出会い、そして始まり
「ココちゃーん、おまたせ~」
そういって優希ちゃんが自転車で私の家にやってきた。
彼女が 橋本優希 幼馴染で昔からずっと一緒にいて、いつも私を助けてくれる一番の親友だ。
あの後2泊してから家に帰ってきたの、曾祖母と別れるのはちょっと寂しかったけど貰った巻物を調べる楽しみがあったから我慢したわ。
「優希ちゃん、これよ! これが例の巻物なのよ!」
そう言って曾祖母から貰った巻物を優希ちゃんに見せた。
「おお~、すご~い、本物だね、私本物の巻物なんて初めて見たよ」
よかった、私だけテンション高かったら嫌だったけど優希ちゃんもテンションも高かった
さすが親友よ。
「でしょ! 凄いよね! でも何て書いてあるかわからないのよ」
そう言って私は巻物を開いた。
「ん~、私にもわからないや、中学校か高校で習うのかな?」
「え?嫌よ、そんなに私まてないわ」
優希ちゃんがそう言うと私は即座に反論した。
「それにこれを解読して、自由研究として学校に提出するんだからタイムリミットは後一週間なの
優希ちゃん、私と一緒にこの巻物を翻訳して」
そうして私は手を併せて一生のお願いポーズをした。
私の一生は何回あるんだろうか。
「うん、いいよ、私もココちゃんに言われてから何故だかすごい興味が湧いてね
少しはココちゃんの曾祖母の地域の伝説を調べてきたんだよ」
お~、持つべき物は親友だよ、ってもしかして。
「優希ちゃん、もしかして羽衣伝説も調べたの?」
「うん、インターネットを検索する位しかできなかったけどね
知らなかったんだけど、羽衣伝説って世の中何個もあるんだね、話が少しずつ違ってたからどれか本当なのかな?
とりあえず、ココちゃんの曾祖母の家がある余呉湖の羽衣伝説もちゃんと調べてきたよ」
きゃー、優希ちゃんがあの事を知ってしまったら弁解しておかないと。
「あの男は私の御先祖様じゃないのよ!私の身は潔白なのよ」
そう言うと、優希ちゃんは ? な顔をしてから思い至った様だ。
「あー、ココちゃんと名前が一緒なんだよね、最初びっくりしちゃった
ココちゃんの御先祖様なのかと思ったけど違うの?」
「ちがーう、全然ちがーう、私はご先祖様の事は知らないけど、あんな極悪非道な御先祖様じゃないわ
ちゃんと曾祖母に確認したもの」
優希ちゃんは何故か残念そうだった。
「そうなんだ、違うのか~、ちょっと残念だね
日本昔話に御先祖様が出てくるなんて凄いとおもったんだけどな~」
優希ちゃんは本当にそう思ってるらしい。
「駄目よ、私は騙されないわ そう言って私が実は御先祖様なのって言うように仕向けるなんて優希ちゃんはなんて策士なの、私は絶対にあの男を認めないわ」
? とした顔をしている優希ちゃんが笑い出した。
「大丈夫~、私はココちゃんの事だまさないよ
あ、それでね近江国風土記っていうのに余呉湖の羽衣伝説が乗ってるんだって
だけど本物の近江国風土記は無くなっちゃったからもしかしたらその巻物に凄い事が書いてあるかも知れないね」
え?そうなの?近江国風土記って何?。
私は正直に優希ちゃんに話をした、どうやら私が見た情報は子供でもわかりやすくした内容だったみたい。
優希ちゃんもそれらしい話をみたが、私が送った写メの巻物が本物みたいな感じがしたからもう少しだけ頑張って調べてくれたらしい。
そんな親友を疑うなんて、私ったら恥ずかし。
「えーとね、インターネットに出てる有名な文はこれかな」
古老伝に曰く、近江国伊香郡与胡郷の伊香小江(いかご の おえ)は、郷の南にあり。天の八女、ともに白馬となり、天より降りて、江の南の津で浴す。伊香刀美西山に有りて、遥かに白鳥を見る。その形奇異なるによりて、もしやこれは神人かと疑いて、住き是を見るに、実に神人なり。是に於いて、伊香刀美即ちに感愛を生じ、環去するを得ず。窃に白犬をやり、天衣を盗み取り、弟の衣を隠し得たり。天女、これを知り、その兄七人、飛びて天上に去る。その弟一人飛び去るを得ず。天路、永く塞がり、即ち地民となる。天女の浴せし浦を、今神浦という。伊香刀美、天女の弟女と、ともに室家をつくり、此れに居て、遂に男女を生む。男二人、女二人にして、兄の名を恵美志留、弟の名を那志等美、女の名を伊是理比咩、次女の名を奈是理比咩という。これ此の伊香連等の先祖なり、後に母天の羽衣を捜し取り、着て天に昇る。伊香刀美、独り空床を守り、嘆詠断えず。
「っていう文だね」
そう言ってスマホを使ってインターネットの画面を見せてくれた。
「優希ちゃん、私にはまったく意味がわからないよ、いかとみって何?」
そう私が話すと巻物が光り部屋を支配した。
え? ここは何処? 周りには何もない 真っ白な空間だ。
私は今まで自分の家の自分の部屋にいたはずだ、なぜこんな所にいるんだろ?
目の前にいた結城ちゃんがいなくなっている事に私は気付いた。
え? 優希ちゃん? 私は不安になり叫んだ。
「優希ちゃーん、優希ちゃーん どこー?いたら返事して~~」
すると遠くから声が聞こえる、優希ちゃんの声だ、結城ちゃんも私を呼んでいる。
「ココちゃ~ん、ココちゃ~ん」
「優希ちゃ~ん、私はここだよ~、結城ちゃんどこ~?」
私は声の方に向かって走り出した。
段々声が近づいてくる、私も叫びながら走り続けた。
「優希ちゃん、いた~~」
優希ちゃんの姿を見つけると私は優希ちゃんに抱きついた。
「優希ちゃん、どこに行ってたの 私の部屋にいたはずなのに急にこんな所にいて、目の前にいた優希ちゃんもいなくなっててびっくりしたよ」
抱きついいたまま見つかった興奮と安心感が同時に来た為そのまま座り込んだ。
「私もびっくりしたよ、急によくわからない所にきて目の前にいたココちゃんがいなくなったんだもの」
そういって優希ちゃんも私に抱きついた。
少し時間がたち、二人でいる為か先程より恐怖は薄れ冷静になってきた。
そして再び立ち上がって状況を確認しようとした。
「ここは何処なのかな?結城ちゃんもわからないんだよね?」
「うん、わからないけど巻物が急に光った所までは覚えているんだけど」
そうだ、巻物が光ったんだ、忘れてた。
「ごめんね、私が巻物なんて一緒に調べようなんて言ったばっかりにこんな事になって」
私が不安そうにそう言うと優希は首を振った。
「ううん、私もココちゃんが巻物の写真を送ってくれた時一緒に見ないとダメだって思ったの
何故だかわからないけどそう思ったの、だから後悔なんてしてないよ」
私は涙がでそうになった。
「うう、ありがとう、私達ずっと親友だよ、優希ちゃん」
「うん、私達ずっと親友だよ、ココちゃん」
「昔からキミ達二人は仲がよかったよね」
ん?なんか今変な声がしなかったか? そうおもって優希ちゃんの方を見ると優希ちゃんは下を向いていた。
私も一緒に下を見た。
白い犬がいる。
「どうかした?久しぶりだね」
私は優希ちゃんを見て、優希ちゃんは私をみてそして叫んだ。
「「犬がしゃべった~~~」」