【35話】氷◾️付きまとう男
◾️◾️氷歌視点◾️◾️
真っ暗な森の中を歩く
ただ真っ直ぐに
あの場所に向かって
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
暗い森の中に差し込む月明かりを一心に集めたような場所
その場所に
・・・案の定、そいつはいた
【火の技能者】
「っ・・・ひょう」
言葉を塞ぐように氷の槍を火族に飛ばした
【火の技能者】
「っ・・・いきなり何すんの?」
私の攻撃を避け
困惑したように私を睨みつけている
【氷歌】
「・・・黙りなさい」
周囲を氷の魔力で一気に包み、怒りを抑えることなく睨みつけた
【氷歌】
「・・・アンタだったのね?・・・私たちの行動をうちの奴に告口したの」
ゆっくり火族へと歩き出した
【火の技能者】
「・・・なんのこと?・・・俺はなにも」
距離を縮める私から後ずさるように距離を離している
【氷歌】
「・・・鷹様に付いてる能無し秘書に私と鷹様の行動を流したでしょ?」
【火の技能者】
「っえ?・・・あの子、鷹の秘書だったの?」
あたかも今知ったかの様に言葉を返してきた
【氷歌】
「・・・白々しいにも程があるわね?」
・・・バカバカしい態度に呆れて笑いが出た
【氷歌】
「・・・どこまで人を馬鹿にするのかしら!?」
怒鳴りつけるように言葉を返し、地面に手を向け魔力を込めた
その魔力に答えるように火族の周囲が氷盤へと彩られる
【火の技能者】
「いや!ほんとに!俺は知らなかったんだって!」
声を張り上げる火族に向けて巨大な氷柱を氷盤から空へと伸ばしていく
【火の技能者】
「っどうしても!二人がホテルに入った理由が知りたかったから!鷹に会いに行ったけど通してくれなくて!」
必死に氷柱を避けながら言葉を投げてくる
【火の技能者】
「そしたら、その子が「なにか御用ですか?」って聞くから!俺は「鷹と氷歌ちゃんがホテルに入ったけど、仕事なんですか?」って聞いただけだよ!!」
慌てた様に馬鹿げた事を叫ぶ
・・・下らない
・・・本当に下らないわ
・・・でも、一番私を不愉快にさせるのは
・・・私に執着する気持ち悪さ
【氷歌】
「・・・やっぱり、アンタは火の技能者ね」
気持ちの悪い火族に手を向けた
【氷歌】
「・・・腐った火族そのものだわ!」
怒りを押し出すように吹雪の渦を火族へと向けた
【火の技能者】
「っ・・・・・・・グッ!!」
周囲の空気すら凍り付かせる冷気を纏った吹雪の渦を自身の周囲を炎の球体で囲い必死で防いでいる
【氷歌】
「さぞかし愉快なんでしょうね!?私を騙して貶める事が!!」
怒鳴りつけ、火の球体を押しつぶすように氷の渦に更に魔力を込めた
【火の技能者】
「っ俺のせいで氷歌ちゃんに迷惑かけたなら謝る!!」
姿の隠すように張った火の球体の中から切羽詰る声が聞こえた
【火の技能者】
「でも、俺はそんなつもり無かった!!騙すつもりも、貶めるつもりもないんだよ!!」
【氷歌】
「よく言うわね!?人のことつけ回してるくせに!!」
押さえつける怒りが自分の体を覆うのが分かった
【氷歌】
「氷の私が鷹様の技能者になるのがそんなに許せない!?なんでそんなに邪魔したいのよ!?」
狂いそうな憎しみが言葉が震わせた
【火の技能者】
「っ・・・・・・・・・邪魔はしたいかもね」
耐えるように絞り出した言葉
【火の技能者】
「・・・今の君じゃ、鷹の技能者にはなれないよ・・・絶対にっ」
まるで宣言するように言葉
その言葉で自分の中の怒りと憎しみを抑える事を止めた
【氷歌】
「なめるなっ!雑魚がーーっ!!」
私の怒鳴り声に反応するように氷盤に魔力の波動が走り
鼓膜を刺す耳鳴りのような音が響た
【火の技能者】
「っ!?」
その瞬間、火族を守っていた火の球体が消滅し
【火の技能者】
「グっ!!があぁぁぁーーーっ!!??」
私の腕から放たれ続けていた氷の渦が食いつくように火族の体を引き裂き
怒りを押し込めるように、その体を氷盤へと押しつぶした
【火の技能者】
「・・・ア”ッ・・・グッ!!!」
空を眺めるように仰向けで地面に転がる火族は氷の渦に体中を引き裂かれ、粘りを感じるような真っ赤な液体を口から吐き出した
【氷歌】
「・・・私が氷だから見くびってたでしょ?・・・氷が火に勝てるはずないって」
そんな火族にゆっくりと近づいた
【氷歌】
「・・・でも、違うのよ?・・・氷には温度と言う強みもある・・・マイナスとプラスを移行させて無にできるのよ」
脈を打つように短い息で呼吸を続ける火族の側で見下ろすように足を止めた
【氷歌】
「・・・自由気ままに暮らしてきた火族のアンタが・・・氷の最上軍事指導を受けてきた私に勝てる訳ないじゃない」
そして、虚ろな視線を向けてくる火族の顔を隠すように手を向けた
【氷歌】
「・・・私はアンタら火族を殺す為に育てられたの」
・・・人が傷つけられる事を愉快そうに笑い見下す
【氷歌】
「・・・火族に生きる資格なんてない」
・・・こいつらが生きているから苦しむ人がいる
【氷歌】
「・・・私が消してあげる」
・・・火族に情けは必要ない
・・・そうだよね?
・・・お兄ちゃん
【火の技能者】
「・・・で・・・きないよっ・・・君にっ・・・俺は殺せない・・・だって・・・君の・・・魔法は・・・」
「・・・下がれ」
静かな声と共に寒気のする闇の魔力を感じた
【氷歌】
「・・・・・・・・」
ゆっくりと目を向けると
真っ直ぐに私を視界に捉えた竜輝という名の赤黒い髪の男が立っていた
【竜輝】
「・・・下がらないなら・・・下がらせる」
怒りを込めるように私を睨みつけた
・・・さすがに今この人とやり合うのはまずいかも知れない
・・・契約者を持たない私では魔力が違いすぎる
【氷歌】
「・・・いいわ・・・こんな奴殺す価値もないし」
火族に向けていた手を下げ、男に視線を向けたまま警戒しつつ男たちから距離をとった
【竜輝】
「・・・火焔が事を伝えなくとも問題にはなったはずだ」
そんな私に視線を下げながら言葉を向けてきた
【竜輝】
「・・・人に責められるのが不満ならアイツを主に持つのは止めた方がいい」
・・・なにこの人・・・偉そうな人
【氷歌】
「・・・人に説教する前に自分の技能者をちゃんと指導しなさいよ・・・今度、私に付きまとったらストーカーで訴えるから」
【竜輝】
「・・・・・・・・」
私の言葉に返す事なく黙っている
が、攻撃してくる気配もない
【氷歌】
「・・・二度と私に近づかないで」
吐き捨てるように火族に言葉を告げ足早にその場を離れた




