1.
いろいろ設定は緩いですが、生暖かい目で見ていただけるとありがたいです。
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「すまないが、道に迷ってしまったようだ」
ここはどこだろうか――。
そう問いかける目の前の男の人は、少し汚れてはいるが見るからに上質な布地で作られた簡素な服を着て、腰にはロングソードを下げている、いかにも冒険者さん、といった風情だった。
「……え~っと……はい?」
問われた私は少しの間呆け、結局間抜けな言葉を発することしかできなかった。
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「それにしてもお兄さん、よくこの村に来れましたね~」
あの後、ギルド発行の身分証を提示してくれたお兄さん、改めギルバート・フロードさんをとりあえず信用した私は、詳しい話を聞くために彼を自分の家に連れて来た。
彼は頑なに遠慮したが、そこを私が無理矢理引っ張ってきたのだ。
おそらくだが、この人はいい人だと思う。
私のなけなしの直感がそう告げていた。
用意したお茶とお茶菓子を出し、フロードさんの目の前に座る。
彼は礼を言い、湯呑みを手に取って一口飲んだ。
「この村、山奥にあるし舗装された道もないから、知らない人が普通に歩いたところで絶対にたどり着かないんですよ。そもそも、地図にも載ってないんじゃないかな?」
「そうなのか?気付いたら村の入口にいたんだが……正直、どこをどう歩いてきたのか、皆目見当もつかないんだ」
こういうことはよくあると仰るフロードさん。
初めて訪れる町では、片道数十分の宿屋に着くのに町を一周してたり、道なりに歩いているはずなのに目的の村の隣の村に着いてたり。
もしかして――。
「フロードさん……方向音痴……ですか?」
湯呑みを傾けていた動きが止まり、静かにそれをテーブルに戻すと、彼は気まずそうに俯き、それはそれは小さな声で弱々しく否定した。
――図星か……
私は自分のお茶をすすりながら、こっそりと溜め息を吐いた。
ああ、面倒なことになった――。
*
「私でよければ、一番近い町までご案内しますよ」
――この人を一人で外に出してはいけない。
そう強く感じた私は、道案内を買って出た。
本音はとてつもなく面倒臭い。
だが、ここで放り出して何かあったら、それもそれでとてつもなく寝覚めが悪い。
自分の精神衛生上、少しでもマシな方を選ぶことにした。
「それはとても助かる、ありがとう」
丁寧に頭を下げるフロードさん。
「ところで、君のご両親に挨拶をしたいのだが、お戻りはいつになるだろうか。お茶をご馳走になった上に娘さんをお借りするのに、お礼を言いたいんだが」
「ああ、そんなの別に構いませんよ」
「いや、そういうわけには……」
「本当に大丈夫です。両親はもういないので」
私がそういうと、フロードさんは一瞬詰まり、すぐに申し訳なさそうな表情になった。
「……無神経なことを言ってすまない……」
「いえ、気になさらないでください。面倒で家の中を片していない私も悪いですから」
そう、私は家の中を片付けていない。
椅子も食器も傘も全てのものが両親が生きていた頃のままなので、フロードさんが勘違いするのも仕方のないことだと思う。
でも、今さら片付けようとは思わない。
この家は、私が死ぬまでこのままだろう。
「君はこの家に一人で住んでいるのか?他に親戚は?というか、村に他の人の気配がないんだが、どこかへ出掛けているのか?」
「親戚も他の人もいないんですよ~。というか、今この村に住んでるのは私だけなんです」
「……は?今、何て……?」
「ですから、今この村に住んでるのは、私だけ、なんです」




