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アルバート視線12 大国公爵令息は王女の侍女の唇を奪いました

魔王は次の攻撃を中々仕掛けてこなかった。


クリス様の黒死病菌の浄化の話で国中祝ったが、魔王の恐怖はまだ去っていない。国民の中にも見た目がか弱いクリス様と怖ろしい魔王を比べれば、魔王の方が勝つのではないかという不安も出ているようだ。


魔王も積極的に噂を流しているみたいだ。


それに対してこちらは我が国の陰険皇太子を中心にしてクリス様最強説を流していた。


クリス様自体はそれをとても嫌がっておられたが・・・・


シャラザール山が一瞬で消滅させられる様子であるとか、GAFAの4拠点同時雷撃した事実であるとか、大規模に、それも大げさに流すから、クリス様がどれだけ怖ろしい魔女だとか、化け物だとか、果ては魔王の女版だとか、ドンドン話が大きくなっていったのだ。


まあ、実際にクリス様が魔王に負けるわけはないのだが、貴族の中には魔王の悪巧みに屈する者も出だした。


今日はそう言う輩がクリス様に会いに来ていた。


我らは今後の対策を議論していたので、1時間彼らを待たすことになったのだが。


赤い死神と暴風王女を先頭に、クリス様の横には陰険皇太子がついて、我ら近衛もその後ろについて奴らが何やろうが完璧だった。


というか、奴らの相手だけなら、外務卿の赤い死神一人で十分なような気がしたのだが・・・・・



結果はやはり愚かな貴族どもにとっては最悪だった。


首謀者のフォルスト伯爵が一瞬で赤い死神と暴風王女の黒焦げにされた。


伯爵は魔王によって人間爆弾までしかけられていたが、それもクリス様の障壁で防がれた。


そこに映像で現われた魔王は、国民を人間爆弾にしてどんどんこちらに派遣しようと言ったところでクリス様の我慢の限界が来たのだ。本当に愚かだ。虎の尾を思いっきり踏んでしまったのだ。



「黙れ。もう許しません」

クリス様が上に手を突き出された。

怒りの女神が現出したのだ。


そして、そこからすさまじい閃光がほとばり出して天井を突き抜けると一気にモルロイの空まで貫き宮殿を直撃した。

「ギャー―――……」

すさまじい、カーンの悲鳴が響き渡り、そして何も聞こえなくなった。


本当に魔王も馬鹿だ。辺境の地でおとなしくしていればよかったのに、こちらに手を出してくるから雷撃の直撃を受けるのだ。、



魔王カーンは一命は取り留めたもののかなわないと見たのか、ボフミエではなくて隣のクロチアに進出した。


クロチア王宮を魔王一人で制圧したのだとか。


それに恐れをなした、その隣国トリポリ国王がクリス様に泣きついてきた。


魔王が現われた場合、助けて欲しいと。


そうそう、普通はそうなるのだ。史上最強魔道士のクリス様は魔王ですら怖れるし、魔王に対抗できるのはクリス様しかいないのだ。


それが貴族共には判っていなかったみたいだが。魔王に与していたものの多くの貴族が追放された。それを陰険皇太子が喜々としてやっていた。


そして、そろそろ最終決戦だろう。

これ以上魔王をのさばらせるわけには行くまい。


クロチアに侵攻し魔王を征伐せねば。


それには少し時間がかかるかも知れない。その前に俺はソニアに会っておこうと俺は学園に向かった。




「アルバート様!」

学園の廊下で生徒らに声をかけられた。


手を振りつつ俺はソニアを探した。


「えっ?」

ソニアは俺を見て驚いて出て来た。友だちと話していたみたいだ。前はクリス様しか友達はいなかったが、今は色々友達もいるみたいだ。それを見て俺は不安になった。ソニアはどう見ても可愛い。他の男どもがほっておいてくれる保障はなかった。


