーナ】
「ちょっ!ちょっと!まずいって!」
ミーナの静止する言葉に反応することなく、鷹様は街の中心へと向かっている
【氷歌】
「・・・ミーナはここにいて」
そんなミーナに言葉をかけ、鷹様の後を追った
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
・・・私は技能者の服を着ているから見た目ではルルーカの人間だとは分らないだろう
・・・でも、私の前を歩く鷹様はルルーカ軍の上着を羽織っていらっしゃる
・・・この周囲から送られる刺さるような視線は
・・・敵対するルルーカの人間に向けられた視線だと嫌でも感じた
そんな、息が詰まるような視線の中
鷹様は一人の男の前で足を止め
【鷹】
「・・・偽善者が偽善を振りまいて、さぞかし気持ちいいでしょ?」
からかうような言葉をかけた
【竜輝】
「・・・・・・・・・」
そんな鷹様の言葉に男は一瞬動きを止めたが
すぐに作業を続けた
【鷹】
「・・・人の仕事横取りするのはどんな気分?・・・勝ったって感じ?」
【竜輝】
「・・・・・・そんな事、思ってない」
更に言葉を向けた鷹様に男が初めて言葉を返した
【竜輝】
「・・・俺たちは俺たちにできる事をしているだけだ・・・勝ち負けなんて考えてない」
視線を向ける事なく答える男からは何の感情も感じ取る事が出来なかった
【鷹】
「・・・なにそれ?・・・俺の事は眼中に無いって感じ?」
そんな男の言葉に少し苛立った様子で言葉を返した鷹様に
【竜輝】
「・・・そうだ」
静かに、でも、ハッキリと男は言葉を返し
【竜輝】
「・・・俺はお前と勝負をしているつもりも、するつもりもない」
鷹様を拒絶する様に断言した
【鷹】
「・・・・・・っ」
そんな男の言葉に・・・鷹様の心が乱れたのを感じた
・・・それがどんな感情の乱れなのかは分らない
・・・でも、鷹様から発せられる魔力が確実に乱れ始めていた
【火の技能者】
「・・・こんにちわ~」
そんな鷹様と男の間に割って入るように苦笑いの火族が姿を見せた
【火の技能者】
「奇遇だね~、こんな遠い街で会うなんてさ~」
【鷹】
「・・・白々しい事言ってんなよ・・・うざいんだよ」
ヘラヘラとした火族の言葉に苛立った様に言葉を返された
そして・・・更に鷹様の魔力が乱れたのを感じた
【火の技能者】
「まぁまぁ!俺たちは住人の支援が目的なだけで~君たちの仕事の邪魔をするつもりはないんだって!」
【鷹】
「・・・はぁ?・・・お前らの本当の目的は支援じゃないだろ?」
【火の技能者】
「いやいや!一番の目的は支援だから!」
苦笑いで鷹様の言葉を否定し
【火の技能者】
「・・・でも、支援だけじゃ任務成功にはならなかったけどね?」
自信を感じるような言葉を発し、小さく笑った
・・・ならなかった、と言う事は
・・・今はもう成功していると言う事だろう
【鷹】
「・・・完全に黒字になる事を確認してから善意を振り・・・国ごと飲み込んじゃおうってか?」
【火の技能者】
「・・・嫌な言い方するね~・・・でも、それはそっちだって求めてた事だろ?」
からかうような鷹様の言葉に静かに言葉を返し
【火の技能者】
「・・・後、10日もしたらここはヴィザールと連立を組むし・・・そっちの仕事も俺たちが請け負おうか?」
・・・見下すような言葉で返して来た
・・・その笑顔に
・・・その言葉に
【氷歌】
「っ・・・・」
・・・憎しみと苛立ちを感じずにはいられなかった
【鷹】
「・・・ふざけんなよ・・・誰がお前らに」
【火の技能者】
「俺たちは全然構わないよ~?ねぇ、竜輝?」
ニコッと笑って男に声をかけているが、男はなにも答えなかった
【鷹】
「・・・お前は、本当にムカつく奴だね・・・氷歌を追いかけてるってのも・・・自分たちの行動を悟られない為の作戦だったわけか?」
