4話 下僕になってしまった・・・
「え?お前誰?」
「あんたはあたしの下僕でしょ!何で数秒前のことも覚えていないのよ!」
なんてことだ。さっきのネタキャラは男だと思ったのに。こんな美少女キャラが出現するなんて・・・。仮想世界では性別を変えることはできないため、俺の目の前にいる美少女は確実に現実では女性だ。BBAの可能性もあるのだが、BBAにはこんな美少女キャラを作成しようと思ってもシステムエラーになる。ひどいシステムだよな。イケメンキャラの作成に成功した俺はやはりイケメンなんだろうな。ふっ。
しかし、どうしたものだろうか。こんな美少女と話したことなんて一度もない。なんたって俺は小学生のころから引きこもり始めた筋金入りのニートだからな。職業ソードマンじゃなくてニートの方がふさわしいほどだな。とりあえず名前でも聞いてみるか。
「名前はなんていうんだ?」
「ふふん。よく聞いてくれたわね!あたしは魔王討伐に全力を注げているティアよ!」
魔王が潜んでいるマップというのはLv制限があるためそうそう簡単行けるものではない。このゲームのレベルキャップがどのくらか忘れたが、レベルキャップから10くらい下のレベルでようやくワープホールが出現するから相当な廃人だな。
俺と同じような筋金入りのニートか、ただ単に時間が有り余っているキッズだな。このガキっぽい行動からキッズなんだろうけどな。
「なんであたしの名前を聞いても驚かないのよ!」
なんで俺怒られたの?そんなに有名なプレイヤーなわけ?聞いたことないわ。
「俺は今日始めたばかりだからだよ」
「そういえばあんたよく見たら初心者装備ね。それなら覚えておきなさい。このゲームでLvランカーのティアよ!」
そんな風に自慢されてもな・・・。しかしランカーか。その点は驚いてやってもいい。俺もランカーになりたくて必死にオンラインゲームをしていたが決してなれなかった。
あいつらガチでおかしいからな。メンテナンス以外ずっとログインし続けている奴がいたり、会社でレベル上げしまくってるからな!
俺はニートだが8時間プレイするのが関の山。社畜って相当仕込まれてるんだな・・・。やはり俺はニートでいい!
「そんなランカー様がこの一初心者である俺に何の用だよ・・・」
本当に廃人という奴らは頭がおかしい。
「だから下僕になりなさいよ!」
「なってやっただろ。俺は普通にゲームプレイしたいんだよ。じゃあな」
「ま、待って!レアアイテムもお金もあげるから待ってよ!」
レアアイテム・・・お金・・・冒険を有利に進めるためには必要なものだ。これは立ち止らずにはいられない。
「しかたね~な~。何したらいいんだよ」
「こ、これ!」
ティアは手を急いでブンブンと振り回している。何やってんだ?
