2話 ニートでも主人公になりたい
『仮想世界へようこそ!早速チュートリアルを始めますか? YES/NO』
なんか萌え声のアナウンスが響いたな。可愛い。
チュートリアルぶっ飛ばす奴に聞きたいが、なぜ飛ばすんだ?
ゲームプログラマーの人が精一杯頑張ってわかりやすく作ってくれたチュートリアルだぞ。
そんな奴はゲームをプレイする資格もない。今すぐやめろ。
だから俺は迷わずYESだ。
『ありがとうございます。それではこのワープホールに入ってください』
うおっ!?急に目の前にワープホールが現れるもんだからビビったわ。ゲームプログラマー死ね。
ここで止まっててもゲームが進まないし入るか。
目の前が暗くなってアスレチック公園のような場所にワープした。
「やあ!新しい冒険者よ!チュートリアルを始めようか!」
なにこいつ。いきなり上から目線の発言とか調子乗ってんな。
見た目は黒のスーツを着ているサラリーマン風のNPC。
「そこにはしごがあるだろう。昇ってみてくれたまえ!」
あ~、これ操作説明的な奴か。でも俺その点は熟知しているから大丈夫なんだよな。なんたって被験者だったし。つうかどんだけ上から目線だよ。ガチうぜえ。
「何をしているんだい?昇ってみたま・・・ぶぇっ!!」
なんかうざいから殴ってみたらぶっ飛んでしまったわ。え?なにこれ。すり抜けてノーダメージかと思ったけど当たっちゃうの?ストレス解消にぴったりじゃん。
仕方ないからもう少し殴っちゃおうか(ゲス顔)
「何を・・・ぶぇっ!しているん・・・・ぶぇっ!・・・だい?昇って・・・ぶぇっ!・・・みたま・・・ぶぇっ!」
こいつ定型文しか話せない低級NPCか。それなのに俺に偉そうな口ききやがって!
「おらっ!おらおら!」
この殴りつける感覚堪らねえな。ゲームプログラマーの遊び心に感謝だ。飽きたから進むか。
「チュートリアル終了後苦労さま!この赤色のポーションと青色のポーションをあげるよ。赤色のポーションはHPを回復、青色のポーションはMPを回復する。大事に使ってくれ・・・ぶぇっ!!!」
次の言葉が予想がついたから殴ってみた。ポーションか。何のひねりもないな。
「このワープホールは始まりの村に繋がっていて、指導官クリスがいるからわからないことがあれば彼女に聞くといい。それじゃあまた・・・ぶぇ!!!」
命令口調ではなかったけどお前のチュートリアルに付き合ってやったんだ。最後に殴らせろ。あ、もう殴ってたわ。ごめんな(笑)。
「じゃあなクソNPC」
俺は捨て台詞を吐いてワープホールに入った。
ええと?始まりの村か。
「新しい冒険者ね!私は指導員のクリスよ。何か聞きたいことがあったら何でも答えてあげるわ」
す、すげえ。巨乳すぎんだろ。Hカップ以上は確実にある。俺の鼻の下が確実に伸びてるな。
「そ、その胸は何カップでしょうか・・・?」
やべ思わず聞いてしまった。答えてくれるか?
「女の人にそんなことを聞いてはダメよ」
ですよね~。仕方がないから真面目に聞くか。
「俺は何をしたらいいんですか?」
「あなたは初心者冒険者よ。クエストを引き受けるのが主なことになるわ。熟練の冒険者は魔王を倒すことが最終目的だけど、まだまだ先の話。あなたはまずは装備を整えるべきね。これをあげるから着てみなさい」
【初心者の上衣 初心者の下衣 初心者の帽子を獲得しました】
まずは装備が無いと始まらないよな。このゲームの最終目的はグランドクエストである魔王討伐。かなりの高レベルでないとマップに入ることもできないらしい。クリスが言う通りまだまだ先だろうな。
そういえば今のステータスはどうなってるんだ?見てみるか。
「ステータス開示!」
はいおなじみのステータス開示。どのゲームでも共通の合言葉だからな。
ええと。
職業? Lv.1
【HP】10/10
【MP】10/10
【筋力値】1(+0)
【敏捷値】1(+0)
【幸運値】1(+0)
【魔力値】1(+0)
【攻撃力】10
【防御力】10
【回避率】0
【命中率】10
【称号】無し
【装備武器】無し
【装備アイテム】無し
まさに初期キャラクターの値だな。職業が?なのはまだNPCに沿って話が進んでいるからだ。初期装備を着たら職業選択に進むらしい。着るか。
職業? Lv.1
【HP】10/100
【MP】10/100
【筋力値】6(+5)
【敏捷値】6(+5)
【幸運値】6(+5)
【魔力値】6(+5)
【攻撃力】10
【防御力】12
【回避率】0
【命中率】10
【称号】無し
【装備武器】無し
【装備アイテム】初心者の上衣 初心者の下衣 初心者の帽子
このゲームはHPとかMPは既存の状態から変化しないのか。そりゃそうだよな。装備替えたらHP回復するとかバグだし。筋力値のかっこにある値は装備アイテムで増えたステータス値らしい。防御力が増えたのは装備を着たからだな。
「装備したようね。あなたは初心者冒険者だから職業を選択しなくてはならないわ」
【ソードマン/シールダー/アーチャー/ソーサラー 選択すると各職業について説明します】
こういったときは迷ってしまうものだが俺は勇者的役割のソードマンに決まっている。勇者以外の仲間なんて所詮モブ。主人公はソードマンと相場が決まっているんだ。
【ソードマン 味方の・・・】
説明文が流れる前にソードマンを選択してやった。俺の意志は強固なんだよ!
「おめでとう。あなたはソードマンになったわ。これあげるから武器として使うといいわ」
【初心者の剣を獲得しました】
ここまで初心者かよ。徹底されているな。他の職業を選んでも初心者の~とかいう武器なんだろうな。
これも装備しないと話が進まないからな。
職業ソードマン Lv.1
【HP】10/100
【MP】10/100
【筋力値】6(+5)
【敏捷値】6(+5)
【幸運値】6(+5)
【魔力値】6(+5)
【攻撃力】12
【防御力】12
【回避率】0
【命中率】10
【称号】無し
【装備武器】初心者の剣
【装備アイテム】初心者の上衣 初心者の下衣 初心者の帽子
攻撃力が2上がっただけかよ。もうちょっとサービスしてくれてもいいんじゃないか?
「装備したようね。初心者冒険者はまずはクエストを受けることになっているわ。私からのクエストを受けて頂戴」
【初心者冒険者用クエスト スライムを5匹討伐 詳細】
「詳しくはその詳細を見て頂戴」
めんどくせえ。まとめて表示しろや無能。クリスのせいでないんだけどな。詳細っと。
【始まりの森でスライムを5匹討伐後、指導官クリスに報告する。
報酬 EXP100 MIL100 クランポイント0 アイテム無し 】
これもまたごく普通。MILというのはこのゲームでの通貨の単位でショップでポーション類を買える。当然だな。クランポイントというのはクランに所属していた場合貢献度を表すもので、クランからステータスアップなどの恩恵が受けられる。このクエストは強制なので断ることができない。
「クエストを受けたわね。このワープホールは始まりの森に繋がっているわ。準備を整えたら移動してちょうだい」
準備も何も強制的にワープホールへ移動させられた。ふざけんな。ポーション少なすぎんだろ。