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【3話】◾️僕の憧れ




【鷹】

「・・・はぁ・・・はぁ」


ずっと走って乱れた息を整えた

そして、真っ直ぐに前を見て歩き出し

森の中にある少しだけひらけた場所

昼に向かう太陽に照らされた綺麗な芝生が柔らかに揺れる場所に足を踏み入れる


【鷹】

「・・・・・・・・・・」


息を吸うと森の中の優しい空気が体に入ってくる


・・・すごく落ち着く

・・・ここにいるだけでなんだかとっても楽しい気持ちになる


【鷹】

「・・・・・・・・・・」


・・・自然と笑顔になれるんだ


「あ!たか~!」


そんな僕の背中に明るい女の子の声が聞こえた


【鷹】

「ルナ!おはよう!」


僕は笑顔で振り向き、元気に返事を返した


【ルナ】

「おはよ~!」


そんな僕に笑顔で言葉を返してくれる僕と同じ歳ぐらいの綺麗な白髪の小さい女の子


【ルナ】

「・・・あのね」


が、すぐにルナの表情が曇った


【鷹】

「・・・どうしたの?」


そんなルナに少し不安になりつつ尋ねた


【ルナ】

「・・・リボンが・・・飛んで行っちゃった」


そう言って上を見上げたルナの視線を辿ると高い木の枝に引っかかったピンクのリボンが見えた


・・・あのリボンは僕らがルナにプレゼントしたものだ


【ルナ】

「・・・どうしよう」


ルナは落ち込んだように視線を下げた


【鷹】

「・・・りゅうちゃんは?」


【ルナ】

「・・・まだ、来てないみたい」


・・・りゅうちゃんがいてくれたらリボンなんてすぐにとってくれるだろうけど

・・・今、りゅうちゃんはここにいない

・・・なら


【鷹】

「・・・僕がとってくるよ!」


・・・僕がやるしかない


【ルナ】

「え?・・・でも」


【鷹】

「大丈夫だよ!僕だって魔力持ってるんだから!」


心配そうなルナの言葉をかき消すように笑顔で言葉を返した

そして、リボンが引っかかった木に近づき見上げた


【鷹】

「・・・・・・・・」


その木は・・・思ったより高かった


【ルナ】

「・・・ほんとに大丈夫?」


そんな僕に近づき心配そうに訪ねてきた


【鷹】

「・・・平気だよ・・・こんな木ぐらい簡単に登れるよ」


ルナに言葉を返し

不安を感じながらも木に手をかけた


【鷹】

「・・・・・・・・」


僕より少し高い位置にある太い枝を掴み

地面を蹴って跳ね上がった


【ルナ】

「頑張って~!」


上手く枝に乗ることが出来た僕をルナははしゃいだように応援してくれている


【鷹】

「・・・・・・・・」


更に高く登る為、僕はまた高い位置にある枝を掴んだ

そして、足をかけゆっくりと上の枝に乗る


【鷹】

「っ・・・・・・?」


が、枝の上に得体の知れない黒くてもじゃもじゃした物体がいた


【鷹】

「っうわーーーーー!!」


僕は気持ちの悪い物体から仰け反るように叫んだ


【ルナ】

「危ないっ!!」


ルナの慌てた声と共に僕は木から地面へと落ちてしまった


【ルナ】

「大丈夫!?」


そんな僕にルナが心配そうに駆け寄って来た


【鷹】

「・・・・平気・・・全然痛くない」


落ちた事は全然痛くないし本当に平気だった

・・・でも


【鷹】

「・・・・・・・」


・・・情けない姿を見られた事が悔しかった


「情けないな~!」


そんな僕を笑う声と共に男の子が姿を見せた

僕らと同じくらいの歳の赤黒い長い髪を後ろに束ねた男の子


「・・・・・・・・・」


男の子は僕が登ろうとしていた木を軽く見上げ

軽々と木を登り始めた

そして、僕が取ろうとしていた物を簡単に手に掴み


「はい!」


木から飛び降り、ルナへと差し出した

それは風で飛ばされた淡いピンクのリボン


【ルナ】

「ありがとう!竜輝りゅき!」


その手渡されたリボンを受け取り、ルナは髪に巻いた


【鷹】

「・・・僕が取ろうと思ったのに」


その光景が悔しくて小さく嘆いた


【竜輝】

「落ちたくせに~」


【鷹】

「違うよ!あれは変な虫がいたからビックリしただけ!」


からかうように笑うりゅうちゃんに慌てて言い訳をした


【竜輝】

「ん~・・・それってこれの事?」


そう言って手に持っていた枝を僕の顔へと向けた

その枝の先には、さっきの黒くてもじゃもじゃした物体が


【鷹】

「うわーーーーー!!」


慌てて叫び、ルナの後ろに隠れた


【ルナ】

「大丈夫だよ~触らなかった痛くないし」


そんな僕にルナは優しく声をかけてくれた


【竜輝】

「こんなのにビビってるからダメなんだよ~」


そう言ってりゅうちゃんは面白そうに笑った


【鷹】

「・・・・・・・・」


・・・僕は笑われる事が嫌いだった

・・・凄く悔しくて自分を情けなく思うから

・・・でも


【鷹】

「・・・りゅうちゃんはやっぱり凄いね!」


・・・りゅうちゃんになら笑われても平気だった

・・・だって、りゅうちゃんは

・・・僕の憧れだったから


明るくて、強くて、頭がよくて

僕にないものを沢山持ってるから


だから


りゅうちゃんなら負けてもいいと思った

りゅうちゃんなら大人になってもきっと強いから

りゅうちゃんならずっと僕らを守ってくれると思ったから


僕はずっと二人の側に居られたら

それだけで良いと思ったんだ


・・・それなのに


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