そんな火族に憎しみを込める様に睨みつけている
【火の技能者】
「・・・・・・いや・・・それは本当」
その言葉で思い出したように気まずそうに視線を下げ
【火の技能者】
「・・・でもさ、俺はちゃんと仕事でここに用事があったって言ったでしょ?」
・・・ニコッと笑った
【鷹】
「・・・うぜぇ」
吐き捨てる様に言葉をつぶやき、鷹様は火族に背を向け
【鷹】
「・・・俺に託された仕事は俺がやり遂げる」
横目で男に視線を向けた
【鷹】
「・・・お前らにだけは絶対に譲らない」
視線を向ける事もしない男に断言する様に言葉を告げ、鷹様はその場から歩き始めた
そんな、鷹様の後を追って歩き始めた
「・・・ごめん」
小さく声が聞こえた気がした
それが誰の声なのか分からなかったけど
その言葉は
・・・今の私には哀れみにしか感じなかった
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
ミーナが待つ場所へと向かう鷹様の背中になにか言葉をかけようかとも考えたが
・・・なんと言葉をかけたら良いのか分らない
・・・いや、言葉をかける勇気が無かったのかも知れない
・・・男たちと話してから乱れ始めた鷹様の魔力が
・・・戸惑うような威圧感を私に与えていた
【ミーナ】
「あ・・・・・・」
近づいて来た私達を視界に捉えたミーナが小さく言葉を発した
【ミーナ】
「・・・・・・・・」
が、空気を感じ取った様に視線をそらし、黙り込んだ
そんなミーナの側には見慣れた男の姿
【幹部】
「・・・お疲れ様でした」
感情を感じない声で言葉をかけて来た
【幹部】
「・・・今回の任務は現時点を持って終了とさせていただきます」
【鷹】
「・・・どういう意味だ?」
静かに言葉を告げた男に苛立った様子で鷹様が言葉を返した
【幹部】
「・・・言葉通り、この国に関しての我が国における支援、及び調査を全て終了すると言う事です」
・・・支援を中止するのは分かる
・・・ヴィザールが大規模で支援を行っているし
・・・ルルーカが手を出す必要もないだろう
・・・でも、どうして調査も中止してしまうのだろう?
・・・分らない
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
・・・でも、重苦しいこの空気に尋ねる事が出来なかった
【鷹】「・・・ダメだ、調査は続行・・・オヤジには俺から話をつける」
そんな私とは違い、鷹様は状況を理解していらっしゃるようだ
【幹部】
「・・・争いごとに無意味に参加する必要はありません」
【鷹】
「・・・それは俺たちの国に対してだろ?この国には必要だ」
【幹部】
「・・・我が国に何の利益もなく、我が軍の身を危険にさらすおつもりですか?・・・自己満足も行き過ぎると暴君となりますよ」
頑なな鷹様に不信感を隠す事なく睨みつけている
【鷹】
「・・・俺が道を作る、お前らは後片付けだけすればいいだよ」
【幹部】
「・・・ですが」
【鷹】
「黙れっ!!」
幹部の言葉を押し込める様に鷹様が怒鳴り声をあげた
【鷹】
「・・・これは俺の仕事だ・・・俺が終わらせる」
憎しみを込める様に低い声で小さく告げ、鷹様は森の中へと歩き始めた
【幹部】
「・・・・・・・・・」
そんな鷹様に小さくため息をつき、後を追うように森の中へと入って行った
森の中へと消えて行く二人の後ろ姿に
・・・肩に乗っていた重たいモノが少し無くなった気がした
【ミーナ】
「・・・息苦しかったわね・・・窒息しちゃうかと思った」
ミーナも私と同じ心境だったのか、重たいものから開放された様に小さくなげいた
【氷歌】
「・・・そうね」
そんなミーナに小さく言葉を返し、遅れながら二人の後を追って歩き始めた




