第一話
この物語は失われた記憶を探す物語。青年ブラッド・ケネディは5歳の時に今の育ての親に拾われる。健康状態は良好の様だが、それ以前の記憶は忘れたようだ。しかも、その青年は特異体質でもあった。ブラッドの全身が魔素で出来上がっている。魔素とは、身体の中に含まれ、魔法を放つのに必要なエネルギーのようなもの。そんな彼を我が子当然のように育てているジョージ・ケネディをブラッドは親父と呼び尊敬している。彼は今、学園に入るために勉強をしている。
「親父、パンゲア王立学園に入学しなくても冒険者になれるらしいし、別に入らなくてもいいんじゃなねえか?」
「確かに学園に入らなくてもなれるが、そこの学園は数々の一流冒険者を輩出している。入っている学生も優秀な人物が多いため、魔物討伐依頼や特殊アイテム調達依頼が後を絶たない。しかもだ、魔界から入ってくる魔人族もそれなりにいるからな。もしかしたら、お前の記憶を思い出せる切っ掛けがあるかもしれないしな」
「分かったよ。取り合えず筆記試験はそれなりに自信があるが、問題は実技だ。冒険者コースの実技テストは結構特殊らしいから心配になる。」
「実力は申し分ないぞ。ただ、お前の体質上遠距離は難しいからな。ちゃんと対策しろよ。」
ブラッドの体は魔素で出来ているため、体を炎や雷、氷など変化できる。それらを飛ばして遠距離攻撃はできないことはないが、連発し過ぎるとブラッドの体が段々透けて最後に体が無くなってしまう。その代わりに、体を炎などに変化させること自体は、無制限にできる。
「懐かしいな。あの時は2人とも焦ったぜ。あの後マジックポーションを飲めば元に戻ったけどな」
「俺も意識がハッキリしている状態で消えかかるのはめっちゃ怖かった」
他愛のない会話を途中途中挟みながらブラッドは勉強を続けていく。しばらくすると、ブラッドの住んでいる家のドアから3回ノックする音が聞こえた。
「もしかしてあの人だろうな、また魔法の実践練習に付き合ってと言うかもな」
「言ってやれ、頭だけじゃなく体も鍛えないといかんぞ」
「分かった。ちょっくら体動かしてくる」
「マジックポーションなら沢山ある。念のため少しは常備していきな」
ブラッドはマジックポーションを2、3個持って行き玄関を開ける。
「やっほーブラッド。また魔法の実践練習に付き合って」
彼女はアン・ルーズヴェルト、ブラッドの幼馴染である。彼女もまたパンゲア学園の入試に挑戦する人だ。ただ受けるコースはブラッドと違い、アンは魔術師コースを受験する。
「よし、今度こそ負けないわよ」
「そう簡単に負けてたまるかよ」
村の外にあるちょっとした開けた場所で戦いが始まる。