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太陽の王冠 月の玉座  作者: ふぁん
第一章 魔導戦線
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  過去から未来へと⑤

「魔術の素養とはすなわち、肉体が魔力を生じ得るか否か、と言い換えてもいい」


 ククルとマフターブ、執事のビザン夫婦まで交えてクシャの講義が始まる。


「世界の様々な種族の中でも、アリアナ人の血を引く者が高い適性を持つとされている」


 そこにマフターブが挙手して質問を投げかけた。


「その魔力の有る無しはどうしたら分かるのだ?」

「分かりやすいのは、魔道具や触媒に用いる物の反応で見分ける方法だね」


 そう言ってクシャが用意したのは大きく丸い石版で、五芒星のような図形や文字が描かれている。クシャはその星の頂点五箇所に器を置くと、それぞれ火のついたロウソク、水、砂、鳥の羽、そして水晶の欠片を入れた。


「それじゃあマフターブ、この石を握ってみてくれ」

「キレイな石だな」

「そのまま円盤の中心に触れてみて」


 言われるままにしてみる。静寂があるだけで何も起こらない。


「これがどうだというのだ?」

「静かに」


 しばらく見ていると、頂点に置かれた器の一つで羽がかすかに動いた。手に握った鉱石は魔力を伝えやすい性質を持ち、微弱な魔力でも取り込む。それが円盤に描かれた陣を伝い、この羽を動かしたのだ。


「羽は五大属性のうち風を表している」

「つまり私は風の魔術が使えるということか?」

「残念ながらそこまでは。今の小さな反応では十分な素養があるとは言えない」

「そうなのか……」


 地味に残念そうにするマフターブ。期待させてしまったようで申し訳なかった。

 クシャが同じようにして円盤の中心に触れると、砂の入った器が揺れた。渦を巻いた砂が激しく流れを作っている。


「私は土属性が得意だから砂が反応している」

「おお」

「……まあ、私は才能が無いから一つしか反応しないんだけど」


 優れた魔術師なら二つ三つ反応が起こる。その強弱で得意な属性を見分けることも可能だ。

 次にビザン夫婦も触れてみたがマフターブと似たような微弱な反応だった。


「なかなか出ませんな」

「魔術の素養は百人に一人と言われますから。そして魔術院に通ったとしても、大成するのは更に百分の一だとか」

「では一万人に一人ですか、旦那様も」


 ビザンは感心したように言うが、一属性のみ、それもお情けで資格を得たようなクシャとしては自慢する気にもなれなかった。魔術院で名門出の学徒たちに笑われたことが思い出されるが、今はどうでもいい。


「さて、ククルはどうかな」

「は、はい」


 もったいぶってしまったがククルが試す番となる。緊張しながら鉱石を握り盤に触れた。


「水が……!」


 水属性を示す器で水が沸々と泡だった。その勢いは徐々に増し沸騰したかのようだ。

 変化はそれだけではない。ロウソクの火が激しく燃え、砂がしきりに渦を巻く。


「三つ反応した!」

「いや待て」


 風を示す羽がふわりと舞い上がった。――四属性。滅多に見られない稀有な才能だ。クシャも予想外の結果に言葉を失う。


「こんなことが……」

「あの、旦那様」


 ビザンの妻マーニが指差す。水晶が置かれた器で微かな輝き。水晶の周りで火花が散るのが見えた。


「クシャ、これは……」

「……天の属性だ」


 これで五つ全ての属性が反応を示したことになる。ククルはどうしようと言いたげに恐る恐るクシャの方を見やるので、クシャは落ち着き払って頭を撫でてあげた。


「すごいなククル、やはり君はいい才能を持っている」


 その後はいくつか豆知識を交えた雑談をして講義は終わった。

 魔術盤を片付けながらクシャは水晶の欠片を拾い上げる。


(こいつが反応するのを見たのは何時以来かな)


 その仕草を横からククルが見ていた。


「ククル、記念に持っていなさい」

「いいんですか?」


 少女は受け取った水晶を大事そうに握りしめた。

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