表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

心は重なり、昔は今も


 「犬がしゃべった~~~」


 美穂ちゃんが驚いてる、私達と同じ様に驚いてる姿を見て、少し前の事ではあるけど懐かしい。


「心、ベェルが喋ってるわよ、一体いつから喋る犬になったのよ」


 合流してから美穂ちゃんは私達の事を昔みたいにここ優希ゆきと呼ぶようになった。

 私達も何も言わないでそのまま受け入れている。

 合流した時に二人でごめんねって謝ったら別に私も悪かったんだからいいわよって言われた。

 特に何も説明してないのに伝わったみたいだった。

 その後、私達と同じ様にベェルが現れて美穂ちゃんに話かけたのが丁度今になる。


「ベェルは最近悪の秘密結社に攫われてコオロギと犬の改造犬にされてね。

その秘密結社と戦う為に今戦士を集めているんだ!」


 私がそう言うと美穂ちゃんが怒った。



「なんですって、ベェルがそんな事になっていたなんて、だから私を呼んだのね

羽衣伝説なんて言わずにそう言ってくれればよかったのに。

さすがの私もベェルが話す姿を見れば信じるわ、その悪の秘密結社というのは何処にいるのよ。

この極悪非道の行為は許せない!」


 おお、嘘にしか見えない嘘に見事騙されてる、流石は美穂ちゃん

からかいがいが十分だ。


「そうなの、動物虐待をする非道な奴らなのよ

美穂ちゃんもベェルの為に立ち上がってくれるよね!」


「当然よ、優希、貴方はなんでそんなに冷静でいられるのよ

ベェルがこんな事になってるっていうのに」


 美穂ちゃんが優希ちゃんに熱弁を奮っている


 優希ちゃんは美穂ちゃんと言って後ろで笑いを堪えている私を指差した。


 それを見た美穂ちゃんが気づいたらしい。


「こんな時にそんな冗談を言うのはこの口か」


 そう言って私の頬を左右に引っ張った。


「ひはいひはい、はるっはっはからゆるひへ」(痛い痛い、悪かったから許して)


「ごめんですんだら地獄の鬼はいらないの」


 そう言って力の限り私の頬を引っ張り続けた。



「もうボクが話しても大丈夫かな?」


 ベェルが私達のやり取りを見ていて一息ついたのを見計らって話し出した。

私の頬はもう二度と戻らないと思われる位真っ赤に膨れ上がっていた。

美穂ちゃんの顔は鬼の顔から何とか元に戻っていた。



「久しぶりだね、美穂 そして初めまして美穂

ボクの事はベェルって呼んでくれ」


「ひ、久しぶりね ベェル、二年ぶりくらいかな

初めましてではないわよ、私の事忘れちゃったのかしら」


 美穂ちゃんがそう言うと、ベェルは首を振った。



「今の美穂と会うのは今日が初めてなんだ、美穂よく思い出して欲しい

美穂の記憶にあるボクは本当にボクだった?」


 ベェルにそう言われて昔の記憶を美穂ちゃんが遡っている。

ベェルはベェルでしょ?と言いながら考えていると眉を潜めた。



「ベェルが昔からいるのを知ってるのに記憶が無い?」


「だよね、今のボクは心を知っている人にセットでいたように思われる様になっているんだよ」


 美穂ちゃんが ? な顔をしている。



「ボクはつい一週間前に畑野家にいるようになってね、住みやすい様に特殊な力を使っているとでも思ってくれればいいよ」


「そうなの? まあ、本人がそう言うならそう言う事なのね。

犬が喋る位だからそれ位できて当然よね」


 混乱はしているようだが無理矢理納得したみたいだ。



「それで、ベェルは一体何者なの? それにここは何処なの?」


「ベェルはね、余呉湖の羽衣伝説に出てくる白い犬なんだよ、わかる?」


「ああ、あの男の片棒を担ぐ泥棒犬ですか?」


 なんと、美穂ちゃんは知っているのか!? 寧ろ知らなかったのは私だけ!?

