何者?
陰陽師達は、絡新婦を中心とすると、上から見て正五角形の位置に布陣した。
式神による、波状攻撃をしつつ、術式を開始する。
その間、虎や狼の式神が、一当てしようと飛びかかる。
絡新婦は、脚でそれを叩いたり、身をかわしたりしながら、陰陽師達を攻撃するタイミングを探っているようだ。
晴明達は、1枚の札を取り出すと、その札に力を込める。
「皆、準備は良いか?」
晴明の声に、
「「「「応!!!!」」」」
と、皆から声が返ってくる。
「五芒星結界発動!」
晴明がそう叫び、札を上空に投げると、残り四人もそれに続く。
上空に舞った札が、光の線で繋がり、五芒星を形を作る。
その中心に居た絡新婦の動きが、ピタリと止まった。
『グッ、なんじゃコレは!』
絡新婦が体を動かさない事に苛立つ。
「我らの術よ! 動けまい!」
晴明が言うと、
『こんなモノ、なんとでもなるわぁああ!』
絡新婦が渾身の力で、結界を破ろうと動く。
「晴明様! 想像している以上に、ヤツの力が強い! これではたいして持ちませんぞ!」
晴勝が叫ぶ。
「晴牙兄さんが、眷属を倒すまで保たせるのです!」
と、晴明が叫ぶ。
「しかし!」
「やるしか無いんです!」
「了解です」
そう言って、晴勝は力を込めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
安道は、狙いを眷属に絞り、走り迫る。
左手にナイフ、右手にグロッグ17。
眷属の脚の攻撃を、左手のナイフで受け止め、さらに迫り来る脚を避け、右手のグロッグ17で、確実に眷属の腹を、銀の銃弾で撃ち抜いていく。
眷属の腹から、いく筋もの黄色い体液が漏れ出る。
たまらず後退した眷属を、走り追いかける安道。
眷属が、長い脚で安道に殴りにかかるが、それをかわして眷属の後ろまで走り切ったとき、眷属の腹が大きく裂けた。
ドボドボと流れる体液を見た本体が、
『糸で巻いて体液を止めよ!』
と、いまだ動けぬ本体が、眷属に叫ぶ。
眷属が糸を出すが、ほんの少ししか出ない。
『ちっ、もう満足に糸が出せぬか。いったん後退して、ワシの方に来い。動けないが糸くらいなら出せる! 糸を巻いてやるから!』
絡新婦本体が、眷属に言ったのだが、
「もう遅えよ……倒したからな……」
そう言った安道は、既に眷属の絡新婦の頭部の所に立っていた。
安道の声は、どことなく悲しげな雰囲気が漂う。
左手に握るナイフから、黄色い液体が滴り落ちる。
ポロリと、眷属の絡新婦の頭部が、地面に落ちた。
すると、落ちた頭部が子蜘蛛の姿に変わり、逃げ出すが、
ブチュ
と、それを踏み潰した安道。
踏み潰した足が紅く光り、触手のような蛇の姿が現れる。
安道が持つ、カバンの中から封印石を取り出し、それを踏み潰している子蜘蛛に押し当てる。
蜘蛛の姿から人の姿に変わった、頭部の無い伏見の体が、風に吹かれて散っていく。
「俺のお気に入りの美琴を、こんなふうにしやがって……あの世で後悔しろ……虫ケラがああ!」
そう叫びながら、絡新婦に向かって歩き出す安道。
いや、もう赤刀蛇と言った方が良いのだろうか?
眼の白い部分は真っ赤に染まり、黒目は縦向きの楕円形に変化している。
顔に浮かぶ鱗状の模様は、さらにクッキリと浮かび上がり、駐車場の街灯の光が反射している。
そして額に紅く光る1本の角。
『貴様……いったい何者じゃ……』
安道の姿を見た絡新婦が、少し怯えた声を出す。
「なんで虫ケラに、わざわざ説明しなきゃなんねぇんだよ! てめえはさっさと死んで、封印されりゃあいいんだよ!」
と、叫んだ赤刀蛇。




