【37話】青◾️堂々とした行動
◾️◾️鷹視点◾️◾️
中庭に出ると光り輝く月が俺の居場所を示すように照らしてくる
【鷹】
「・・・あいつらって・・・本当気持ち悪いよね」
その月の先に広がる空へと笑いながら言葉をかけた
【鷹】
「・・・すっかり・・・一心同体って感じでさ」
・・・誰にも届かない言葉
【鷹】
「・・・・・・でも、凄く・・・楽しそうだよ」
・・・空に言葉を向けると元気が貰える気がし
【鷹】
「・・・ほんと・・・羨ましいよね?」
・・・それだけで心が満たされ
・・・満足できた
【鷹】
「・・・でも・・・あいつは・・・まだ」
・・・笑わないんだ
【鷹】
「・・・・・・・・・」
街の方からこちらへと向かって来る、荒れた魔力を感じ、言葉を止め、視線を向けた
そこに姿を見せたのは、氷の技能者
【鷹】
「どこ行ってたんだ~?」
その様子に少し疑問を感じ、声をかけた
見た目は普通だが
発せられる魔力は興奮したように荒れてい
【氷の技能者】
「・・・鷹様」
俺の声で存在に気づいたようで、慌てた様に近づいてきた
【氷の技能者】
「すみません、ちょっと野暮用を・・・少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
そして早々に質問を初めた
【鷹】
「ん?なに?」
【氷の技能者】
「・・・鷹様に付いていた秘書に関してなのですが」
ゆっくりと話し始め
【氷の技能者】
「・・・クビにしたのですが、よろしいでしょうか?」
突拍子もない事後報告をされた
【鷹】
「・・・どういう事だ?」
とりあえず、苦笑いで聞き返した
【氷の技能者】
「以前から思っていたのですが、あの者は鷹様の秘書として相応しくないと判断しました」
【鷹】
「・・・それで俺に断りもなく勝手にクビにしたの?」
クビにした事はどうでもいいが、俺に断りなく勝手にした事に少し不満を感じた
【氷の技能者】
「はい、好きなように堂々とした行動をと言われましたので」
俺の問いに笑顔で返してきた
【鷹】
「・・・・・・・・」
・・・確かに俺はそう言ったな
・・・なら、こいつは俺の命令通りに行動したという事だろうか?
【鷹】
「・・・どこが相当しないと判断したんだ?」
少し悩みながら、とりあえず理由を尋ねてみる事にした
【氷の技能者】
「・・・ありすぎて返答に困るのですが」
そんな俺の言葉に少し考え
【氷の技能者】
「頭は空っぽなくせに乳とケツにだけ蓄えたメス豚が!鷹様の周りをウロチョロしてるのを見ると鳥肌か立つんです!」
本当に鳥肌か立っているかのように力強く叫び
【氷の技能者】
「なので、私の判断でクビにしました!」
満足げにニコッと笑った
【鷹】
「・・・なにそれ」
そんな技能者の姿に思わず笑ってしまった
【氷の技能者】
「ああいう女が近くにいると鷹様の品格を損ないますから」
自信があふれるような笑顔で断言するように声をあげた
【鷹】
「・・・・・・・・」
・・・なんか、コイツ
・・・ちょっと面白いかもしれない
【鷹】
「・・・まぁ、俺もそう思うわ」
技能者の言葉に笑いながら納得した
・・・クビに相当する理由がないからクビにしなかったけど
・・・ぶっちゃっけ、俺も苦手だったしね
・・・正直、助かったかな?
