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焼き鳥屋にて


 夜の8時頃、京都御所から出てきた2人の女性。

 竹田と菊池だ。


 資料室で、資料を見せながら説明していた竹田と、メモを取りながら聞いていた菊池が、今夜はここまでと、帰る事にしたのだ。


「夕食はどうするの?」

 と、竹田が菊池に聞いた。


「コンビニで何か買って帰りますよ。まだ安いスーパーとかも知りませんし、今から作るのもめんどうですし」

 と、菊池が答える。


「なら、一緒に何か食べる? 私も今夜は作る気にならないしさ」


「じゃあ、ご一緒します」

 菊池がそう言う。

 2人は今出川駅方面に向かって歩き出し、大きめの焼き鳥屋に入った。


「着任祝いとして奢るから、好きなの頼んでいいわよ?」

 と、竹田が言うと、

「ほんとですか! ありがとうございます♪」

 菊池がメニューを見ながら、店員に注文していく。


「私はハイボールを」

 竹田が自分の酒を注文する。


「あ、じゃあ私、レモンサワー!」

 と菊池が言うと店員が、


「酎ハイレモンですね」

 と言いながらメモする。


「こっちじゃあサワーって、あまり言わないわよ」

 と、竹田が菊池に言う。


「そうなんですか?」


「うん、まあすぐに慣れるわよ」


「はい!」

 と、返事した菊池が、食べるものも注文する。

 すぐに酒が運ばれてくる。


「乾杯」

 と、竹田がグラスをあげると、


「乾杯」

 と、菊池が自分のグラスを、竹田のグラスに軽く当てる。


「そういえば、同僚の方ってあまり御所には来ないんですか? 伏見さんしか見かけなかったんですけど?」

 と、菊池が焼き鳥を頬張りながら、竹田に聞く。


「基本的には、死霊課には用事が無ければ来ないわよ。今日のように事件になってしまえば来るけど、普通は未然に防ぐのが仕事だもの」

 と、竹田が言うと、


「安道さんがサボったって事ですね」

 と、菊池が言ったのだが、


「サボってはいないわよ。安道も言ってたけど、担当地域が広すぎるのよ。しかも宇治は重要地区なのに、1人で担当だしね。隣の伏見区担当やその隣りの山科担当って、何人居ると思う?」

 と、菊池に問いかける竹田。


「そう聞くって事は、1人では無いって事ですよね? 三人くらい?」

 と、菊池が言うと、


「五人よ」

 と、答えた竹田。


「え! そんなに?」


「まあ、宇治より人が密集してるからってのもあるけど、普通はそれくらいの人数で1地域を担当するものなのよ。宇城久は宇治、城陽、久御山の事だけど、それより南側を1人で担当出来てるだけで、奇跡的なのよ」

 と、竹田が安道の凄さを言う。


「安道さん以外に担当させるとしたら、何人必要です?」


「15人と試算で出たわ」


「そこを1人で?」


「ほんと腕は良いのよ。二匹同時に発生したりする事もあるわけだし、それを1人で防ぐのは無理なのよ」


「増やしてあげれば良いじゃないですか」


「ずっと上にそう言ってて、ようやく認めてもらえたのよ。で、貴女が来たわけ」


「課長の上って誰です?」


「宮内省次長」


「No.2じゃないですか!」


「そう。なかなか許可してくれなくてね。アイツは1人で充分だとか言われてさ」


「面識があるんですか?」


「アイツのお兄さんなのよ。歳の離れたね」


「え?」

 と、菊池が思わず声を漏らす。


「実力を知ってるからなんでしょうけど、流石に酷いと思うのよね」


「弟の命が心配じゃないのでしょうか?」


「複雑なのよ、お兄さんには力が発現しなかったから」


「え? コレって血筋で発現するんですか?」


「血筋だけじゃないけど、名門って呼ばれる家は、発現する人が多いのよ。特に女性に多いわ」


「男性は少ないんですか?」


「今、ウチにいる者のほとんどが女性よ。男性は安道入れて14人だけ。全国で何人働いてると思う?」


「京都だけじゃないんですか?」


「そりゃそうよ。関西、特に京都に魑魅魍魎が多いから、ここにわざわざ京都事務所作ってるけど、全国に出るわよ」


「何故京都に多いんです?」


「長年、都があったからよ」


「へぇ、京都で何人居るんです?」


「100人、関西で300人よ」


「て事は、全国では?」


「600人。そのうち男性は京都に居る6人と、東京というか関東の2人と、北海道、東北、中部北陸、中国、四国、九州沖縄の各地区に1人づつの計14人だけなの。この異例さが分かるでしょ?」


「ほとんど女性なんですか⁉︎ なぜなんでしょう?」


「私達の力は、死霊や魑魅魍魎の発見、駆除に特化してる事が多いんだけど、その力は女性に発現するのよ。死霊や魑魅魍魎は女性に憑きやすいし、同性の方が相手に警戒されずに近づきやすいし都合良いんだけどね」


「女性に憑きやすいんですか?」


「99%女性に憑くわ」


「不思議ですね、何故なのかな?」


「分からないけどそうなのよ。安道曰く、餌となる男を釣りやすいからだって。で、死霊や魑魅魍魎を駆除する人の事を、退魔師と呼ぶのよ」


「退魔師……私にその才能というか、力が有るって事ですよね? よく分からないけど」


「そういう事。まあ力の使い方や駆除の仕方は個人差があるから、貴女なりのやり方を見つけないといけないんだけど、新人の教育ができるのは、あらゆる力の使い方を知ってる、男性だけなのよ。女性は特化型だから、違う力の教育が出来ないのよ」


「退魔師によって力が違うんですか?」


「そう、菊池さんは、現場では何か感じた?」


「冷んやりしたのを感じてそう言ったら、良い勘してるみたいなこと言われました」


「水属性か、死霊を見つけやすいわね、ちなみに私は火属性で、生き霊しか見つけられないのよ」


「生き霊って、多いんですか?」


「かなり多いわ。貴女も女だから分かると思うけど、女の嫉妬は凄いのよ。それこそ自分自身を魑魅魍魎に変えてしまうくらいにね……」


「ですね……話戻しますけど、男性は色んな属性? を持っているのですか?」


「男性はね……退魔師ではないのよ」


「え?」


「男性はね……陰陽師なのよ」



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― 新着の感想 ―
[一言] 一気読みさせていただきました。ローファンタジーは普段は読まないジャンルなのですが、さすがは「赤い死神」の作者様ですね。なかなかユニークな設定のハードボイルド風サスペンスといった感じで、京都の…
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