私が狼狽しているのを見て優希ちゃんが代わりに話を進めてくれた。


「美穂ちゃんよく知ってるね、三保の松原の羽衣伝説以外にも調べたの?」


「当然よ、というか三保の松原伝説は正直な所昔話的な要素が強いのよ

だから羽衣伝説を調べるんであれば近江国風土記おうみのくにふどき丹後国風土記たんごのくにふどきに行き着くなんて当然なのよ

三保の松原の羽衣伝説のこういった詳しい資料を私は知らないけど、現地に言ったら石碑と松の木があったわ

残念な事に本物の松の木は昔に焼けてしまってるのだけど

そういえば余呉湖の羽衣伝説は近江国風土記おうみのくにふどき以外にも何個かあるけど、その内の一つはココと同じ名前だったような」


 狼狽している私に会心の一撃を美穂ちゃんが繰り出した。

事実とは違うと言えどそれこそ本物の黒歴史、そんな所まで調べてなくてもいいのに。



「他人よ、そんな人はいなかったのよ!

美穂ちゃんはまだ本物の羽衣伝説を知らないのね!

ベェル教えてあげて!」



 ここは私が説明するよりはベェルが説明したほうが信頼性が高いからまかせるわ。

私が説明すると説明になる気がしないもん。


「んー、何故かこころが言うと信憑性がかけて聞こえるからボクが説明するよ」


 そう言って私達にしてくれた説明を美穂ちゃんにも説明した。



「それは本当なの?」


 流石の美穂ちゃんも喋る犬のベェルから言われて驚愕している。



「嘘は言わないよ、他にも聞きたい事があればボクに知ってる事なら答えるよ」


「それであれば三保の松原の羽衣伝説を教えてほしいんだけど」


 ベェルは頷いた。



「三保の松原に一般的に伝わってる羽衣伝説は

漁師が松の木に掛かっていた羽衣を見事な羽衣だと思い拾った、

天女がそれは私の物だから返してくれと願った、男はその見事な羽衣を国宝にしようと思っていた為に返さないと言った、しかし貴方が本当に天女であるならば返そうと、だから本物というならば天の舞いを舞う事交換条件として出した、天女は条件通り天の舞いを舞い、男も約束道理羽衣を返して天女は天に帰った。

という内容で合ってるかな?」


 美穂ちゃんは、ええ、大体そんな感じの話で間違いないわと答えた。



「まずは漁師という所だね、漁師ではあったんだけどその時代の有名な武人とででもいえばいいのかな

武人が漁師をやっていたのか、漁師が武人をやっていたのかはともかくそういう人だったと言う事。

だからもし羽衣が手に入ったら国の宝にしようとかいう話があったんだと思う。

次に舞いを舞ったらという所だけど、男が木に掛かってる羽衣を見ていた時に天女が男に言ったのさ

その羽衣が欲しければ私に勝てば差し上げると、天女はその男が強い人だと言う事を知っていたんだ」


 結構好戦的な天女でしょとベェルは笑いそして話を続けた。


「男は最初天女といえど女性と戦う事は出来ないといったんだ、天女は勘違いしてしまって男が女に負けないという意味で聞こえたみたいなんだ、だったら私に勝てば私は貴方の物になろうと言ったらしいよ

男もそこまで言われたら引くに引けなくなったみたいでね。

実際に戦うとその男はとても強くて、天女もとても強い天女だったとはいえ羽衣の力を使わないで戦ったからね、いい勝負ではあったけど男が天女の一瞬の隙を突いて勝利を手中に得たらしいんだ。

だけど男はその勝利を手放してしまい、その隙をつかれて天女に負けてしまったんだ。

天女が何故手を抜いたと怒ったらしいんだけど、男は天女の戦う姿をみてまるで天の舞いを見ている様でとても美しく惚れてしまった、そんな女性を傷つける事は自分にはできなかったと正直に言ったんだ。

