複雑
年内はこれで最後の更新です。
その時菊池のスマホに着信音が。
「はい、菊池です」
スマホを取り出し菊池が言うと、
『菊池さん、今どこ? 安道も美琴も電話出ないのよ』
声の主は竹田だった。
「えっと、塔の島?ってところだとおもいます。2人は……なんか帰っちゃったんですけど?」
と、答える菊池。
『ええ? とりあえずそっち行くわね』
「あ、平等院の駐車場にも、二体の遺体が有ると、安道さんが言ってました」
『了解、そちらにも人をやるわ。菊池さんは塔の島で待ってて』
「はい」
その後、竹田が大勢の人を連れてやってきた。
菊池から説明を聞き、ため息1つ吐いてから、
「美琴のやつ、独り占めする気か。まあいいわ。そこの遺体を回収! あと安道のバイクもね! 薬莢も忘れずにね!」
と、テキパキと指示をしていく竹田。
「あの、竹田課長?」
と、菊池が竹田に問いかける。
「何?」
「安道さん、あんどうって言うんですか? あと、あの蛇みたいなのなんなんです?」
と、疑問をぶつけてみる。
「ああ、それね。詳しくは知らないけど、ヤスミチは仮の名前らしいのよ。蛇みたいなのは、私もよく知らないけど、安道の能力の1つよ。陰陽師は流派によって能力が違うらしいわ」
と、答えられた。
「なんだか解らないけど、凄かったです」
「凄いんだけど、使った後が問題なのよね」
「なんか人柄が、少し変わってたんですけど?」
「そうなのよ。丸一日変になって、その後、普段のように戻るんだけど、変になってる時の記憶が無いのよね。力の反動で酔ってるみたいなもんだって、前に安道が言ってたけどね」
「じゃあ私の事、名前で呼んだのは」
「多分覚えてないはずよ」
「伏見さんが、癒しに立候補って言ってたのは?」
「多分、今頃ラブホでしょうね。能力使った後の安道は、女性を求めるからね」
「なんか、最低ですね」
と、菊池が吐き捨てるように言うと、
「まあそうなんだけどさ。でも最高なのよ? 美琴がそうなるくらいにはね」
と、竹田が少し笑って言う。
「課長まで下ネタですか?」
「まあね。菊池さん助かったわね。美琴が居なかったら、今頃安道の家で骨抜きになってるところよ? 美琴に感謝しときなさい」
「私、女性にだらしない男の人は嫌いだから、大丈夫です!」
と、力強く言う菊池だが、
「嫌いとか、そういう理性を吹っ飛ばすんだけど、まあ、美琴が居たからかな? あの状態の安道は、胸の大きいほうを選ぶ傾向にあるから。とりあえず帰りましょう。後処理終わったみたいだし」
と、竹田が後処理をしていた人員が、片付けだしたのを見てそう言った。
「確かに伏見さんの胸は……大きいですけど……」
菊池が小さな声で呟いた。
2日後、安道が死霊課に姿を現す。
竹田が、
「現場に落ちてたスマホを解析したけど、安道が言ってたアカウントの持ち主では無かったわ」
と、安道に告げると、
「どういう事だ?」
と、安道が問いかける。
「男の被害者のスマホも解析してみたわ。すると、現場にはもう一台車が有ったはずなのよ。でもその車は無し」
「いや俺が駐車場に到着した時は、ワゴン車しか無かったがな? もしかして二体存在した?」
「その可能性が濃厚よ」
「そんな気配無かったがな」
「でも、その可能性があると思っておいて」
「了解した。ところで、さっきからお嬢ちゃんが、俺のことを親の仇のように睨んでるんだけど、俺何かしたか?」
と、竹田に尋ねる安道。
「どこまで覚えてる?」
「絡新婦を封印したとこまで」
「目が覚めたのは?」
「今朝、俺の自宅で」
「その時、部屋に誰か居た?」
「いや、俺1人だが?」
「じゃあ、特に問題無いかな?」
「じゃあ、なんであんなに睨まれてるの?」
「本人に聞きなさいよ」
竹田に言われて、安道が菊池を見て、
「お嬢ちゃん、俺何かしたか?」
と、問いかけると、
「何もされてません!」
「じゃあなんで、そんな怒ってんの?」
「別に怒ってません! どうせ伏見さんのほうが大きいですよーだ!」
と、顔を膨れさせる菊池。
「いったい何の話?」
「知りません!」
と、けんもほろろ。
「姉御?」
と、安道が竹田の顔を見るが、
「女心は複雑なのよ……」
竹田が、小さくそう言ったのだった。
転生兵士の書籍化作業もあるので、ここまでです。
来年またお会いしましょう。
本年はありがとうございました。良いお年をお迎えください。




