作戦決行
拓斗は川崎に強いお酒を飲まされて、再び睡魔に襲われていた。セクシーな先輩の姿と落ち着く部屋と美味しいお酒と・・・全てが重なって、ついに拓斗はソファで眠りについてしまった。そんな拓斗の様子を確認し、川崎が井上に連絡をする。
”寝たわ 玄関の前まで来て”
”オーケー 今下にいるからすぐに行く”
そして、川崎は拓斗のカバンの中から、木原家の鍵を取り出した。音を立てないようにしっかりと握り、玄関へと向かう。静かにドアを開け、やってきた井上に無言で鍵を渡す。井上は鍵を受け取ると川崎に親指を立てて見せ、ニヤリと笑みを浮かべ、去って行った。
川崎は井上に送ったメッセージも送られてきたメッセージも全て消し去った。木原家の鍵は、拓斗が飲み屋かどこかで落としたことにすればいい。井上も、雫がいる木原家に入り込んだら、雫を無理やりにでも抱いてやると考えていた。こんなチャンスはこの先ないだろうから、一夜限りの犯行を行う決意をしていたのだ。
「さて、と。こっちもそろそろコトを始めちゃおうかな・・・」
いびきをかいて寝ている拓斗を川崎が妖しい顔つきで見つめていた。
拓斗は目を覚ます寸前に、おぼろげに考え事をしていた。ん・・・この感じ・・・なんか久しぶりだな・・・ずっと、出来なかったもんな。やっとキスしてくれたんや。良かった、俺、雫に嫌がられたわけじゃないんや・・・
「・・・んっ・・・」
「ふふ・・・」
電気が消され、薄暗い部屋の中で、拓斗は目を覚ました。あれ?ここ、俺の家じゃないな・・・あ、そっか、まだ先輩の家だった。って・・・ことは?この唇を塞ぐ感覚は・・・
「えっ・・・せ、先輩!何してるんですか」
「だって、したかったんだもの」
そう言って川崎がもっと深いキスを拓斗にしてくる。
「や、やめ・・・」
「いいじゃない・・・ちょっとだけ・・・」
拓斗の体にしっかりとまとわりついた川崎の体から甘い香りが漂う。拓斗は酔いが覚めない中、川崎の誘惑にだんだんと体が反応してしまっている自分に気が付いた。ああ、だめだ・・・もう・・・我慢出来そうにない・・・けど・・・こんなんしてしまったら浮気になってまう・・・拓斗はキスをされ続けながらも、必死に理性と戦っていた。が、川崎の色仕掛けは止まらない。
「ねぇ・・・一度だけでいいから・・・私をめちゃくちゃにして・・・お願い・・・」
先輩の胸が、脚が、薄暗い部屋の中で月明りに照らされ、拓斗の目に映る。一度だけなら・・・バレないかな・・・ずっと雫を抱けずに我慢していた欲望が一気に溢れ出してしまった。ああ~!もうっ無理や!我慢出来ひん!!!
「先輩っ・・・」
拓斗はソファに川崎を押し倒し、上から覆いかぶさって、川崎の唇を激しく塞いだ。
その頃、雫はまだ起きていた。いつもならもうとっくに寝ている時間だが、飲み会から拓斗がいつ帰ってくるかもわからないから、もう少し起きて待っていようと思っていたのだ。さすがに少し眠い・・・雫はリビングのソファでウトウト眠り始めた。
川崎から木原家の鍵を受け取った井上が、木原家の前に着いた。まだ部屋の明かりはついているようだ。本当は電気が消えて眠った頃に家に入ってやろうと思っていたのだが、きっとあの雫のことだから、木原拓斗が帰るまで健気に待っていたりするんだろう。どうせ、今夜限りの作戦なんだし、川崎がヘマをして木原拓斗が帰ってくる可能性もある。よし、もう入り込もう。
井上はドアに鍵をゆっくりと差し込み、静かにドアを開け、中に入った。
玄関から入り、リビングに井上は足を踏み入れた。部屋の明かりはついていて、ソファに黒猫のミィが寝転んでいたが、雫の姿はない。風呂か・・・?入浴中なら服を脱がせる手間が省けた。井上はバスルームを探し始める。が、バスルームは真っ暗で雫もいる様子がない。どこ行った・・・?寝室を覗いても真っ暗で人の気配がない。もしかしたら、こんな時間にコンビニかどこかに出かけたのか・・・?
「ちっ・・・チャンスだったのに。出直すか・・・」
どこかに出かけたかも知れない雫を待っていて、万が一、木原拓斗が戻ってきたらまずい。ここはひとまず出直して、合鍵を作ってからこの鍵をその辺に落としておけばいいか。井上は、玄関へと向かった。玄関のドアを開けると、井上の頭の上を白い小鳥が飛んで、外に出て行った。
「鳥も飼ってたのか・・・逃げてしまったけど・・・知ったこっちゃねえな」
井上は平然と拓斗の鍵で玄関の鍵を閉め、木原家を立ち去った。井上が去った後、玄関には白い小鳥の羽が1枚落ちていた。
一方の拓斗と川崎はまだ濃厚な夜を楽しんでいた。欲望に走った拓斗の頭の中に、雫の姿が思い浮かぶことはなかった。今は先輩しか見えない。先輩の美しい顔が快楽に歪むのを見ながら、拓斗は何度も果ててしまうのだった。




