【11話】氷◾️2人きりの食事
鷹様の姿を探しながらリビングへと入ると綺麗な顔立ちの青黒い髪の男性が立っていた
・・・鷹様のお父上、ゼル様だ
【ゼル】
「お疲れ様」
私に優しげな笑顔で声をかけてくださる
・・・しっかりとした身なりと立ち振る舞い、溢れるようなオーラはその立場の高さを感じられた
【氷歌】
「ゼル様、お疲れ様です!」
そのお姿に慌てて頭を下げた
【ゼル】
「氷歌も食事をするといい、鷹のお供は何かと疲れるだろ?」
そう言うゼル様の視線の先には
鷹様が席につき食事をされていた
氷歌「・・・でも、よろしいのでしょうか?・・・私の様な者が鷹様と食事を共にして」
遠慮がちにゼル様に確認した
お使えする立場の私が食事を共にするなど
・・・恐れ多く感じた
【ゼル】
「君は軍人でも使用人でもない、技能者だ
そこまで遠慮する事はないよ、むしろ、技能者と主は可能な限り時間を共有すべきだ」
私の問いに優しげな笑顔で答えてくださった
・・・なんとも落ち着きに満ちた優しいお言葉
・・・さすが鷹様のお父様だわ
【鷹】
「まぁーまだ契約するとは決まってないけどねー」
そんな私たちの会話にからかうように鷹様が言葉を投げて来た
【ゼル】
「時間をかけて決める事は悪い事じゃない、お互いの為にもね」
鷹様に言葉を返しながら席に座るよう誘導するように椅子を引いてくださった
それに素直に随い、鷹様の向かいの席に座る
私の目の前のテーブルにはなんとも美味しそうな料理が並べられている
・・・栄養のバランスが良さそうな料理だ
・・・お肉が少ないのが残念
【ゼル】
「初日の勤務はどうだった?鷹に振り回されて疲れたかな?」
【氷歌】
「いえ!そんな事はないです!まだまだ慣れない事ばかりで鷹様にご負担をかけてしまっているのは私です!」
ゼル様の言葉を慌てて否定し、言葉を返した
【ゼル】
「良かった、初日で嫌気が差したらどうしようかと心配してたんだ」
私の言葉に安心したように少し笑い
【ゼル】
「食事を終えたら今日はもう休むといい・・・鷹もね?」
【鷹】
「ん~、オヤジもお疲れ~」
優しげなゼル様の言葉に鷹様も笑顔で言葉を返した
そして、それに笑顔で返しゼル様はリビングから出て行った
【鷹】
「早く食わないと覚めるぞ?」
席に着いたが手をつけない私に不思議そうに声をかけてくださった
【氷歌】
「いただきます」
そんな鷹様に軽く頭を下げ、私も食事を始めた
2人きりのリビングには食事をするナイフやフォークの重なり合う音だけが響いている
【鷹】
「・・・なぁ?技能者って契約すると魔力が上がるんだよな?」
食事をしながら暇をつぶすように尋ねてこられた
【氷歌】
「はい、契約をしていない状態だと魔力に制御がかかってしまい能力を発揮することができませんが、契約する事でその制御が無くなります」
【鷹】
「どれぐらい上がんの?」
笑顔で言葉を返した私に更に質問で返された
【氷歌】
「契約を交わした直後の上がり幅は個人差があるようですが、その後の経験によっては更に力をつける事も可能です」
【鷹】
「・・・へ~」
私の言葉に少し考えるように返され
【鷹】
「・・・俺、思うんだけどさ、別に嫌々誰かに使えなくてもよくないか?」
少し不満そうに言葉を投げてきた
【鷹】
「魔力を上げる為、強くなる為に誰かと契約しなきゃいけないのは分かるけど、契約した後も契約者に使える必要なんてないじゃん、契約だけして逃げればいいんじゃない?」
【氷歌】
「・・・そうですね、嫌々契約者に使える必要はないかと思います」
鷹様の言葉に素直にうなづいた
【氷歌】
「ただ、契約者の生命反応を感じなくなると契約が切れてしまいますので技能者の魔力は一気に下がります、技能者は生涯一度しか契約を行う事が出来ないので、契約者を失うと、もう二度と力を求める事が出来なくなってしまいます。それを防ぐためにも契約者である主に使え、その身を守る必要があるのでしょう」
【鷹】
「・・・なら、お前は俺に使える必要はないな?」
私の言葉に少し笑いながら返してこられた
【鷹】
「俺はお前に守られなくてもお前より先に死なないからな」
その言葉には底知れぬ自信を感じた
・・・でも、その言葉は嘘ではないだろう
鷹様の魔力や地位は、その言葉を疑う気持ちも起きない程にあるから
【鷹】
「契約だけしてやろうか?別に周囲をウロウロしないなら俺に損はないし、お前真面目そうだから、悪い事しそうにないしな」
そう言ってからかうように笑った
【氷歌】
「・・・せっかくですが、それはやめておきます」
その言葉に笑顔で返した
【氷歌】
「私は強い魔力が欲しくて鷹様と契約したいのではなく、鷹様にお使えしたいから契約をしていただきたいのです」
【鷹】
「・・・ふ~ん、まぁ別にいいけど」
私の言葉に少しつまらなそうに返された
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
【鷹】
「・・・・・・・・・」
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
【鷹】
「・・・・・・・・・」
・・・どうしよう、会話が止まってしまった
・・・沈黙はマズイわよね?
・・・なんとなく気まずいし
【氷歌】
「・・・あの、今日森で会った男たちはどういう人間なのですか?」
なにか会話をしようと気になっていた事を尋ねた
【鷹】
「・・・なんで?」
【氷歌】
「鷹様の敵がどんな人間なのか知っておきたいと思いまして」
【鷹】
「・・・・・・・・」
私の言葉に鷹様は少し考え
【鷹】
「・・・根暗とそれに隠れる寄生虫」
不愉快そうに返してこられた
【氷歌】
「・・・寄生虫とは・・・あの火族・・・火の技能者の事ですか?」
【鷹】
「・・・そうだよ・・・何処からともなく現れて住み着いた・・・得体の知れない寄生虫だ」
・・・敵と表現された言葉に間違いはないのだろう
・・・憎しみを込めるような鷹様の言葉に少し戸惑いを感じた
【氷歌】
「・・・では、あの火の技能者はもう1人いた男と契約を?」
【鷹】
「・・・まだしてねーよ」
そう言って鷹様は席を立たれた
【鷹】
「・・・うざくなったらすぐ解雇するから、邪魔だけはしてくれるなよ」
そして、鬱陶しそうに私に言葉を残し、鷹様はリビングを出て行ってしまった
【氷歌】
「・・・・・・まずい」
・・・どうも私は鷹様の機嫌を損ねてしまったようだ
・・・でも、なにがまずかったのだろう?
・・・やはり、あの男たちの話を聞いたからだろうか?
【氷歌】
「・・・・・・・・・」
・・・とは言っても、鷹様の敵の事はもっと知りたい
・・・何故、敵対する必要があるのか
・・・でも、鷹様に聞くのは危険
・・・なら、自分で動くしかないか
【氷歌】
「・・・・・・」
そう思い、早々に食事を済ませ、出かける事にした




