アルバート視線11 大国公爵令息は王女の侍女の国に一緒に行く指切りが出来ませんでした
そして、チャイムで俺達はやっと開放された。本当に学園長もしつこい。もっともクリス様の実績が実席なだけに言いたいことは判るが。
しかし、クリス様も全く堪えていないみたいで、
「この魔王騒動が終わったら絶対に助けるから、それまで待ってね」
と、こっそりソニアに言っていた。
さすがクリス様というか、うーん、図太い。マーマレード王妃の淑女教育を最後まで耐え抜けたことはある。実の娘のジャンヌは1分ももたなかったのに。ジャンヌによるとあれに比べたら士官学校のシゴキなんて屁みたいなものだそうだ。その言葉自体がマーマレードの王族としてどうかとは思うのだが・・・・
「では筆頭魔導師様。私はソニアを教室まで送っていきます」
俺はクリス様に断った。
「えっ、いえ、学園内ですし、わざわざ送っていただくても」
ソニアは遠慮しようとした。
「学園内と言えども何があるか判りませんし」
クリス様の後ろのナタリーとメイは生暖かい目でこちらを見て来るが、俺は強引に話しを通した。
「あらあら、そうなのね。ゆっくりしてきていいわよ、今日の夜までに帰ってくればいいわ」
クリス様もなんか白い目で見てくる。そんなに掛かるわけ無いでしょう。
「いえ、すぐに戻ります。では」
「し、失礼します」
俺は強引にソニアを連れて歩き出した。
「あの本当に学園内ですから、問題ないですよ。アルバート様もお仕事中ですし」
「いや、これも仕事だから」
ソニアは遠慮したいみたいだが、俺は送るつもり満々だった。
せっかくソニアと学園で仲良くなったのに、いきなり魔王戦だ。学園は1年制でこのまま長引けば下手したら俺は学園に復帰出来ないかも知れない。せっかくのソニアとの楽しい学園生活が出来ないではないか。どうなるんだ。俺は考え事をしてしまった。
「アルバート様。早いです」
ソニアの声を聞いて俺は一緒に歩いていたことを思い出した。
「あっ、ゴメン」
俺はつい考え事をすると足が早くなってしまう。せっかく、ソニアと一緒に歩けていると言うのに。戦闘はこれからだろう。ソニアと一緒になどしばらくいれないに違いない。こんな貴重な時に何を考えているのだ。考えるのは後だ。
「本当にお忙しいのならば、お戻りいただければ」
ソニアが言う。
「いや、すまない。ちょっと考え事をしていて、足が早くなってしまった」
今度はソニアを見ながら、ゆっくり歩く。こうしてみるとソニアは可愛い。
こんな可憐な子がハンカチくれたんだ。俺は嬉しくなった。
でも、ソニアと目が合うと思わず恥ずかしくなって目をそらしてしまった。
うーん、なんかドキッとした。なんだろうこれは。
「あのう、ハンカチありがとう」
俺はソニアの方を見ないようにしていった。
「えっ、はい。お役に立ちましたか」
「とても役に立ったと言うか嬉しかった。クリス様のより力入れて縫ってくれたのが判ってもっと嬉しかった」
俺は散々クリス様に拗ねられたが、クリス様の何倍も時間をかけてくれたハンカチをもらって嬉しかった。
「えっ、そもそもあれは筆頭魔導師様にあげたのではなくて、クリスにあげたんですけど」
「えっ」
そうだった。俺もクリス様と同じ勘違いするところだった。
「それよりクリスは元気なんですか」
「うん、元気だよ」
君はさっき会っていたし、まあ見た目だけならクリス本人と判らないのだろう・・・・、と思う。
「ソニアはこの1年が終わったらどうするの?」
俺は先程から気になっていることを思いっきって尋ねた。
「国に帰ります」
「そうか、この国に残らないのか」
それはがっかりする回答だった。でも、元々王女を助けるつてを探しにこの国に来たのだ。それが終われば帰るだろう。なんか無茶苦茶寂しかった。
「それは友だちも出来ましたし、皆さんには良くしてもらっていますが、リーナ様のことが気になりますので」
それはそうだろう。リーナ王女とソニアは姉妹のように育ったと聞く。
「でも、偉い人に色々目にかけてもらえるようになったし、君の国的にはここにいてもらったほうが良いのではないか」
俺はその線から攻めることにした。
「それはそうかも知れませんが、私一人では決められません。取り敢えず帰って相談しないと」
「そうだよな。何なら、その時に私が一緒についていってあげるよ。その方が信憑性があるだろう」
俺は咄嗟に思いついた。そうだ。そうすれば更にソニアと仲良くなれるし、この国にもう一度連れてくることも容易いだろう。こういうことを考えられるのは伊達に大国の貴族の息子をやっていない。
「えっ、本当に良いのですか」
ソニアは喜んでくれた。我ながらうまく考えられたと思う。クリス様もインダルとの事を考えてくれると言ってくれているし、この線で攻めることにした。
「当然さ。ソニアのためだから」
「じゃあ指切り」
ソニアが小指を絡めようとしてくれた。その仕草が可愛い。
俺が喜んで小指を絡めようとした時だ。
無情にも授業終了のベルが鳴って生徒たちが飛び出してきた。
「あっ、アルバート様だ」
「本当だ」
せっかく俺がソニアと指切りできるチャンスだったのに、コイツラ邪魔するなよ。
俺は余程そう言いたかったが、そう言うわけにも行かなかった。
俺が囲まれる様子を遠くから見守るソニアは何故か寂しそうに見えた。
おいおい、あんまり周りにそう言う姿を見せるなよ。男どもの庇護欲を掻き立てるだろう。
俺は周りの奴らを牽制するためにも早急にアクサセリー作ってソニアに贈ろうと心に誓った。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
アルバート視線も後少しそこから怒涛の展開になる予定です。




