5コール
「! 見つけた! どこの子だ? えっと、この景色は宇治? 平等院か? しまった! 狩場を変えられてたか!」
安道はそう言って、手に持っていたスマホをタップする。
画面に出てる相手は、先程電話をかけてきた伏見。
だが、電話に伏見がなかなか出ない。
5コール目にようやく繋がる。
『何? 安道? どうしたの?』
と、伏見が聞いてくる。
「伏見ちゃん、キャッチした! 宇治の平等院の駐車場だ! 俺はすぐに向かうから、姉御に連絡して応援頼む! じゃあな!」
そう言って通話を切り、安道はヘルメットを被りバイクに跨がり走り出す。
宇治市にある、平等院の駐車場を目指して。
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慌てて走り逃げる男は、平等院の駐車場から宇治川の中洲にあたる、塔の島まで逃げて来ていた。
橋を1つ越えて、塔の島に渡りもう一つの大きな橋を渡れば、川の対岸に行ける。
だが、砂利の敷かれた塔の島を、暗い中で必死に走っていたため、足下の砂利に足を滑らせて倒れる。
慌てて起きあがろうとした男は、背中に、ズッシリとした重みを感じた。
「ひぃいいっ!」
と、たまらず声を上げた直後、右の首筋に激しい痛みを感じた。
「いってぇえっ!」
男は叫びながら、右首筋に右手を持っていくと、長い髪の毛を掴んだ。
「このアマ! 調子乗りやがって!」
女を引き離してから叫んだ男は、ズボンの右ポケットからナイフを取り出すと、
「ブッコロス」
と、ナイフを突き出してきた。
女はフワリとその場から飛び上がり、ナイフを避けると、長い髪の毛を揺らしながら、右手を男に向かって伸ばす。
すると、右腕がゴムのように伸びて男を捕まえると、さらに伸びてきた左腕を使い、雁字搦めにして男を捉えた。
なんと女の足は、数十センチ空中に浮いたままだ。
その場に響く骨を砕く音と、咀嚼する音。
男の喉仏のあたりが、かじり取られている。
女の口元に垂れる血液。
その時、オフロードバイクが、女目掛けて突っ込んできた。
そのバイクを、上方向に移動して避けた女。
着地した、オフロードバイク。
バイクに乗っていた人物が、ヘルメットを脱ぐ。
安道だ。
「やっと見つけたぜバケモンよ。俺の縄張りで好き勝手しやがって。大人しく俺に封印されやがれ!」
そう言った安道の言葉と同時に、右手でベストの内側から取り出したモノから、空気を切り裂くような音。
女性の腹の部分の服に、穴が開いた。
だが、女は立ったままだ。
「ぬ? 当たったろ?」
そう言った安道の右手には、サイレンサー付きのグロッグ17という、オートマティックハンドガンが握られていた。




