お前は序盤でやられる雑魚
あれからかれこれ十分。ゆすったりたたいたり声をかけたりしているが一向に起きる気配はない。
そんでもってこのイケメン…俺の家の前にいる「アメリカから来ました。ここはいい街ですね!」っていうだけのキャラだ。影薄すぎてアプデと共に消されたんだな。なむなむ。
てかこいつまっっっじで起きねえ!!!なんでだよ!
俺がイケメンを起こすのに四苦八苦しているとオオカミ集団がなにやらそわそわし始める。どうしたんだと後ろを振り向けば集団の頭であろうオオカミが口を開いた。
「ここは危険です。お連れ様は我々が運びますゆえひとまず我々の住居まで移動しましょう。」
なるほどここは従っておこう。
腰を上げた瞬間だった。前方の町がある方面から鋭い斬撃が飛んでくる。俺は間一髪避けることができたが、後ろにいたオオカミの何体かがまともに食らってしまったようで悲鳴を上げている。
やってきた冒険者らしき身なりの集団はそれはそれは嬉しそうにこちらに刃を向けた。
「今日はこんなにホワイトウルフが集まってんのか!いい金になりそうだなあ。ん?よくみたらガキもいるじゃねえか!こいつも奴隷商人とかに売りつけたらいい値段になりそうだぜ」
う、うわー!!!なにこの”悪役です”みたいな集団!正直引いた!こんなやつマジでいるんだ!ぴくしべに乗ってる夢小説かよ!!一時期俺が元居た世界のゲーム制作者のパソコンハッキングして読み漁ってたわー!
ってやべえやべえ。そんなこと言ってる場合じゃない。これはゲームじゃないんだから。だがここから逃げられるのか?自分は7歳の体で、引きずっているこいつは180越えの体格をしている。おまけにこのオオカミの集団だ。絶対に何匹かは捕まってしまう。機動力どうこうの問題じゃない。これは絶対に逃げられない。
相手を睨みながらイケメンを引きずって後退する。相手は怖くないよと言いながら手招きをしているがあいにく売られると分かっていながら捕まるほど馬鹿でもない。
どうするどうすると頭を悩ませるが解決策は見当たらない。そうこうしているうちに冒険者集団の一人がいら立ったように胸倉をつかみかかろうとしたその時。
「アメリカからきました。ここはいい街ですね」
すこしぎこちない日本語で定型文を話すそいつは瞬く間に俺をつかんでいた男を殴り飛ばした。
表情は全く動いていないのが怖い。
相手はまるで雑魚敵かってくらいうろたえて攻撃を仕掛けてくる。いまは避けられているが、相手はオオカミの大群を目の前にして金になると言うくらいの実力を持っているはずだ。どっちにしろこの現状を突破しなくてはならない。
「デバイス。そういってください。」
相変わらず変わらない表情でそいつがつぶやいた。おそらくこいつはまだゲーム世界にいたころの意思のないモブなんだろう。つまり今の発言は…
「神様の導きってやつ?ありがたいな。デバイス!」
イケメンの言葉に従い、叫ぶ。すると目の前にパソコンの画面が浮き上がった。