天女も最後に手を抜かれた事に怒っていたけど、それを聞いて納得したらしい。

しかも天女は男に私の勝ちだけど、羽衣は貴方に差し上げると言って羽衣を渡したんだ

だけど男は約束は約束だから羽衣は受け取れないと言って天女に返したみたいなんだ

男は羽衣を渡すという行為がどういう物なのか知らなかったみたいで、のちのちに知った時はそれは驚いたらしいよ」


 美穂ちゃんも先程の羽衣を渡すという行為がどう言う事なのか聞いていたので複雑な表情をしていた。



「それでね、まだ続きがあるんだ。

天女はその後も地上に降りてきては男と戦ったんだ、お互いにお互いを認め合ったんだろうね

それで天女の戦う姿を見た人も幾人かいたんだろう

天女の戦う姿が舞に見えて舞も一緒に伝説の一部になったんだと思う」



「それ本当の話なの?」


「そうだね、一応ボクの知ってる真実さ 信じる信じないは美穂次第だけどね」



 美穂ちゃんがその話を聞いて体が震えている、やはり真実という物をしってショックを受けているんだろうか、私は真実を聞いた時は嬉しかったけどそれは人それぞれだもんね。

 美穂ちゃん、そんなに落ち込まないででと肩に手をやった。



「別に落ち込んでなんていませんけど? どうしかした?」


 何も無かったかの様に返された、寧ろ何やら感動している様にみえる。



「伝説よりも素晴らしい話じゃない、私だってそんな恋愛してみたい

それにそこまで美しい戦いの舞を踊る天女が前世の私なんて凄い」


 おお、良い意味でショックを受けていたのか

そんな勢いの美穂ちゃんを見た優希ちゃんもちょっと引いてる。



「私の名前の美穂は三保の松原の天女様をあやかって付けられてるんだから喜ぶに決まってるでしょ」


「へ~、そうなんだ」


 私がそう言うと美穂ちゃんは私の目の前まで来て何度も言ってるのにそれすら覚えてなかったの?!

と怒っている、優希ちゃんに知ってた?と聞いたけど優希ちゃんも知らなかったらしい、

そもそも知っていたら学校であんな話してないよね。



「私の名前は女神様から取ったと何度も言ってたでしょう?」


「あ~、そういえば昔いってたね、女神様って天女様の事だったんね」


 優希ちゃんが気づいたらしい。



「そうだよ!今まで気づいてなかったの?」


「流石にそれだけだとわからないよ、女神様を肖っただけじゃ情報が足らなさすぎるよ」


 私がそう言うと、一旦考えて、確かにそうかもしれないわね と言った。



「まあ、いいか、所で私も羽衣を持ってると言う事なら是非見てみたい。

どうすればいいの?」


 美穂ちゃんがそう言うとベェルは手を前に出してと言った。


 これでいいの? そう言って手を前に出した。


 コレはアレだ、そう思うとつい顔に出てしまったみたいで美穂ちゃんからどうかしたの?っと聞かれた。



 カプッ


 え?と言った美穂ちゃんが手を見るとベェルに噛まれていた。



「痛っ、、、くない?」


 そう言って私達の方を見た。



「噛まれる事を知ってたなら教えなさいよ!

びっくりしたじゃない!」


 私達に向かって叫んだ、そして私達は美穂ちゃんに服、服と言って教えてあげた。

それに気付いた美穂ちゃんが自分の姿を見て驚いた。



「こ、これが羽衣?」


 美穂ちゃんもワンピースを着ていた為私達と似たような羽衣を纏っていた。


 私達が初めて羽衣を纏った時にワンピースを着ていたからか、動きやすいズボンを履いていても最初に羽衣を纏った姿になる、これはもうこういう物なのかな?


美穂ちゃんがまじまじと自分が纏ってる羽衣とその変換された服を見ている



「心と優希の羽衣もこんな感じなの?

もし良かったら見せてくれない?」


 他の人の姿がどうなっているのか気になる気持ちは確かにわかる、私の時は優希ちゃんと一緒だったし、落ち着いたら2人で見せ合いっこしたしね

そんなわけで私達も羽衣を纏う事にした。


「やるわよ、優希ちゃん」


「え?やるの?今は普通に纏ったらいいんじゃないかな?」


「だめだよ、こういうのは最初が肝心なんだから」


「そ、そうかな?」


「いいからやるの!」


 私と優希ちゃんのやり取りに不思議な顔をしながら見ている美穂ちゃんを前に私達は羽衣を召喚した。




 ローブ オブ ア セレスタル バディ


 サーモニング


 アルティメットガールズ 見参



 きまった!

