幸運【ショートショート】
トイレの個室の壁の下の隙間。包丁が突っ込まれた。抜き差し。青ざめ、驚いていると、引っ込んだ。
焦ってしかしゆっくりと外に出る。包丁を持った、名前しか知らない、話したことの無い同級生がいた。
右手が切れる。
出口へ走った。
外に出ると、人がたくさん。とにかく危ないことを伝えなければ。
「包丁を持った女に!襲われました!通報して!」
逃げ、隠れながら、血を拭い、110番通報。
「○○大学に刃物を持った女がいます!早く来て!助けて!!」
警察が驚く。「本当ですか?すぐに向かいます。」
電話は繋ぎながら、できるだけ遠くへと逃げる。手の傷はすぐに血が止まった。
追いかけてくる足音。さっきの女ではなく、知らない男。誰だ?
ブツブツと何か言いながらにじり寄ってくる。3階のベランダ。下は畑。飛び降りるしか無かった。
周りにいた数人が一緒に飛び降りたが、そのまま倒れている。
運良くまだ動ける、逃げなければ。
走る。
自販機の前。130円の麦茶。優しい後輩2人。
「飲み干す度に買いにこされられたよな」
「ガツンと言ってくれてちょっとスッキリ」
走る。
仲の良い同級生。すれ違う。
「......」
睨まれた。
走る。
大好きな恋人。全力で殴りかかってきた。避ける。涙が出てきた。逃げる。
「自業自得」
「あれだけやってれば返ってくるよな」
「せいせいした!」
「まだ足りない、もっと」
「......死んでしまえ」
窓の外にパトカーが見えた。
警察に捕まるのは私だろうか。