「悪い、忙しいところ」

「いえ、この時間は授業がありませんから」

皆に見られてソニアは恥ずかしそうにしていた。

場所を変えようと思い


「少しだけ良いか」

「はい」

俺は空き教室にソニアを連れて行った。



「どうされたのですか。お忙しいアルバート様が」

「いや、ソニアが、インダルのことを気にしているかなと思って」

まず、当たり障りのない話題から入った。


「えっ、心配して頂いてありがとうございます」

ソニアは心配そうに聞いてきた。

「で、何か判りましたか。故国とは検閲とか気になってあまり連絡していないんです」

「そうか。臣下の大半が王子派だもんな」

「はい」

ソニアも魔王が隣国を背家居した事には動揺していたのだ。


「取り敢えず、魔王は今は占拠したクロチアの占領体制の確立に動いて近隣諸国まで手が回らないようだ」

「そうですか。良かったです」

ソニアは少しホッとした表情をした。


「筆頭魔導師様も今回の件はとても憂いられておられる。せっかく魔王を雷撃したのに、即座に隣国に侵攻したのだからな」

「魔王には筆頭魔導師様の雷撃は効かなかったのでしょうか」

「そういうわけではないと思うが、魔王だからな」

俺は少しいいにくそうに言った。クリス様の遠距離雷撃だけでは魔王は倒せなかった。


「すいません。答えにくいこと聞いて」

「いや良い。筆頭魔導師様も我々もそろそろ我慢は限界だ。もうすぐ魔王に攻撃を開始する」

「そうなのですか」

心配そうにソニアは俺を見てくれた。


「これからは忙しくてこちらにも中々来れないだろう。

インダルの事は気になるとは思うが、私が帰ってくるまではこの地に留まっていて欲しい。この魔王戦が終われば絶対にインダルに連れて行くから。それだけを言いに来た」

そう、この前指切りできなかったので、ここできちんと約束しておこうと思ったのだ。



「えっ、わざわざ、そんなことのために」

ソニアは驚いていた。


「そんなことのためにって、ソニアはすぐに暴走しそうだからな」

そう、魔王戦が長引いてソニアが勝手に帰ることが心配だった。途中の治安も悪い。そんな危険な目にソニアを合わせることは出来なかった。その暴走を防ぐために来たのも事実だ。


「子供じゃないです。それにクロチアが占領されてクロチア川が使えないので、帰るルートが無いですから」

「約束してくれるか。待っていてくれると」

「はい、判りました」

「はい、じゃあ指切り」


俺はやっとソニアと指切りできた。これでこの地で待っていてくれるだろうと俺は思ってしまった。ソニアの行動力を甘く見ていたのだ。後でどれほど後悔したことか。


「それとこのペンダントを預かって欲しいんだ」

俺はやっと出来てきたバーミンガム公爵家の紋の風車を形どったペンダントを差し出した。


基本この風車は戦神シャラザールが信頼した我が先祖に渡したといういわく付きのもので、公爵家の者が大切だと思った者に渡しているものだ。最近は婚約者に渡すことが多い。故国ドラフォードでは皆知っていることだし、他の奴らへの牽制にもなるだろう。

俺は戦いに行く前に、これをソニアに渡すことにしたのだ。


「えっ、これって高価なものでは。こんな物お預かりするわけには」

「戦場に行く騎士の安全祈願のようなものだ。こんなの頼めるのはソニアしかいないのだが、駄目だろうか」

俺はドサクサに紛れてソニアに渡すことにしたのだ。これがどのような物か判れば絶対にソニアは遠慮するだろう。


「判りました。お預かりしますね」

ソニアが預かってくれることになって俺はホッとした。そう、これにはいざというときのための防御魔術まで施されている優れ物なのだ。


「じゃあ、つけよう」

「えっ・・・・」

俺はソニアに近づいて首の後に手を回す。


ソニアは恥ずかしさで真っ赤になっていた。


メチャクチャかわいい。


ソニアの顔が近いし、唇が目の前にあった。


俺はそれを見て考えてもいなかった行動に出てしまった。


ソニアの唇に私の唇を重ねてしまったのだ。


やってしまった。どうしよう?


ソニアは真っ赤になって固まっていた。


「ゴメン。無事に帰ってくる、おまじないだから」

俺は必死に誤魔化した。そんなの信じるわけないよな。


「じゃあ、絶対に無事に帰ってくるから、必ず待っていて欲しい」

ソニアは真っ赤になって頷いてくれた。


やってしまったことで頭はパニックになったが、戦場に行く前にソニアの唇は奪えた。


俺は興奮に打ち震えどうやって宮廷まで帰れたか覚えていなかった。


ついにアルバートやっちゃいました・・・・

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