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王女の侍女に同行した商人はボフミエ魔導国内務卿の親書を差し出しました


こ、こいつ、女の子が敬愛するというか姉的感じのリーナ王女の為に命かけて帰ってきたんだ。決してこの世界、女の子の一人旅が安全なわけ無い。人買いもいるし、強盗追い剥ぎも多い。下手な男に捕まって犯されて娼館に売られる場合もあるのだ。


特にトリポリからここまで、小さな国が多く治安もボフミエほどいいとは言えないのだ。

ボフミエ魔導国は1年前までは治安も悪かったが、筆頭魔導師様たちが一掃、特に婦女暴行犯とかは、下手したら暴風王女自らが公開チン切刑なんてものもやっていたりする。見たこと無いけれど。


ボフミエは女性にとってもまだ、安全な国なのだ。


このあたりはそれに比べたらとても危険な国だ。女性が一人旅なんて中々出来ない。

でも、私はそうしても帰って来ようとした。


それをクリスの恋人のオウが無理やり頼んでエスターについてきてもらったのだ。

それをこの幼馴染、私の初恋の相手は商人なんかの助けを借りてだと。また、商人にぼられるかなんか思ったのか。でもエスターさんはとても親切に対応してくれたんだよ。


貴様と違って。100年の恋も冷めて私は怒鳴り散らそうとした。



「ルドラ、せっかくソニアが帰ってきてくれたのよ。なんてこと言うの」

その前にリーナが切れた。


「しかし、ソニアはボフミエで強力な後ろ盾を探してくるっていう話だったじゃないか。それが捕まえられたのが、商人じゃもう、どうしようもないじゃないか」

ルドラは反論した。


こいつ殴ってやる。私は更に切れそうになった。


「ルドラ、何言ってるの。普通、か弱い平民の女の子がそう簡単に大国の後ろ盾なんて得られるわけ無いじゃない」

「しかし、このままじゃ、君は他国の妾になるしか無いんだぞ」

「ルドラ」

リーナが厳しい声でルドラを見た。リーナの声は王女の威厳に満ちた声だった。でもリーナが他国の妾になるってどういう事?マエッセンの国王からはもうそう言う話が出ているというの?


「申し訳ありません」

ルドラはリーナ様の怒りの前にゆっくりと跪いた。


「ルドラ、ソニアにも言うことはないの」

「ソニア、申し訳ない。少し余裕がなくて、すまん」

ルドラは私にも謝ってきた。


この二人の間で何があったか知らないけれど、私は怒鳴り散らすことも出来なかった。

よく見ればルドラの目には隈も出来ていた。リーナも顔色は悪い。国王崩御から今まであまり寝れてもいないのだろう。

許すことは出来なかったけれど、何も言えなかった。


「ソニア、ごめんなさいね。で、その親切な商人の方はどちらにいらっしゃるの」

私は応接室にリーナ様を連れて行った。



「この国の王女、リーナ・インダルです」

「商人をしております、エスターと申します」

インダルは小国であまり格式張ったことはない。商人とも普通に応接室で対応した。

関係者ということで本来ならありえないのだが、リーナ王女の横に私も座っていた。ルドラは王女の後ろに控えている。


「この度は我が侍女ソニアをわざわざボフミエ魔導国からお送り頂き誠にありがとうございました。なんとお礼を申してよいやら、本来ならば謝礼せねばならぬのに、今は手持ちもあまりございませぬ」

「礼など既にボフミエ魔導国の内務卿より頂いておりますので不要でございます」

「内務卿から?」

リーナが私を見た。


「えっ、何も聞いていないんですけど」

私は首を振る。


えっ、どういう事? 私内務卿なんかに会ったこと無いんだけれど、内務省勤務のオウがいろいろやってくれたんだろうか。


「内務卿から親書をお預かりしております」

エスターは懐から立派な封筒を取り出した。


「まあ、ボフミエ魔導国の内務卿閣下からですか」

リーナは封筒を開けて中身を読む。


ボフミエ魔導国の内務卿って言ったら超大国ドラフォード王国の皇太子殿下だ。さすがオウ、クリスの恋人なだけはある。


「ソニア、凄いじやない。ボフミエ魔導国の筆頭魔導師様と親しくなれるなんて」

「いえ、リーナ様。筆頭魔導師様とは2度ほどお話させていただいただけで」

私は慌てた。何が書いてあるんだろう。私の顔を何故かエスターが何か言いたそうな顔で見てるけどなんだろう?


リーナ様は読んだ後私に渡してくれた。


私も慌てて読む。


中身は筆頭魔導師様が私のことを気に入ってくれていること。できれば色々とリーナ王女を助けたいが、中々内政干渉はしづらいとつらつら書かれていた。また、筆頭魔導師様の近衛騎士のアルバートも私と懇意にしていること。必ず無事に私をボフミエに返してほしい旨が書かれていた。


「エスターさん。本当に色々ありがとうございました。内務卿への返書は明日したためてお渡しさせて頂いて宜しいでしょうか」

「判りました。明日もう一度お伺いいたします。ではソニアさんもまた明日」

エスターは礼をして出ていった。


私はうまくいけばボフミエ魔導国がリーナ様の後ろ盾になってくれるんではないかと期待した。だってわざわざ内務卿がリーナ様に親書まで送ってくれたのだ。期待してもおかしくはないだろう。


しかし、往々にして良いことが起こると期待した時は、逆に碌な事が起こらないのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

続きは明朝更新予定です。

次回からソニアの危機が起こります。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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カートの正体がわかった時、リアは・・・・。
王立学園で繰り広げられるドタバタ恋愛・シンデレラ物語。

ネット小説大賞運営チーム様から感想いただきました。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
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