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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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君のために出来ること

「あれっ?あんた早いやん?まだお昼やで」

清子は予想外に拓斗が早く来たことに驚いた。

「うん・・・もう、仕事もどうでもええねん。早退してきたわ」

「どうでもええって、情けないなぁ。・・・なんや?泣いてんのか。まぁ座り」

清子に言われ、拓斗がソファに座る。白い小鳥は窓際に静かに止まっていた。

 拓斗は、小鳥に気付かずに、清子の方を見て静かに話し出した。

「オカン・・・俺が今から話すことをとりあえず聞いてくれ」

「はいよ」

「嘘はつかへん。全部そのまま話すけど・・・これは俺の妄想でもないし、キチガイになったわけでもないから、ちゃんと聞いてな」

「前置きが長いな。ちゃんと聞くから話してみ」

 清子の心の準備が出来たようなので、拓斗はこれまでのことを全部正直に話した。大学生の頃に、空き地で天使と出会ったこと、その天使が自分のパートナーで、自分を好きになったために人間になって一緒にいたいと言い出したこと、自分もその気持ちに応えるために羽切りの儀式をして、天使を人間に生まれ変わらせたこと、それが雫という女性だということ、雫には天使だった記憶がないこと、雫を裏切ると、雫が消えてしまうこと、それを忘れて職場の先輩と深い仲になってしまったこと、全て隠さずに清子に話した。







「ふん・・・・」

一通り話すと、清子が鼻を鳴らしたような相槌を打った。

「・・・信じてくれるか?こんな話・・・」

「・・・まぁな、あんたのことをよう知らん人が聞いたら、まずない話やけどな。オカンは、あんたのことはようわかってる。あんたには妄想癖もないし、こんなストーリーを考え付くこともないやろし、その必要もないもんな。オカンは、あんたを信じるで」

「・・・おおきに」

「で?雫ちゃんは・・・消えてしもたんか?」

「わからん・・・でも、どこにもおらんし・・・」

「ストーカーの仕業とは考えられんか?」

「俺・・・井上って奴をストーカーと思ってなかったんや・・・」

「どういうことや?」

「職場の先輩が・・・最近の主婦は自分の恋人のことをバレないためにストーカー被害に遭ってるふりをしてごまかすことがあるとかっていう話題を出してきてな、そこから、雫ももしかして・・・なんて思ってしまってたんや。そこから俺も雫を疑って、だんだん先輩に惹かれだして・・・」

「あほかいな・・・雫ちゃんみたいなええ子がそんな嘘つくわけないやろ。オカンはストーカーの姿も見たことあるけど、あんな気持ち悪い男・・・それに雫ちゃんはほんまに怯えてたんやで」

「・・・うん・・・」

「まぁ・・・オカンも最初はストーカーに連れ去られたんちゃうか、ってすごい心配になったけど、あんたの話聞いたら、謎が解けたわ」

「・・・何の謎?」

「これや」

清子は白い羽根を1枚、拓斗に手渡した。

「鳥の羽根・・・?」

 先輩を抱いた翌朝に夢で見た、羽切りの儀式を思い出した。あの時、儀式は失敗し、シルクは人間にならずに小さな白い小鳥になっていた。羽根を手に取り、じっと見つめていると清子が続けた。

「その羽根な、あんたの家で拾ったんやで」

「え?」

「雫ちゃんに何かあったんかと、あんたのマンションに行った時に、玄関の中に落ちてたんや」

「・・・玄関に・・・?」

「その日の朝に、窓開けたら迷い込んできた小鳥さんがおってな。その後あんたのとこで羽根を拾って帰ってきて、見比べたけど、どうもこの小鳥さんの羽根みたいでな」

そう言うと、清子は手に白い小鳥を乗せ、拓斗の前に連れてきた。

「えっ・・・」

 白い小鳥がじっと拓斗の顔を見つめる。夢の中で見た鳥と同じような・・・

「もし、その羽根がこの子のもんやとしたら、あんたの家から、うちの家まで飛んで来たってことになるやろ。羽根が落ちていなかったら、ただの迷子かなとも思ったけど・・・あんたの話を聞いて・・・もしかしたら・・・雫ちゃんが消えて小鳥さんになってしもたんかなって・・・」

「オカン・・・俺、雫を裏切って先輩の家に泊まって、朝に変な夢見てな・・・羽切りの儀式の時の夢で、失敗して人間にならずに白い小鳥になってしもたんや・・・」

「・・・もしかしたらほんまにこの子が雫ちゃんなんかもなぁ・・・」

白い小鳥は清子の腕に飛び乗り、ちょんちょんと飛び、とてもなついている。

「本当なら、何も残さずに消えてしまうって聞いてたんやけど・・・」

「それだけ、雫ちゃんの中に”消えたくない”思いが強かったんとちゃうか・・・」






 この白い小鳥が、本当に雫の生まれ変わりなのかは、俺にもオカンにもわからなかった。けれど、どこにもいない雫をただ『消えてしまった』と片付けたくなかったのだ。パートナーに必要とされなくなった時には消えてしまう、とシルクは言っていたけど、俺に必要とされていないと思っても消えたくない思いが強く、別の姿になってこの世に留まったのだと・・・俺たちはそう思いたかった。だから、そう信じて、この小鳥に『シルク』と名付け、一緒に暮らすことに決めた。

 俺は、もう先輩にも惑わされたくなかったから、会社を辞め、マンションも出て、ミィと一緒に実家に戻って来た。不思議なことに、ミィとシルクを会わせてもとても仲良く、喧嘩になることなどなかった。やはり、白い小鳥は雫なのかも知れない。ただ、白い小鳥の話は現実にはありえない話だ。雫が消えたことに関しては、会社の連中や、喫茶店のマスター、単身赴任中のオヤジの手前、雫は不慮の事故で亡くなったということにしておいた。オカン以外には誰にも本当の話は話すつもりもなかった。







 なぁ、シルク。俺は君のために出来ることをずっとやってきたつもりでいた。君が笑うから、君が喜ぶから、ただ、それだけで良かったのに。君のことを疑ったりしてごめんな。それを理由に君を避けて、他に気持ちが向いてしまってすまなかった。あの日、天使から人間になった君をずっと信じてそばにいれなくてごめん。俺、ほんまにアホやった・・・。姿は変わってしまったけど、これからはずっと一緒や。もう君を離さない。信じていれば、また、きっと、会えるよな・・・シルク。俺はこれからも君のために出来ることを続けて行くから・・・。ずっと、ずっと。




     

                 ~君のために出来ること。(完)~


このストーリーを考えたのは私がまだ10代の頃。今から約30年前です。

その頃には、ただ拓斗の心変わりでシルクが消えてしまうだけの設定でしたが、

今回完結させることで、少し内容を変え、ストーカーや小鳥を登場させました。

その後のストーリーは読んだ方が想像でいろいろ考えていただいても結構です。

書き終えて、これだけ長くなるとやはり完結させるのは難しいなと実感しました。

読みにくい点や、表現がおかしい点などたくさんあると思いますが、最後まで

読んで下さり本当にありがとうございました。  

                   桃色 ぴんく。

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