呆れた理由
お昼にもう一話投稿します
「何というか、凄まじい女性でしたね。個性的過ぎますね。晴牙兄さんよりも凄い人を、初めて見ましたねぇ。まあ掴み所の無い二人って事で、とりあえず良しとしましょう。では、誰か死霊課に連絡を。それと、この晴牙兄さんの封印石をただちに六道珍皇寺へ! いくら晴牙兄さんの封印石の容量が多いとは言え、二体の絡新婦です。いつ割れても不思議じゃないですから、急いで持っていってください」
晴明は、手に持った安道の封印石をみせながら、そう言った。
「私が封印石を預かって、六道珍皇寺に向かいます。坂井出さんに聞きたい事も、たった今、出来ましたので」
と、晴清が言いながら、晴明に近寄り、封印石を預かった。
「死霊課には、私が電話します」
と、晴勝がガラケーを取り出して、電話をかける。
「殉職した鈴木家と伏見家には、私が連絡します……ツライですが」
との晴明の言葉に、周りの皆が落ち込んだ雰囲気に戻るのだが、
「誰かこの糸破って〜」
と、助けを求める声がした。
「あ、三笠君の事忘れてた」
と言って、晴市が蜘蛛の糸に包まれた、三笠の方に歩き出し、蜘蛛の糸をナイフでなんとか切ろうとする。
その後、死霊課の車両が、次々と駐車場に到着し、遺体の回収と、潰れた車の撤去、それに薬莢などを回収していく。
「そう……鈴木さんだけじゃなく、美琴まで……」
現場に到着した竹田が、声を詰まらせる。
「鈴木君は頭を齧られてはいるが、遺体があるからまだいいが、美琴は絡新婦に乗っ取られたので、遺体は風化してしまって無いのです……」
晴明が、そう言って竹田に説明する。
「悲しいけど、妖怪二匹、しかも通常より強力な妖怪に、二人の犠牲なら少ないほうなのでしょうか……」
竹田の声には、悲しみの感情が感じられた。
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絡新婦二匹分の霊を、井戸であの世に送り終えた坂井出は、
「やはり晴牙の血は、後世に残さねばならんの」
と、晴清に言う。
「その事でもお話があります住職。何故、私の姪に目星を?」
そう言った、晴清の問いかけに、
「ん? 何故それを晴清殿が知っとる? まだ晴明と晴秋しか知らんはずじゃが?」
と、坂井出が聞き返す。
「絡新婦退治が終わった後、杏奈が現場に来ましてね……」
と、知った状況を、晴清が説明し出す。
「おうおう、そうか! よし! 上手く纏まりそうな気配じゃな! まあ理由としては、阿部の家は安道家とここ数代、婚姻関係が無かった事が主な理由じゃが、本人が何度かここに来て、直に話もしたし、素直な良い娘じゃったから、晴牙にお似合いじゃと思ったからじゃの」
と、笑いながら言う坂井出。
「アレを……素直と言いますかね? 嫉妬心の強い自己中心的な性格で、変わり者の典型かと思いますが?」
と、否定する晴清に、
「晴牙にお似合いじゃろ? どちらも自己中の変人じゃし」
という、呆れた理由だった。
帰り道、晴清は車を運転しながら、自問自答していた。
「良いのか晴清……杏奈には……橋姫が……」
そんな言葉が聞こえた。




