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多目的トイレ


 その日、宇治市は人で溢れる。

 いや、宇治市の一部だけだが。


 京都府立山城総合運動公園、太陽ヶ丘。


 〜宇治市街地に隣接する標高80メートル~150メートルの丘陵地からなる京都府内最大の運動公園として、体育館や陸上競技場、野球場、球技場、テニスコート、プールなどの施設が整備され、多種多様にスポーツや競技大会に利用されている〜


 ここで、毎年恒例の野外音楽フェスが、二日間行われるためだ。

 付近の駅からは、バスがピストン輸送を繰り返し、参加者を太陽ヶ丘に運ぶ。

 京都駅からも専用バスが出ているし、とても賑やかだ。


 警察もその応援に出るため、人員は減っているから、現場に来ていたのは、少数の警察官と、現場に駆り出された北岡署長。


 それに、事件発生の連絡を受けた、安道達陰陽師6人と菊池に、応援に来ていた伏見と三笠は、天ヶ瀬ダムの東側にある現場の山に居た。


 そこは細い山道を登ったところにある、公園のような場所で、天ヶ瀬ダムを見下ろす展望台のようになっていた。


 少し遠回りになるが、車でも来れる。

 そこにある公園の多目的トイレに、内臓の食われた男性の遺体。


「男2人で、こんな場所の多目的トイレとか、ただのハイキングじゃねぇだろ?」

 晴市が言うと、


「発見者のことを詮索しても、関係無いからやめとけ。趣味は自由だしな」

 と、安道が言う。


「晴明様、申し訳ない。私の調査漏れです」

 晴勝が、晴明に詫びるが、


「いえ、ここは仕方ないでしょう。ダムの側で、冷気と妖気の見分けはつきにくいし、浮遊している霊が多過ぎるし」

 と、空を見るようにして、晴明が晴勝に言った。


「俺の小学校の時の先生が、ダムから飛び降りたからなぁ。あ、あそこに先生が居る」

 と、晴清が言うと、


「成仏してなかったか」

 と、晴秋が手を合わせて言う。


「自殺は成仏出来ないからな」

 そう言って、晴勝も手を合わせる。


「とにかく、ここからやつの痕跡を探しましょう」

 晴市が言うと、


「残ってないけど?」

 と、安道が晴市を見て言う。


「ここに残ってなくても、道中にあるかも知れません。ずっと気配を消すのは、流石に無理かと」

 晴市は、安道を無視して晴明に向かって言った。


「では、徒歩で探っていきましょうか」

 晴明が言うと、


「こんなところに来るのは、車だろう?」

 晴清が意見を出す。


「いや、ハイキングに来る人が居るくらいだから、そうとも言い切れない」

 と言ったのは晴勝。


「死亡時刻は夜中だろ?」

 安道が、少し離れた場所に居た北岡署長に聞く。


「死後硬直からみて、そうだろうと、検死官が言ってたな」

 と、北岡署長が答えた。


「夜中に歩いて来るかね?」

 その答えから、安道が晴明に言う。


「となると、被害者は絡新婦を乗せて車で来たか、絡新婦の車で来たのかだな。車は絡新婦が乗っていったか。この付近の道路に防犯カメラは?」

 晴明が、北岡署長に聞くと、


「いくつかあるはずなので、署員に確認させますが、今日は人がフェスに応援に出ているので、時間がかかると思います」

 との答えに、


「とりあえず被害者の身元は分かってるんだし、自宅付近から追ってみては?」

 と、晴秋。


「そうしますか、被害者の自宅は?」

 晴明が尋ねると、


「財布に入っていた免許証によると、小栗栖ですね」

 北岡署長が答えた。


「伏見区か。私が行こう。三笠君、案内を」

 と、晴明が三笠に言う。


「はい、晴明様」

 と、頷いた三笠と晴明が、乗ってきた車に向かって歩き出す。


「では、我々は一応付近の捜索からといきますか」

 晴市の言葉に、


「だなぁ」

 と、安道が頷く。


「とりあえず宇治川沿いと、笠取方面、滋賀方面に行きますか?」

 晴勝が聞くと、


「滋賀まで広げるのか? 宇治田原くらいまででいいんじゃね?」

 と、安道が晴秋に聞く。


「ですね。滋賀まで行くことはないでしょう」

 と、晴秋も安道の案に賛成する。


「んじゃ、俺は一応歩きで宇治署くらいまで探ってみるわ」

 安道がそう言って、遊歩道の方に歩き出す。


「じゃあ、私と菊池さんもそうしましょうか」

 伏見がそう言い、


「はい」

 と、菊池が頷いた。


「では我々は車で、笠取と宇治田原方面に行くとしますか」

 晴秋が残った者の顔を見て言った。




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