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撫でる


 遊歩道とは名ばかりの、急な階段を降りていく安道達。

 宇治川の横の道を歩いていくと、吊り橋が見えてくる。


「なんか、観光地って感じですね」

 菊池が言うと、


「宇治は観光地だぞ。見るとこ少ないがな」

 安道がそう言うと、


「少なくは無いんじゃない? 源氏物語ミュージアムや平等院があるし」

 と、伏見が言う。


「平等院と、お茶しか有名じゃないからなぁ」

 と、少し笑いながら安道が言う。


「私、抹茶スイーツ好きです」

 と、菊地がフォローするように言うと、


「まあ、茶団子美味いけどな。宇治橋のところに店あるから、食ってくか」

 と、安道が提案するが、


「今日はやめときなさいよ」

 と、伏見が諌めるのだった。


 およそ1時間。宇治署までゆっくり歩いた三人だが、何の痕跡も見つけられなかった。

 そのまま宇治署に入ろうとしたとき、僅かな異変を感じる。

 入り口から流れてくる、微かな冷気。

 決してエアコンの風のせいでは無い。

 伏見と菊池もそれを感じた。


「安道さん……」

 菊池が、安道を見ながらそう言う。


 安道が頷き、署内に入る3人。


「ああ、居るな。死霊だな」

 入ってすぐに安道が呟く。


「しかも一体じゃないよね?」

 と、伏見が確認するように、安道に問いかける。


「ああ、目視で三体。受付に座ってる三人全員だ」

 と、安道が静かに言う。


「どうする?」


「幸い、全員顔見知りだ。お嬢ちゃん、封印石に空きは?」

 と、菊地に問いかける安道。


「3体なら大丈夫です」

 と、菊池が安道の眼を見て言う。


「なら、出しておいてくれ」


「はい」

 と言って鞄から封印石を出す菊池。


「とっとと摘んでくる、後ろについて来い」

 と、菊池に言いながら、受付に向かう安道。


「よう! ランちゃん、スーちゃん、セイコちゃん、おはよう!」

 と、にこやかに笑いかけた安道だが、


「安道……さん」

「あ……や……す……」

「おは……」

 と、3人の女性は、途切れ途切れで声を出す。


「む? 自我が失われかけている?」

 と、眼を細めた安道。


「安道!」

 伏見が言うと、


「分かってる!」

 と、安道が動きだす。


「ひとーつっ!」

 と、言いながら、左の女性の頭部から、死霊を引き離して、背後に居る菊池の持つ封印石に、押し込める。


「ふたつっ!」

 と左手で、中央の女性から掴み取った死霊を握りながら、


「みっつっ!」

 と、空いている右手で、右に座る女性から、死霊を引き離し、菊池の方を向いて、両手にいる2体の死霊を、封印石に押し込んだ。


「ふぅ」

 と、一息入れた安道に、


「ねえ? コレって、どういう事?」

 と、伏見が聞いてくる。


「死霊が自然に取り憑いた訳ではなく、無理矢理取り憑かせた時に出る症状だ」

 と、伏見に安道が説明すると、


「無理やり……そんな事出来るんですか?」

 と、菊池が安道に聞いてくる。


「見たことは無かったが、本家の書物に書いてあった」

 と、安道が言うと伏見が、


「そんなの読ませて貰えるの?」

 と、聞いた。


「いや、昔、晴明とかくれんぼしてた時に、書庫に忍び込んで隠れたんだが、あいつがなかなか見つけてくれねぇから、そこにあった本をたまたま読んだだけ。あんときゃ安倍の先代にこっぴどく怒られたなぁ」

 と、少し苦笑いする安道。


「そりゃそうでしょ。というか、この人達に取り憑かせたヤツって……」

 と、伏見が言うと、


「そんな事できるのは、死霊より格上の妖怪、つまり今追ってる……」

 と、安道が言葉を続け、


「絡新婦?」

 と、菊池が言う。


「ああ、間違いないだろう。何か覚えてるかもしれんから、この子達から聞き出そう」

 と、安道が言ったのだが、


「それより、周りでこっち見て殺気立ってる警官に、事情説明した方が良くない?」

 と、安道に伏見が言う。


「とりあえずこの子達を、俺から引き離してくれない?」

 安道が伏見と菊池に頼む。


 なぜなら、三人の女達は安道にがっしりと抱きついて、あちこち撫でていたからだ。



なんか文芸の推理な気がしてきた。

ので、ジャンル変更します。

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