伝える
どんなに言葉を選んで
どんなに言葉を重ねて
心を尽くして
思いを告げても
目の前の人に
自分の気持ちは伝わらない
思うことの
何分のいくつもきっと伝わらない
どんなに大きな声で
どんなに大きな身振りで
人を頼って
縋って
思いを伝えようとしても
思うことの
何分のいくつが伝わるのだろう
目の前にいたって
思いを伝えるのは難しい
あなたに
どうやったら
この気持ちが伝わるのだろう
雨がやんで
透き通った光に照らされたススキの穂をみて
あなたと摘んだタンポポの綿毛のようだと
小さいあなたを思い出し
紅葉の葉が舞うのをみれば
あなたが逝った初夏の青葉を思い出し
病室にいたあなたの痛々しい姿を思い出す
何を見ても
何を聞いても
何を食べても
どこへ行っても
あなたのことばかり考えている
どうやったら
お母さんがあなたを愛してるって伝わったのだろう
どうやったら
あなたを失いたくないって伝わったのだろう
どうやったら
あなたに生きているだけで素晴らしいって伝えられたのだろう