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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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朝のコーヒー

「う・・・」

 拓斗は目を覚ました。あれ、俺なんでこんなとこで寝てたんや・・・



あ!そうや!儀式をしたんやった!シルク!シルクは!?



 拓斗が身を起こすと、足元に長い髪の少女が倒れていた。きっと、人間になったシルクだろう。ブロンズだった髪の色は漆黒のような髪色に変わっていた。

「シルク」

 拓斗は、少女の肩を持ち、ゆさゆさと揺らしてみる。少女は目を閉じたままだった。



「あ!そや!名前や!」

 思い出した。新しい名前を呼ばないと目覚めないとか言うてたな。

「しずく!雫!起きろ!」

 その時、ゆっくりと少女が目を開いた。青く澄んでいた瞳の色も茶色になっていた。顔立ちは変わってないようだが、ずいぶんと雰囲気は変わったような気がする。

「まぁ、外人が日本人になったようなもんやしな」




 目を開けた雫は、しばらくぼんやりとしていたが、身を起こし、拓斗に話しかけた。

「タク」

「おお、シル・・・雫!」

「私たちなんでこんなとこで寝てたの?」

 雫は、今、二人が空き地の中で目覚めたことを不思議がっているようだ。

「えーと・・・」

 俺の事はわかってるようだが、天使だった頃の記憶はないわけで・・・どう説明したらいいのかよくわからない。さて、どうしよか・・・。

「昨日飲んだジュースに睡眠薬でも入ってたんかな」

「ええ、なにそれ。誰が入れたの?」

「俺ちゃうで!販売機で買ったジュースやから・・・当たりかもな」

「そんな当り嫌だわ」

 雫が拓斗のボケに笑顔を見せる。良かった、人間になる儀式は大成功やったようやな。拓斗はホッと一安心した。



「今、何時や・・・」

 拓斗はポケットのスマホで時刻を確認する。朝の6時を回ったところだった。近くに6時から開いてる喫茶店があるはずや。拓斗は財布の中もチェックして、立ち上がった。お金ないと思ってたけど2千円ぐらい入ってるわ。

「雫、お茶でも飲みに行こか」

「うん」

 とりあえず、喫茶店へと向かう2人。確か、7時半ぐらいにオカンがパートに出かけるはずや。それまで時間潰そう・・・。



 喫茶店でコーヒーを飲みながら、拓斗は気になっていた。シルク・・・じゃなくて、雫の今の記憶は一体どうなっているのか。名前は俺が考えたものの、過去にどうやって生きてきたか、どういう設定になってるんやろ・・・。

「雫ってどっから来たんやったっけ」

 単刀直入に質問してみた。

「何言ってるの、タク。私は・・・」

 雫の顔に『?』の文字が浮き上がりそうなぐらい、返事に困っている様子だった。

「思い出せへん?」

「・・・なんだろ、頭が痛くなってきた・・・」

「ああ、ごめん。無理せんでいいよ。お、俺、思い出したから、もう聞かへん」

「え・・・私、どこから来たの?」

 うっ。思い出した、とか言うてしもたから、逆に質問されてしもた。えーとえーと・・・そうや!思い付いた!

「雫は、今まで友達の家を転々として来たんやん。今、住むとこないんやろ?だから次は俺ん家に来るために昨日会いに来てくれたやんか」

「そうだったのね。なんで忘れちゃったんだろ」

「・・・両親がいなくなってショックが強かったからやで。もう何も考えんでいいから、俺と一緒に暮らそ」

 拓斗は、過去を思い出せない雫に、『両親を亡くし、身寄りもない』という架空の設定話を植えつけた。これでええ、これでなんとかやっていけそうや。

「とりあえず、頭痛くなったらあかんから、楽しいことだけ考えような」

「うん、ありがとう」

 二人は、朝の景色を眺めながら、コーヒーを飲み、雑談を楽しんだ。



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