王女の侍女は筆頭魔導師に呼ばれました
筆頭魔導師様が黒死病菌を浄化したとの報はまたたく間に国中に広まった。
何でも筆頭魔導師様は何かの図案を見られて、自分にすべての黒死病菌を集めてそれを浄化したらどうだろうと思いつかれたそうだ。
周りに言うと心配されるので、取り敢えず皆に黙って一人でされたそうだ。
周りとしては私達も含めてたまったものではなかっただろう。
何しろこの国の最高指導者が筆頭魔導師様なのだ。魔力量も桁違いに多い。魔王と並ぶほどだと言われていた。
そう、筆頭魔導師様は対魔王戦の切り札なのだ。その筆頭魔導師様が倒れられたと聞いて全員蒼白となったのだ。
高熱で苦しまれる筆頭魔導師様を見て周りの者はどれだけ心配しただろう。アルバートもとても心配したはずだ。
周りは筆頭魔導師様が高熱で倒れられてどうなるかと心配したそうだが、筆頭魔導師様はその間高熱にうなされながら黒死病菌を浄化されていたそうだ。
「知らなかった。黒死病菌を自分に集めて浄化するなんて事が出来るんだ」
私はボフミエの魔術のレベルの高さに驚いた。
「普通そんな事できるわけ無いでしょう」
「そんな前例聞いたこともないわよ」
ケチャとメリが言った。
そうだよね。普通は黒死病菌を浄化するなんて出来ないよね。私だけの勘違いじゃないんだと私も判ってホッとした。
「そもそも病原菌を浄化するなんて聞いたことがないし」
「それをやるなんて、さすが筆頭魔導師様よね」
結局死者は一人も出なかった。黒死病が流行って死者が一人も出ないなんてこの世界始まって以来のことだろう。これからは黒死病が流行れば筆頭魔導師様を呼べば浄化してくれるのだろうか?まあ、全ては無理でもそれだけ死ぬ人が減るのだ。これは歴史に残る快挙だった。
「さすが聖女クリスティーナ様」
と国中がお祝い気分だった。
これで病の病原菌は浄化できたので、筆頭魔導師様にはこの勢いのまま、次は人間の病原菌の魔王を倒して欲しいと皆願っているようだった。私もそう願った。
「ね、私が言ったとおりだったでしょ。筆頭魔導師様が何とかしてくれるって」
ケチャはあたかも自分がそう信じていたように自慢した。
「凄いわよね。目に見えない黒死病の菌だけ自分に全て集めて浄化するなんて。普通は死が怖くてそんな事は出来ないわよ」
メリも言う。
「だから聖女クリスティーナ様なのよ」
か弱いとか華奢だとか散々言っていたにも関わらず、からりと態度を二人は変えていた。
私もこうなって嬉しかった。筆頭魔導師様には戦場に行く前に一度お会いしたし、そんな方が黒死病で死んだなんてことにならなくて良かった。
アルバートも無事みたいだし・・・・
本当に無事て良かった。
私は心の底から喜んだ。
私達は嬉しくて学園中に皆でボフミエの旗を掲げて祝った。
授業中も皆浮かれていた。
そうして祝った翌日だった。
「ソニアさん、ちょっと来てくれる」
私は授業中にいきなりアメリア学園長に呼ばれたのは。
学園長とは言ってもアメリア学園長はあの大国テレーゼの皇太子殿下だ。
本来なら私が直接話せるようなお方ではない。
当然その横には帯剣したテレーゼの近衛騎士がついていた。
私は騎士をチラチラ見ながら慌ててついて行った。
一体何事だろうか。
学園長に呼ばれるような酷いことはしていなかった思うし、ひょっとして本国で何かあったんだろうか。
緊張して部屋に入ると
「ごめんね。授業中呼び出して」
そこにはアルバートを横に座られた金髪碧眼の筆頭魔導師様がいたのだった。