私達がポーズを取っている姿をみて美穂ちゃんがポカーンとしている。



「ココちゃん、やっぱりやめようよ

美穂ちゃんもあきれてるよ、それにちょっとだけ恥ずかしいよ〜」


 そう小さな声で言ってきた。


「え?かっこいいでしょ?頑張って考えたんだから!」


 私も小さな声で返した。


「だって美穂ちゃんもポカーンってしてるよ、きっと一緒にやってくれないからやめといた方がいいよ

もしかしたら一緒にやるくらいなら一緒に戦わないって言われるかも」



「そんな事ないよ、美穂ちゃんは感動して声が出ないだけだよ、

なんだったら、美穂ちゃんに聞いて多数決できめる?

私は全然いいわよ?」


「そうだね、3人いるんだからそうしよう」


 何故か安心した顔をしている優希ちゃんだった。



「心、優希今のは何?」


 優希ちゃんが小声で、ココちゃん美穂ちゃん怒ってるよ、と言ってくる。

確かに有無を言わせぬ迫力がある



「変身のポーズよ!かっこいいでしょ!」


 私がそう言うと美穂ちゃんは鼻で笑った。



「全然駄目ね」


 優希ちゃんが嬉しそうに、ね、もうやめようと小声で言ってきた。

むう、カッコイイのに駄目なのか



「一体何が駄目なの?私はカッコイイと思うよ」


 私がそう言うと美穂ちゃんが私達に指を差して言った。



「まあ、二人にはまだ舞という物を理解するには経験が無いからしょうがないとしましょう

ただ、ポーズを決めるまでの動作が各所に置いて完璧じゃありません

一つ一つの動作を完璧に行う事でカッコイイポーズに繋がるの、それは指先までしっかりと伸ばしているか、目線は何処を向いているか、そう言う行動が出来てこそカッコイイポーズになるのよ。

それに芸が未熟ならせめてやる気を全面にだして気迫でカバーするなんて常識、ちなみにこれは優希に言ってるのよ」


 おお、的確なアドバイスだ、次から注意してみよう。

私がそう思うと、優希ちゃんが横で手を床に付きながらブツブツなにか言ってる。



「二人のセンスが絶望的だったのを忘れてた、ココちゃんの両親はセンス良いのになんでココちゃんはこんな風になってしまったんだろう、確かお祖父さんと叔父さんが致命的にセンスが無いって言ってた様な気がするけどそのせいなのかな

美穂ちゃんも着ている物とか身に付けてる物はまともなのにこういうセンスはココちゃんと同じだったの忘れてたよ、もうどうしようもない」


 私は美穂ちゃんと後で修正箇所の打ち合わせをする事にした。



「とりあえず3人の冗談に付き合ってると時間がいくらあっても足らないからね

美穂に現状の説明をしておくよ」


 ベェルはそう言って現状私達が何をやっているか、何をやらなければいけないかを説明してくれた。

でも私達は冗談なんて何も言ってないけど?



「わかりました、私も今後こちらで特訓します!」


 現状をしって心よく引き受けてくれた、流石美穂ちゃん話せばわかる!



「美穂ちゃんお稽古は大丈夫? 私達と曜日が違うから特訓する時も一人の時間が多くなっちゃいそうだけど」


 優希ちゃんが言った、確かにその通りだその原因もあり私達は少し距離が出来てしまったのだから



「大丈夫よ、私もお稽古が月、水、金に変わったから

夏休みを全部使ってお婆ちゃんの家に行って猛特訓をしてやっと次の段階に進む許可を貰ったの

だから問題ないわよ、御陰で宿題とか大変だったんだから」


 どう、すごいでしょと言わんばかりに美穂ちゃんが言った。

私は美穂ちゃんに抱きついた。

きゃっって驚いた。


「美穂ちゃんすごーい、これでまた昔みたいに一緒に遊べるね!」


 優希ちゃんも美穂ちゃんやったね!と言うと何故か胸を張って発言した美穂ちゃんが恥ずかしそうに。



「ありがと」


 そう言ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