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君のために出来ること。  作者: 桃色 ぴんく。
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それからの日々

 結局、あの後、ナスたちとはすぐに仲直りをしたが、ナスも健二もデートに忙しく、以前のように遊ぶことがだんだん減ってきていた。

 けれど、拓斗にはその方が都合良かった。今は、シルクがいる。普段は、鏡を抜けて天界と下界を行ったり来たりしているシルク。拓斗が家に帰ってきてゆっくり出来る時間があれば、拓斗の部屋で一緒に過ごす、という生活を続けている。


 拓斗以外に姿が見えないシルクと一緒に過ごす時間は、周りから見ると一人きりで部屋にこもっているだけの時間なのだ。拓斗は親に心配をかけないよう、『やりたいことが見つかって部屋で勉強を始めた』ことにしていた。勉強している、と言えば親も邪魔をしない。ただなんとなく大学に通うだけで目的もやりたい仕事もまだなかった拓斗だったから、親も少し安心しているように見えた。心の中で「嘘ついてごめん」と思いながらも、シルクと共に過ごす時間を楽しんでいた。


 何も話さなくても、心の中で思ったことをわかってくれるシルク。シルクの声も拓斗の心の中に響いてくる。二人は毎日、お互いの顔を見つめ合い、心の中で話し合った。

 不思議な能力を備え、美しい顔立ちのシルクに見つめられて、最初は照れていた拓斗も、しだいにシルクに心を奪われ、シルクが側にいるのが当たり前になっていた。


 数日前にシルクと出会ったばかりなのに、不思議ともう何年も一緒に過ごしているような感覚にとらわれていた拓斗。彼女が自分のパートナー天使で生まれた時からずっと見守っていてくれたからなのか。


 そういえば・・・


 天界の王位継承をしないで済む方法があるとか言ってたな。天使が人間になればいいとか・・・。一体どうやったら人間になれるんやろ。

 シルクが人間になれたら、どうなるんやろ。また聞きたいこといっぱいになりそうや。でも、今はまだシルクも人間になる方法を話してくれないから・・・もう少し待ってみよう。



 ある時、シルクは天界の王女、ローザの元にいた。

シルクが拓斗に正体を明かしていることも、王位を継ぎたくないことも、人間になろうとしていることも、ローザには全部お見通しだった。

「シルク・・・それで、よいのですか?」

王女は、シルクに尋ねる。自分の意思に揺るぎがないことを伝えるシルクの瞳。

「はい。覚悟はしております」

王位継承せず、人間になることを王女は責めもしないし止めることもしなかった。

 止めても、シルクの意思は変わらないとわかっていたからだった。

「あなたにこれを授けましょう」

シルクは王女から『人間になるために必要なもの』を受け取った。

「ローザ王女・・・ありがとうございます」

シルクは深々と王女に頭を下げ、王室を出た。



 いよいよ、拓斗に人間になる方法を話さないと!少し不安が残る部分もあるが、シルクは希望に満ちた表情をしていた。拓斗の部屋に行き、窓から空を見上げる。

「あと3日・・・」

思い残すことは、ない。天使だった自分も、人間になる自分も、私には変わりない。きっと・・・。



 

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