【鷹】
「・・・でもさ、アイツが担当してたスケジュール管理とかは誰がすんの?」
【氷の技能者】
「もちろん、私が担当させていただきます!」
俺の言葉に嬉しそうに返事をしてきた
まぁ、こいつの判断でクビにしたんだし当然か
【鷹】
「了解、じゃ、今日の報告書を書くぞ〜」
そう言葉を返し、近くのベンチに座り用意しておいた報告書を手元に寄せた
【氷の技能者】
「・・・報告書ですか?」
【鷹】
「今日行った街についての報告書」
報告書に目を向け首をかしげた技能者に簡単に返した
【氷の技能者】
「・・・ですが、我々の仕事は行方不明者に関する事でしたよね?・・・調査などは行っていないのでなにを書けば良いのでしょうか?」
少し困ったように悩んでいるようだ
【鷹】
「ん~?俺にはそれ以前の問題を感じたけど?お前はなにも感じなかったのか?」
そんな技能者に呆れながら返した
【鷹】
「・・・失踪者に関しても、もちろん重要課題ではある、だが、あの街そのものも大きな課題だ」
街の事を思い出し少し不愉快な気持ちになった
【鷹】
「・・・財政破綻で治安崩壊し貧民街と化してるのかと思ったら・・・一角には割高で高級なホテル・・・住人の格差が激しすぎる」
【氷の技能者】
「・・・確かに・・・少し疑問を感じました」
俺の言葉に少し視線を下げながら返してきた
【氷の技能者】
「・・・路上で生活をしているであろう人々が多く見られる割に・・・街の外観は特に問題を感じず・・・ホテルでは最新の設備が整っていて、まるで別の街のようにも感じました」
・・・適切な感想だな
・・・ぱっと見は普通の街だったし
【鷹】
「・・・なんとか貧民街を解体し、活発化させようとしたが・・・失業者が多く根本的な解決には至ってないって感じ・・・政治が悪いと言ってしまえばそれまでだが・・・その街から逃げる人々の足が止まらないと自治体もどうしようもないな」
【氷の技能者】
「・・・企業者などの意識を動かし、住人雇用の変革が必要と言う事ですね」
【鷹】
「・・・だが、企業者からしたら大した利益も上げられない街に執着するより、ある程度開拓の進んだ街で事業をするのが正解だ」
・・・消費者がいなければ事業は成立しないし
事業がなければ雇用元がない
雇用元がなければ働けない
働けなければ消費する金は無い
・・・悪循環だな
【氷の技能者】
「・・・では、我々ができる事は無いと言うことでしょうか?」
・・・企業者を促し事業させても成功の見込みは無い
・・・金銭援助をしても根本的な解決に至らず損失のリスクが高い
・・・それどころか、横領や富裕層を満たすだけの金になりかねないな
・・・結局、路上生活者には届かない可能性が高いか
【鷹】
「・・・まぁ、根本的に改善させるにはかなりの時間がかかるだろうな・・・今、俺たちが出来る事は路上生活者への直接的な支援ぐらいかな~」
【氷の技能者】
「・・・直接的な支援ですか?」
【鷹】
「そうそう、直接、食事を届けてやるの」
【氷の技能者】
「・・・なるほど・・・でも、食事を援助するより金銭的な援助の方が効率がいいのでは?」
俺の言葉に少し悩みながら首をかしげた
・・・まぁ、直接金銭をもらった方が自由にできるし
嬉しい事は間違いないだろうな
・・・でも
【鷹】
「金をバラ撒いても、その都市の規定で税収に当てられるかも知れないだろ、つーか、流石にそれはその都市のプライドが許さないと思うね」
いくら対処に困っていると言っても
自国住人に金銭を施されては威厳もなくなる
【鷹】
「同じ値打ちでも、物と金では受け取る側の気分が全然違うんだよ」
同価値ではあるが、金が見えない分
受け取る側からしたら価値が違って見えるものだ
【氷の技能者】
「・・・確かに、1000円分の食事をおごって貰うのと、直接1000円のお札を貰うのとでは遠慮具合も違ってきますね」
俺の言葉を自分なりの説明を付け、理解し、納得しているようだ
・・・技能者と言う種族は属性に応じて性格が現れると聞いた事があるが
・・・それなりに間違っていないようだ
・・・氷の技能者は物事を自分の納得できる形に整え、導き出したその答えに向かって行動する
・・・逆に火の技能者は、頭で考えるよりも感情で動く、動いた先にあるものが答えだ、となる
・・・行動を起こす前に頭で考える氷の技能者と
・・・頭で考えるよりも行動を起こす火の技能者
・・・どちらも長所と言えるし、間違いではない
・・・が、だからこそ、その性格すらも対立の温床となっているんだろうな
・・・と言っても、氷の技能者から戦争を始める事はないから
・・・やっぱり、一番の問題は火の技能者だろうな




