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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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行方不明

 拓斗が会社に着き、仕事を始めた頃、清子はやっと起きだした。

「あ~眠た。昨日は遅くまで起きてたからなぁ」

雫から拓斗が飲み会で遅くなると聞き、もしかしたら何か連絡が来るかも知れないと思い、遅くまで起きていたのだった。

「雫ちゃんから電話なかったな」

 あのしつこい井上がそう簡単に諦めるわけがないと思い、清子は心配していたが、どうやら何事もなかったようだ。清子はホッとしていた。

「今日もええ天気やな」

そう言って、窓を開けたその時だった。1羽の白い小鳥が部屋に中に入り込んできたのだ。

「えっ?なんや??」

 白い小鳥が、清子の目の前の棚の上にちょこんと止まった。

「なんや・・・綺麗な鳥さんやなぁ。迷子かぁ?」

清子はそっと手を差し伸べた。すると、小鳥は清子の指に乗ってきた。

「わぁ・・・可愛いなぁ。そうか、きっとどっかで飼われてたんやな」

もしかしたら、飼い主が探しているかも知れない。清子はしばらくの間、この小鳥を保護しようと考えた。

 時計を見ると、9時を少し回っていた。今頃は拓斗も仕事中やし、雫ちゃんも仕事行ってる時間やなぁ、この鳥さん、木原家に連れてったらまずいかなぁ、ミィちゃんおるしなぁ・・・そんなことを考えていると、電話が鳴った。

「はい、木原です」

「おはようございます。オアシス珈琲ですが・・・」

「ああ、マスター。どうしたんですか?」

「実は、雫ちゃんが来てないんです。連絡もつかないのでちょっと心配で」

「なんですて??ちょっと確認してみます。はい。すいません」

電話は喫茶店のマスターからだった。雫は仕事に遅刻することも無断で休むことも一切なかった。なのに、いつもの時間に来ず、木原家や携帯に連絡しても連絡がつかないと言うのだ。






清子は、とりあえず身支度をして、松葉杖をつきながら、玄関を出ようとした。すると、白い小鳥も付いてこようとする。

「あんたはここにおってな。外は危ないし、飼い主さんが見つかるまでここで待っててな」

清子が声をかけると、小鳥はその場に止まった。

「ちゃんと人の言葉わかってるんかな。かしこい子やな。すぐ戻るから、そこでおってな」

そうして、清子は木原家へと向かった。拓斗は仕事中は電話に出れないこともわかっている。木原家のマンションに行けば、何かわかるかも知れない。松葉杖で出歩くのは、捻挫してから初めてのことだったが、今は足の痛みなど気にしていられない。もしかしたら、雫ちゃんに何かあったかも知れないのだ。熱でも出して動けない可能性もある。







 マンションに着いた清子は、合鍵を使って中に入った。

「雫ちゃん~オカンやで、入るで~」

声をかけながら清子が部屋の中に入る。雫の返事はない。廊下やキッチンにも雫はいない。リビングに入ると部屋の電気はついたままだった。

「雫ちゃん~?おるんか~?」

体調悪くてトイレにこもってたりするんかな?清子はトイレをノックしてみる。返事はない。そろっとトイレのドアを開けて、中を確認する。

「おらんな~」

お風呂にもいないし、寝室にもいない。もう一度、リビングに戻った清子は、置きっぱなしの雫の携帯に気付いた。

「雫ちゃんの携帯はここにあるやん・・・ほな、どこ行ったんや?」

清子は冷静に部屋の中を見渡した。別に部屋が乱れている様子もない。キッチンに立った清子は、ふとあることに気が付いた。

「洗い物がないなぁ・・・」

今まで拓斗と雫の生活を見てきた清子にはわかる。この時間なら、朝食を食べた後の食器が洗われて、食器カゴに伏せて水切りをしているはずだ。時間があってすでに拭いたとも考えられるが、清子はなんとなく違和感を感じていたのだ。朝ごはん、食べてないんとちゃうかな・・・?ということは、昨日、拓斗が帰らなかった可能性もあるな。そして、雫ちゃんの分さえも食器がないということは、雫ちゃんも昨日の夜からいない可能性もある。ここは、拓斗に連絡取って確認せなあかんな。清子は拓斗の携帯に電話をかけてみた。

「あかん・・・でーへんな」

何回も何回もかけてみるが、やはり仕事中は携帯を見ていないようだ。もし、拓斗が昨日帰って来てないとして、この家に雫ちゃんが一人きりで、それを狙った井上が来ていたとしたら・・・荒らされた形跡はないけれど、雫は連れ去られたのだろうか?その可能性もないとは言えない。だんだんと清子の顔に焦りが見え始めた。そして、清子は財布の中に入れてあった拓斗の名刺を取り出し、拓斗の会社へ電話をかけた。







「木原さん、3番にお電話です」

「え?俺に?」

 俺に電話がかかるなんてめずらしいな・・・と思いながら、電話に出る拓斗。

「なんや、オカンかい。仕事中になんやねんな」

「拓斗っ!あんたっ!雫ちゃんどこ行ったか知らんか!?」

「雫?今の時間やと喫茶店やろが」

「マスターから電話あって来てないし、連絡も取れへんって。今、あんたのマンションに来てるけど、部屋の電気はついてて、雫ちゃんの携帯もそのままで、雫ちゃんだけがおらんのや・・・」

「なんやて!?」

「あのストーカーのせいやろか?オカンが足がこんなんで守ってあげれへんかったんか・・・」

 電話口のオカンの声がだんだん泣き声に変わってくる。オカンがまだ何か話しかけてきていたが、俺は頭の中で夢の話を思い返していた。



”私は天界の王女ローザ・・・あれほど言ったのに・・・可哀想なシルク・・・”



 拓斗の中で全ての記憶が蘇った。あれは羽切りの儀式・・・。

「オカン・・・雫が消えたのは俺のせいやわ。仕事終わったらそっち行くわ。全て話す。待っててくれ」

「なんや・・・?あんた、何か知ってるんか・・・そうか、わかった」

 清子は、拓斗との電話を切り、何が何だかわからないまま、とりあえず家に帰ることにした。

「あ・・・」

靴を履こうとして、清子は足元に白い羽根が1枚落ちていることに気が付いた。

「この羽根・・・」

清子はその白い羽根をそっとカバンに入れて、木原家を出た。

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