菊池訪問
「なんじゃ、知っとるのか?」
坂井出が、晴臣に聞くと、
「話を聞いただけで、会ったことはありませんがね。力が有るのに宮仕えは嫌だと言って、魑魅魍魎の駆除はするけどそれは副業で、本職としては、自分でジュエリーのデザインから、販売の店まで経営してるそうですね」
と、晴臣が知ってる事を言うと、
「客として来る女性に憑いてるのを、駆除してるらしいわい」
と、坂井出が補足する。
「どんな娘なんです?」
「細くてショートカットの、可愛い子じゃ」
「へぇ」
「ただ、本当に変わっておっての。芸能事務所や、モデル事務所からスカウトされても、全部断っとるらしいわい。自分の世界観を持っていて、それ以外には興味無いらしい。なかなかのしっかり者じゃ」
「じゃダメでしょ。晴牙はちゃらんぽらんで、やる気のない男の典型だし」
「やる気さえ出してくれたらのう」
「仕事はこなしてるんですけど、人格が怠け者なのでね」
「あの広さを一人で処理しておるからの。あ、1人増えたから2人か」
「菊池さんですね。さっき会いましたが、素直で真面目そうな娘でしたね」
「うむ。良い娘じゃて。後で封印石を持って来る予定になっとる」
「晴牙と一緒に?」
「いや、1人のようじゃ」
「でしょうね」
「あの娘は、伏見のお嬢さんからも教えられとるから、良い退魔師になるじゃろ」
「そうなんですか?」
「なんじゃ? 聞いとらんのか?」
「初耳です」
「晴牙が絡新婦に集中しとる時に、面倒見たのが伏見のお嬢さんじゃ」
「ああ、その話ですか。ならば聞きましたね。なるほど、応援に出たのが伏見さんでしたか」
「あの絡新婦の件、別個体が居るかもと噂じゃが?」
「可能性があるというだけで、確証はありません」
「だが、安倍の本家や分家も、その方向で動いとるらしいぞ」
「それはそれで良いです。居るのなら駆除してもらわないといけないですしね」
「まあな。本家当主がかなりの式神を放って、捜索しておるようじゃ」
「今代の晴明殿の式神でも、探せる範囲は洛中が限界でしょう?」
「おそらくな。なのでその周りは分家が探しておる」
「南は晴牙が探してるだろうし、まだ見つからないって事は居ないのでは?」
「一旦、京を離れてる可能性もあるじゃろ?」
「蜘蛛は待ち伏せ型で、移動しないのでは?」
「前の話に戻るが、強力な妖怪は、通常行動パターンからは外れるらしい」
「もし居るならば、陰陽師だけでは倒せないと?」
「分からん! ワシは封印は出来ても、駆除が出来んからの」
「私は何も出来ませんけどね」
そう言って、晴臣が自虐的に笑う。
「その分は、事務処理や配置などで、陛下に仕えておろうが」
「陛下からも、労いの御言葉を頂きましたよ」
2人の話は、その後も続くのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ごめんくださーい」
菊池が、六道珍皇寺の居住区のインターホンを鳴らして、そう言う。
『ほいほい、どなたかな?』
と、坂井出の声がすると、
「菊池です」
と、菊池が名乗る。
『おお、もうそんな時間か。今開けるので持っておくれ』
「はい!」
と言った菊池だったが、玄関扉が開いて、出てきたのは坂井出ではなく晴臣だった。
「やあ、また会ったね。私は帰るから住職にしっかり封印してもらいなさい」
と、晴臣が菊池に声をかける。
「はい! お気をつけて安道次官」
と、菊池が晴臣に言うと、
「ああ、ありがとう」
そう言って、晴臣は帰って行く。
「ほい、菊池さんお待たせしたの。上がって上がって」
と、菊池に坂井出が声をかける。
「はい住職。よろしくお願いします」
菊池がそう言って靴を脱ぐ。
封印は滞りなく終わり、今、菊池は居間に座って、紅茶を飲んでいる。
「晴牙は、今日は何しとるんじゃ?」
と、坂井出が晴牙の事を聞くと、
「今日は休みとか、勝手な事言ってました」
と、菊池が答える。
「ならば晴臣の言ったとおり、墓参りかのぉ」
「安道さんの事、仕事以外はあまり知らないんです」
と、菊池が言うと、
「陰陽師の家は、だいたい秘密主義じゃからのう」
坂井出が、仕方ないさという感じで言った。




