王女の侍女は王妃に殺されそうになりました
私はペンダントが光った時に何が起こったか判らなかった。
しかし、凄まじい悲鳴を上げて王子が叫んでいるのは判った。
光が収まった時、体を焼けただれさせた王子が泡を吹いてゆっくりと後ろに倒れるのが見えた。
「ど、どうしたのじゃ」
王妃が叫んだ。
「殿下」
後ろに控えていた兵士達が慌てて駆け寄る。
「すぐに医者を呼べ」
兵士の一人が叫んだ。
「この女、殿下に何をした」
兵士の一人が叫ぶが、私は縛られたままだ。何も出来るわけはない。
アルバートから預かったペンダントが何かしてくれたのだ。おそらく防御魔術か何かがかかっていたのだろう。少なくともクズ王子の一人に目にもの見せることが出来て私は溜飲を下げた。
「ふんっ、悪いことばかりしているから天罰が下ったのよ」
私は叫んでいた。
「その胸元のペンダントだ。ペンダントに防御魔術か何かが仕込まれていたのだ」
「そのペンダントには触るな」
兵士達が遠巻きに見ている。
これで何もされない。
私はホッとした。
でも、私の服は王妃のムチでぼろぼろになり、裂けたところから見える肌は傷だらけだ。
このまま救援が来なければどのみち私は終わりだろう。
そして、救援の来る見込みもほとんどなかった。
唯一の望みは逃げ出したリーナ様が救援を率いて駆けつけてくれることだが、おそらく王宮は王妃派によってもう完全に掌握されているだろう。一握りの兵士達で助けに来ても犬死するだけだった。それよりはリーナ様だけでも、助かってほしかった。
私の心の絶望を裏付けるように王妃がペンダントが睨みを効かせていない後ろに回った。
「この魔女め。良くもイシャン様ばかりでなく、私の甥までひどい目に合わせてくれたな」
そう叫ぶと王妃は後ろから私めがけてムチを振り下ろした。
「ギャ」
私は耐えきれない痛みに思わず悲鳴を上げていた。
「良くも我がマエッセンの高貴な王子に手を上げたな」
王妃はムチを振り下ろす。
「ギャ」
私は何もしていない。勝手に王子が罠にハマっただけだろうと言いたかったが、もう言う気力もなかった。
「我が愛しのイシャンをよくも傷つけてくれたな」
一言叫ぶ度にムチを振り下ろす。
「ギャ」
どこにそれだけの力があるのかというくらい王妃のムチは痛かった。ひょっとしていつも気に入らない侍女たちを折檻しているのかもしれない。私はくだらないことを考えた。
王妃は何度も何度もムチを振り下ろす。
途中からはもう悲鳴も上げられなかった。
もう体は傷だらけで、裸足の足には血が滴り落ちてきた。
意識の朦朧とする中で私は仲良くしてくれたクリスにも全然会えていなかった事を思い出していた。
そして、最後にアルバートに今一度会いたいと思った。
でも、もう会えるわけもない。
私はここで死ぬのだと。
痛みが薄れて意識が朦朧としてきた。
気づくと周りは真っ白だった。
白以外何も見えない。
私は素足に白い衣装を纏っていた。
そして、目の前には川が流れていた。
そして、川の向こうには笑っている母と父を見た。
そうか、天国から母と父が迎えに来てくれたのだ。
目の前の川がかの有名な三途の川だ。
「さあ、おいで」
二人が手を広げてきた。
私は二人の手の中に飛び込んでいこうと川の中に一歩踏み出した。
「待って、ソニア」
その時、後ろから別の声が聞こえた。
懐かしい声だった。
誰だろう。
私は後ろを振り向いた。
そこには黒髪黒縁メガネのクリスが立っていた。
そして、後ろにはアルバートがいた。
アルバートは必死になにか叫んでいる。
しかし、私には聞こえなかった。
私は両親の方を見た。
そのまま両親の胸に飛び込みたかったが、両親は首を横に振っていた。
「ソニア!」
クリスの声が聞こえた。
私は両親の方に行くのは諦めた。
まだ死ぬのは早いのだろう。
せめてアルバートにひと目会いたい。
私はゆっくりとクリスらの方に歩き出した。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
おまたせしました。ついに次回来臨です。
明朝更新ご期待下さい。




