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子蜘蛛


『多少焦げても食えるであろ?』

 絡新婦の言葉と同時に、それぞれの子蜘蛛の口から火の玉が吐かれ、安道に向かって飛んでくる。


「チッ!」

 安道は舌打ちして、左手に水の力を纏い、飛んでくる火の玉を弾いて落とす。


 そして1匹の子蜘蛛目掛けて、右手に握るグロック17の引き金を絞り込む。

 動作音と小さな発射音。

 1匹の子蜘蛛が弾け飛んだ。


『貴様、よくも我が分身を!』

 そう言って走り寄る、本体とも言うべき絡新婦。


 絡新婦の長い脚が、安道を目掛けて振り下ろされる。

 それをかわしながら、安道は子蜘蛛を撃つべく狙いをつける。


 2匹目、3匹目と安道が銀の弾を撃ち込む。


 避ける子蜘蛛から飛んでくる火の玉。

 本体の脚だけでなく、子蜘蛛から放たれる火の玉も避けながら、安道が構える銃の銃口から放たれる銀の弾。


 動き回る対象に当てるのは、至難の技である。

 何発も外しながら、それでもなんとか撃ち殺していく。

 五匹目の子蜘蛛を撃ち殺した時、拳銃のスライドが後退した位置でストップする。

 弾切れである。


 予備の弾倉など持ってきていない。


「チッ」

 と、舌打ちして拳銃を懐に収納すると、ナイフを取り出し走り出す安道。


 吐かれる火の玉を紙一重でかわしつつ、子蜘蛛に向かって走り寄る。


 最後の一匹は、地面に居た。

 安道から距離をとる子蜘蛛を、必死に追いかけて足で踏み潰した時、目の前に迫る巨大な蜘蛛の脚。


「ヤバっ」

 と安道が言ったとき、強烈な衝撃が安道の腹部を襲った。


「グハッ」

 と、声を漏らして安道が吹っ飛ぶ。

 地面に叩きつけられ転がる安道に、絡新婦の脚が迫る。


 慌てて体を起こして、避ける安道。

 目の前に迫る脚を、ナイフで受ける。

 ガッという音がする。

 金属と生き物が当たった音では無い。


 絡新婦の外骨格の硬い脚の表面に、ナイフの刃が入らない。

 安道のナイフは1本。

 だが絡新婦の脚は8本。


 1本の脚を受け止めた次の瞬間には、2本目の脚が振り下ろされる。

 慌てて避けたが、安道の左腕を絡新婦の脚先が僅かに切り裂き、鮮血が飛ぶ。


『美味そうな匂いじゃ。大人しく喰われろ。一滴残らず啜ってやるぞよ?』

 絡新婦が、六つの目て安道を見つめて言う。


「化け物に吸われるとか、まっぴらゴメンだ」

 安道がそう言って、絡新婦から距離を少しとる。


『人の姿で吸ってやるぞよ?』

 絡新婦がそう言うと、化け物に変化した時の逆回転のように、みるみる小さくなり若い美女の姿になる。


 大きな胸に引き締まったウエスト、細く白い手足になど、一糸纏わぬその姿は、確かに情欲をそそるものであろう。


 絡新婦の本当の姿を見ていなければ。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。現代風ファンタジー(パラレルワールド的な?)で、ハードボイルドってのがなんかくる。 [気になる点] ハイペース更新はありがたいのですが、体調とか大丈夫ですか? また、石が・・・…
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