【ティアからフレンド登録が来ています承諾しますか? YES/NO】
あれ?俺下僕からフレンドに昇格してる。俺がイケメンだからか?やっぱりイケメンって得だよな。
「これどうしたらいいんだよ」
「YESを押せばいいのよ!」
あたふたと心配そうに見ている。そんなに下僕が欲しいのか?フレンド登録って確かチャットが取りやすくなるとかそんな感じだったから罠みたいなことはない。さっさと登録してレアアイテムでももらうか。
YESっと。
「ほらよしてやったぞ。さあレアアイテムと金をよこせ」
「嘘に決まってるでしょ!」
は?マジでキッズってこうもうざいんだろうか。
「そうかそうかじゃあな」
そんな簡単にレアアイテムと金をくれてやる奴がランカーなわけないからな。
スルーしてゲームを始めようと思ったのだがティアが悲しそうな声で言った。
「あ、あんたも行っちゃうの・・・?」
ズキュン!俺のハートが撃ち抜かれました。
こんな美少女の涙を見せられたらイケメンの名が廃る。
「冗談だよ。なんでそんなに下僕が欲しいんだよ」
ティアはパァァっと明るくなった。
「げ、下僕というより一緒に遊んでくれる人が欲しいのよ!」
もじもじと恥ずかしくなって願望を言い切った。
あ~。こいつもしかしてこんな性格だから友達いないんだろうな・・・・・・。かわいそうに・・・・。俺ですら小学生の頃には友達がいたというのに不憫な奴・・・・。かわいそうだから少し遊んでやるか。
「なら一緒に遊んでやるよ。何してほしいんだ?」
たとえこんなかわいそうなやつでもランカーならば、相当レアアイテムと金を貯めこんでいるはずだ。仲良くなってうまいことゲットできるように誘い込むか。
俺が初めてプレイしたオンラインゲームは道行くプレイヤーにトレード申請しまくって断られても何か貰うまで追いかけまくってたなぁ~。最終的に掲示板で晒されて垢BANされたのが懐かしい。
「魔王討伐に行きたいところだけど初心者だものね。仕方ないからそれまで待っていてあげるわ!」
「わかった。なら。ほい。」
俺は手をティアの前に差し出す。ティアは何をしたいのかわからず首を傾げている。
「おいおい。俺は初心者なんだぞ。それならレアアイテムと金くれよ。フレンド登録解除するぞ!」
「ごっごめん!は、はい!」
【ティアからトレード申請が来ています承諾しますか? YES/NO】
俺はYESを選択。
ティアはせっせと手を動かしてアイテム選択でもしてるんだろうな。
【10000000MILを獲得しました】
うえええぇぇぇえええいいいいいいいいいいいいいいい!!!
やっぱり経験者から初心者に施しを与えるのは当然だよなぁ!?限りあるレアアイテムだったりレアモンスターを根こそぎ奪ってるんだからな!
「これでいいでしょ!だからフレンド解除しないで!」
「ご苦労ご苦労。じゃあ俺がランカーになるまで待っててくれ」
「うん!ばいばい!」
キッズを騙すのは簡単だな。俺はこれで初心者にも関わらずレアアイテムを買いあさることができるわけだ。後でフレンド解除でもしとくか。
さてと、冒険者の町では何したらいいんだ。さっきのキッズに聞いておくべきだったな。だが俺のゲーマーとしての血が騒ぐあのビル並みに大きい石造の建物に行くべきだ。ギルド的なものに違いない。ワープホールに入ってと。
【新規登録ボーナス! 10000MILを獲得しました】
ほらな。俺の言った通りだろ。話が進んだ。そこにNPCっぽいやつがいるから話しかけてみるか。
「ちょい、そこのNPC」
「何でしょうか冒険者様?」
NPCで通じちゃうのか・・・。そこは世界観保つために無視しようぜ・・・・・・。
「ここでは何ができるんだ?」
「ここはクランメンバーの募集やクラン登録が出来ます。またクランルームの貸し出しも行っています」
クランというとギルド的な奴だ。俺は前にプレイしていたオンラインゲームではギルドメンバー50人を従えるギルドマスターだったからな。何かをしようものなら常に1番を狙わなければならない。誰かの下につこうものなら俺のプライドが許さない。だからここには用は無いな。
「そうか。今の初心者装備から脱却したいんだがどうしたらいい?」
「武器品店には様々な武器が売られております。また、オークションの場合他の冒険者様が出品なされた武器が安く手に入る可能性があるためそちらがおすすめです」
オークションか!このシステムが採用されているのはかなりいい。例えレアアイテムを入手しても買い手が見つからなければ宝の持ち腐れだからな。NPCに売っても超安く買い取られてしまう。
「オークションはどこでできるんだ?」
「町の中のにいる場合コマンドから選択可能です。十分なMILを所持していた場合入札することができ、即決だとすぐに手に入ることができます」
有益な情報を提供してくれたこのNPCに感謝だ。
早速俺はコマンドからオークションを選択だ。