ボフミエ魔導国に魔王が攻撃してきました。
翌日も空は晴れていた。
「おはよう」
部屋から出た私は隣の部屋のケチャと偶然に一緒になった。
「おはよう」
私も挨拶を返す。彼女は魔導コースだった。
「ソニア、昨日もアルバート様と仲良く練習していたじゃない」
ケチャがからかってくる。彼女も平民だ。将来は魔導師になることを望んでいる。亡くなった祖父が魔導師だったようで、親兄弟の希望を一心に集めていてプレッシャーが大変だと言っていた。
「仲良くって、アルバート様は上に言われて私を指導していただいているだけよ」
「よく言うわ。だってアルバート様が女性と話すところなんて殆ど見たこと無いのに、あなたとはきちんと話しているじゃない。現に私なんて口を聞いてもらったこともないわよ」
「私この学校卒業したら戦場に出るようなものだから、哀れんで教えていただいているだけよ」
「哀れみもされない、私達にそう言う事言う?」
「だってあなた魔導師になっても命の危険があるわけじゃないでしょ」
「そんなの判らないじゃない。いつGAFAみたいなのがでてきて攻撃してこないとも限らないし」
「ジャンヌ様とかアレク様がいる限り問題ないんじゃない」
「うーん、確かにあの二人は別格だけど」
ケチャはクラスの中心の二人のことを思い描いたみたいだった。
「でも、私もアルバート様と仲良くしたい。また紹介してよね」
「アルバート様が許してくれたらね」
私は適当に誤魔化して教室に入った。
「おはようございます」
元気に言って中に入る。
「おはよう」
席についていたクリスが笑って声を返してくれた。その前のアルバートも笑って手を振ってくれた。
私はその笑顔を見て思わず嬉しくなった。
筆頭魔導師様に言われて構ってくれているだけだとは判っていたけれど、少しくらい喜んでも罰が当たるわけは無いと思っていた。
でも、それがいけなかったみたいだ。天罰が当たってしまったのだ。
午前の授業が終わる前だ。
「ちょっと良い?」
いきなり学園長が教室に入ってきたのだ。
皆騒然とする。
その中、アルバートとクリスが呼ばれて慌てて出ていった。
私はそれを驚いて見送るしか無かった。
昼休みもその日の放課後も二人は帰って来なかった。
更にはジャンヌとアレクも呼ばれたことが判明した。
そして放課後、モルロイ国の暴虐王カーンがカロエの街に攻撃してきたことが判明した。
その場には来年度の魔導学園の受験生がいたのだが、その受験生たちに攻撃してきたらしい。
正義の騎士がなんとかそれ以上の侵攻を止めたが、100名近くが殺されたそうだ。
なんて酷いことをするんだ。暴虐王と言われるだけはある。
しかし、モルロイなんて小さな国がこのボフミエに攻撃してくるなんて狂気の沙汰だ。
何しろこの国にはノルデインの皇太子殿下を始めドラフォード、マーマレード、テレーゼなどの大国の皇太子殿下が要職について政を行っているのだ。ボフミエに手を出すイコールこの4国に手を出すと同じだ。
モルロイは気が狂ったのだろうか。
しかし、その話と同時にモルロイの暴虐王は実は魔王だという噂話が広がった。真実は判らなかったが、確かに相手が魔王でもなければこんな自殺行為はしないだろう。
でも、魔王を相手にするにはボフミエ魔導国といえども中々厳しそうだった。
クラスの中からちょくちょく抜けが見られた。
急遽戦力として招集されたのだ。
クリスも障壁の素晴らしさで招集されたのだろう。
でも、魔王相手に勝てるんだろうか。
いくら筆頭魔導師様が強くても魔王相手に勝てるのだろうか。
戦場に赴くクリスやアルバートは大丈夫なのだろうか。
私はとても心配になった。
その日は心配でよく寝れなかった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ソニアの愛しのアルバートが戦場に出ることが決まりました。
なにかしたいソニア。
今夜更新予定です。
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