王女の侍女は大国公爵令息に串をアーンさせられました
それから私達は街を散策した。
国都ナッツァは飢饉だったことが嘘のように活気があった。店もあちこちに出来つつあって、広場には多くの屋台が出ていた。
「ふんふん」
私の鼻孔に肉の美味しそうな匂いが漂ってきた。
屋台では大きな肉の塊と野菜を交互に刺した串焼きを売っていた。
「何だ。もうお腹が減ったのか」
呆れてアルが言った。
「だってこんなに美味しそうな匂いがするんですもの」
私は言い訳した。
「仕方がないな」
アルが2本の串を買ってくれて1本渡してくれた。
「えっ、くれるの」
私が驚いて聞くと、
「噂広げたお詫びだ」
「ヤッター」
現金なもので私はもうアルを許す気になった。本当に我ながら単純だ。
オウも串を買っていた。でも1本だけだ。
「えっ、オウ、私には?」
クリスが不満そうにいう。
「そんなたくさん食べられないでしょ。昼前だし」
そう言うとオウが串をクリスの前に差し出す。
「ありがとう」
その串にクリスが可愛い口を開けて噛み付く。
「えっ」
私はそれを見て固まっていた。これが噂に聞く恋人どおしの食べさせか。
クリスの食べたあとオウが串にかぶりつく。
「ウソ」
クリスは私達の驚いた視線を見てはっと気付いて赤くなる。
「はい、クリス」
私達の視線を全く気にせずにオウはクリスの口元に串を差し出す。
「オウ」
クリスがオウに注意を促すが、
「何言ってるんだよ。昔は普通に食べさろって言ってきたくせに」
「それ子供の頃でしょ」
「そうか。でもこの前も食べさせてたし今更だろ」
「えっ」
クリスは不満そうだが、仕方無しに串に食いついていた。
「二人って本当に恋人なんだ」
私はアルに聞いた。
「うーん、でも軍で行動してたら食べ物シェアするのはよくあるぞ」
アルが平気で話す。
「えっ、そうなの」
私には信じられなかった。
「それにオウとクリスは幼馴染だから。子供の頃から良くしているんじゃないか」
慣れてない私はおかしいんだろうか。確かに王女とはシェアしたことはあるが、幼馴染のルドラとは無かったはずだ。子供の頃から食べさせ合いをしていたら王女に取られることはなかったんだろうか。いやいやそれはない。
ルドラと食べさせ合うなんて。
「いやいや、幼馴染だからってそれはないよ」
私は赤くなって否定した。
その私達の前にいきなり茶髪の女が現われた。
私は驚きのあまり固まってしまった。これが転移・・・・
「お前ら遅い!」
その女は怒って叫んでいた。
「ジャンヌお姉さま!」
クリスが声を出していた。お姉さまってクリスに姉がいたんだ。
「遅いってなんだよ。今日会う約束なんてしていないぞ」
オウが文句を言う。
「ふんっ、貴様が店の予約しているのを見たから前もって待っていたんだよ」
今度はそのとなりに転移してきた赤髪のイケメンが言った。
「お前ら趣味が悪いぞ。何で俺とクリスのデートの邪魔するんだ」
「別に邪魔していないぞ。楽しんでいるだけだ」
女が答えた。
「おふたりとも今日はオウとのデートではないです。ソニアが街に買い物に行くって言うから案内しただけで、オウは無理やりついて来ただけなのに」
クリスが文句を言う。
「ソニアって」
ジャンヌと呼ばれた女が私の方を見た。
「ああ、お前がインダルからのお転婆ソニアか。アルから聞いてるぞ」
「アル!やっぱり言いふらしているじゃない」
ジャンヌの言葉に私はムッとしてアルを睨みつけた。
「はい、じゃあこれ食べても良いから」
アルは食べかけの串を私の口に突っ込んできた。
えっ、信じられない。アルと串シェアしちゃった。恋人みたいに食べさせられた!!!
私は串を咥えて真っ赤になった。
「お前ら、人を待たしておきながら美味しいの食べてるじゃないか」
「だから待たせていない」
「アレク、私も同じの」
ジャンヌは文句をいうオウを無視して赤髪の青年ににたかっていた。
二人がシェアしているのを見てボフミエでは男女が揃うと食べさせ合うのが普通なのか・・・・
私はカルチャーショックを受けていた。
そんな訳ありません・・・・
ついにジャンヌとアレクが登場です。