五章
前章に続き短いです
統合しようか迷いましたが、話の区切りとしては分けたほうが良いと思って分けました
翌日学校に行くと下駄箱に手紙が入っていた。
イタズラか何かかと思い捨てようか迷ったが、そうでなかった場合のことを考えてそのまま教室まで持って行った。
昨日の出来事を思い出し、気まずい空気になりそうだと思いつつも覚悟を決めて教室に入る。
何人かはこちらを見て…いつも通り「リュウヤ、おはよー」「おっす」といった風に挨拶を交わすだけだった。
無視されるか文句を言われるとは思っていたのだがそんなことはなかった。
みんな普段と変わらぬ様子で接してくれた。
ただ1人を除いて。
「月城くん、おはよう」
そう言いながら俺の席に向かって歩いてきた。
「……おはよう」
「昨日はびっくりしちゃいました。いきなり大声を出すんですもん」
「………」
「…月城くん?」
黙り込む俺の名前を、そいつは首を傾げながら呼ぶ。
「なんで普通に話しかけてくんだよ」
「え、私が月城くんに話しかけちゃダメ…ですか?」
「そういう意味じゃねぇよ」
「だったら何も問題ないですよね♪」
「俺、キモいって言ったよな。平気なのかよ、そんなこと言われて?」
「ええ、だって照れ隠しであり好きだっていうことじゃないですか」
「…なんでそうなるんだよ」
「昨日も言ったじゃないですか?」
「…お前、わけわかんねぇよ。もう話しかけてくんな」
「え、何で…ああ、そういうことですか、わかりました♪」
顎に人差し指を当てながら疑問を言おうとし、その後何を思ったのか納得した様子を見せる。
「わかったらさっさと席に戻れ、俺の近くにくんな。話しかけんな」
「わかりました。あ、そうそう手紙ちゃんと読んでくださいね? そうしないとまた話しかけちゃいますから、ふふふ♪」
そう言って俺の返事も聞かずに戻っていく。
「…手紙、だと?」
このタイミングで手紙と言われて思い浮かぶものは1つしかない。
今朝、下駄箱に入っていた手紙だ。
俺は手に持ったままだったそれを恐る恐る開き……。
「うわっ!!」
声をあげて手紙を落とした。
別に変なものが入っていただとかそういったイタズラがしてあるわけじゃなく普通の手紙だった。
内容を除いては。
俺の様子に反応したクラスメイトの1人が、俺の落とした手紙を面白そうなものを見つけたと言わんばかりの表情で拾い上げ、そして俺と同じリアクションをとることになった。
その反応を見て、手紙が面白そうなものではなく何やら気味の悪いものであるようだと察したのか、それ以上手紙を拾って読もうとする奴はいなかった。
汚物でも扱うかのようにそれをつまみ上げ、俺はそのままゴミ箱に捨てた。
手紙の主、凉佳もそれを見ていたはずだが特に何も言わなかった。
俺が手紙を読んだから満足して何も言わないのか、それとも約束通りに手紙を読んだから声をかけてこないのかはわからないが。
そしてそれ以降、その日以降、凉佳から視線を向けられることはあれど、話しかけられることは小学校を卒業するまでなかった。
小学校を卒業し、中学校では凉佳と別の学校となり、ようやくあの視線から解放されたと胸をなでおろした。
中学校に進学する際に学区域の問題で和成が俺や遼とは別の中学に通うことになった。
最近は疎遠気味だったこともあり、別れはあっさりとしたものだった。
あっという間に3年が経ち、高校受験を迎えた俺は第一志望に落ち、滑り止めの第二・第三志望に合格。
遼とは志望校が1つも一致しておらず、中学でお別れとなった。
4月の始め、俺は高校生になった。
早く先の展開を書きたいとかそういう理由で小学5年〜高校受験までを省略したわけじゃないんです。
…本当ですよ?
六章からは引き続き水曜投稿…………の予定です